ビジネスメールなどで見掛ける「夜分に失礼します」という表現。聞いたことはあるけれど、具体的に何時に使えばいいのかなど、正しい意味と使い方を理解できている人は少ないかもしれません。
本記事では「夜分に失礼します」の意味やシーンごとの使い方と例文、注意点などをわかりやすく解説します。ビジネスシーンでよく使われる、その他のクッション言葉もまとめました。
「夜分に失礼します」の意味とは
「夜分に失礼します」は、主に終業後、夜の時間帯に連絡する際に使用するクッション言葉です。
ビジネスメールや電話などの最初に「夜分に失礼します」と付け加える意図は、遅い時間に連絡したことへの謝意を表現するためです。
仕事を終えた後は、家でくつろいだり外食をしたりと、皆思い思いの時間を過ごしていることでしょう。「夜分に失礼します」には、そのようなリラックスタイムを邪魔してしまうことなどに対する、お詫びの気持ちが込められています。
「夜分」とは何時のこと?
「夜分(やぶん)」とは、「夜中」や「夜」のことを意味する言葉です。
「夜分」や「夜中」には、何時から何時までという明確な定義はありません。一方「夜」は、日没から日の出までの時間を指し、気象庁の天気予報などでは18時~24時ごろまで(または翌日の午前6時ごろまで)のことを指します。
「夜分に失礼します」と言った場合、その時間の解釈は個人によって大きく異なります。しかし「夜」の定義から考えて、一般的には、終業後の時間帯であれば「夜分」という表現を使用して問題ないでしょう。
なお、もし社内の人で明確な終業時刻が分かっている場合で、終業後であっても「夜分」というにはまだ早すぎると感じるのであれば、「勤務時間外に失礼します」などと言い換えてもいいでしょう。
「夜分に失礼します」はビジネスで使用できる?
「夜分に失礼します」は、ビジネスシーンでも問題なく使用できます。前述した通り「夜分」と呼ばれる時間帯は、多くの人は仕事から離れ、プライベートの時間を過ごしていたり、場合によってはもう寝ていたりするタイミングです。
そのような時間に電話やメールをすると、その人のリラックスタイムを遮ってしまう可能性があります。そのため、終業後の仕事の連絡はなるべく控えるべきとされています。
しかしどうしても連絡をしなければならない場合は、「夜分に失礼します」を付け加えることが推奨されます。遅い時間帯に連絡したことを申し訳なく思っていることを表現し、相手に与える悪い印象をなるべく減らすためです。
なお、友人へ使用する際は、「夜遅くにごめんね」のようにフランクな言い方に変更すれば、違和感なく配慮をアピールできるでしょう。
「夜分」に連絡をする時の注意点
急な用事や緊急の情報を伝えるために、夜分に連絡をしなければならない場合があります。しかし、夜分の仕事に関する連絡は、相手にとって迷惑になることも少なくありません。
終業後や深夜にメール連絡を入れる場合は、下記の注意点を意識して行いましょう。
まとめて簡潔にした形で連絡
夜分の連絡は、前述のように基本的に業務時間外の連絡でもあります。相手のプライバシーや睡眠時間を奪わないために、いつも以上に「伝わりやすい文章」で「要件のみを端的に」書き記すことを意識しましょう。その際は「5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)」を意識して文章を作ると分かりやすくなります。
また、通常のビジネスメールであれば「最近気温がぐっと下がってきました」や「風邪など引いておられませんでしょうか」のように、挨拶や相手の近況を尋ねる一文を入れることも多いです。一方、夜分のメール連絡の場合は簡潔なことが重要なので、そういった丁寧な挨拶などは省き、シンプルにまとめましょう。
夜分に連絡する理由を書いておく
夜分であるにも関わらず連絡しなくてはいけないということは、その内容は緊急性が高い場合がほとんどです。なぜ連絡したのか、必ず理由を述べるようにしましょう。
例えば、急病や事故などにより翌日の勤務・予定に影響を及ぼす場合、納期の近い重要なプロジェクトにおいて大きな問題が露呈した場合などは、緊急性が高いといえるでしょう。
ただしこのとき、心苦しさから回りくどい表現にならないように気を付けましょう。前項で述べたように「簡潔に」を念頭に置いて文章を作ることが重要です。
休日の連絡は極力避ける
前提として、夜分や休日のような業務時間外に仕事の連絡をするのは、避けた方がいいことです。
特に休日は、仕事から離れて、自分自身や家族・友人との時間を楽しむ日でなければなりません。そのようなときに仕事の連絡が来てしまうと、内容を気にして休日を心から楽しめなくなってしまう可能性があります。
それでもどうしても連絡しなければならない場合は、「お休みのところ申し訳ありません」などの言葉を添え、配慮の気持ちと謝意を表しましょう。
「夜分に失礼します」の使い方と例文メール
ここからは、さらに詳しいイメージをつかめるよう、例文と具体的な使用シーンを紹介します。
ビジネスにて先輩に対して使う場合
「夜分に失礼します。
〇〇社から、可能であれば週明けすぐに契約を進めたいとお電話をいただきましたので、ご連絡を差し上げました。」
これは先輩にあてた社内メールでの例文です。取引先から急ぎの連絡があったことを伝えています。
ビジネスにて上司に対して使う場合
「夜分に失礼いたします。
急病のため、本日より1週間程度、入院することになってしまいました。進行中の案件についてご相談したく、取り急ぎご連絡いたしました。」
こちらは上司にあてた、体調不良による欠勤を連絡するの使用例です。翌日の欠勤が前夜に確定しているようであれば、夜分でも連絡して問題ないでしょう。
特に進行中のプロジェクトや取引を抱えているようであれば、朝を待たずに連絡した方がいいでしょう。そうした方が、引き継ぎのための時間を確保しやすくなります。
また、より丁寧な表現にするために、丁寧語である「失礼します」を謙譲語の「失礼いたします」に変更しています。上司や取引先のような目上の人へ連絡する際は、「失礼いたします」を使用することをおすすめします。
ビジネスにて取引先に対して使う場合
「夜分遅くに失礼いたします。原稿の修正が完了しましたのでお送りいたします。」
これは取引先にあてて書かれた場合の使用例です。特に取引先が急いでいる場合などは、なるべく早くボールを渡してあげるために、夜分に連絡することもあるでしょう。
「夜分遅くに失礼いたします」と、「遅く」を付け加えることもできます。
他にもある! 印象を和らげるためのクッション言葉
「夜分に失礼します」は、一般的に「クッション言葉」と言われる表現です。
クッション言葉とは、反対意見などを、相手を傷つけないように伝えたり、謝意を伝えたりするために使われます。ここでは「夜分に失礼します」以外のクッション言葉を見ていきましょう。
どれも短いフレーズですが、この一言で一気に丁寧な印象へと変化します。
「申し訳ございませんが」「申し訳ありませんが」
「申し訳ございませんが」は相手への深い謝罪の意を表現しています。こちら側の都合で相手の依頼を断らなくてはいけない場合や、迷惑を掛けてしまった場合などに使用できます。
また「申し訳ございませんが」と同じく、「申し訳ありませんが」もよく使用されます。これらの表現の違いは丁寧さです。「申し訳ございませんが」の方が、より丁寧な言い方です。目上の人に対しては「申し訳ございませんが」がよく使用されます。
「恐れ入りますが」
「恐れ入りますが」は、目上の人に対して敬意や恐縮する気持ちを表しつつ、依頼や許可を求める際に用いる言葉です。
「恐れ入りますが、○○についてご教示いただけませんでしょうか」などの形で使用します。
「お手数をおかけしますが」
「お手数をおかけしますが」は、自分のために時間を取ってくれる相手に対して申し訳ないと思う気持ちや、手間や協力に対する感謝の意を表しています。
また、「よろしくお願いいたします」と併せて、「お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします」という表現がよく使用されます。メールの締めくくりとして、文末で使える便利なフレーズです。ぜひ覚えておきましょう。
「夜分に失礼します」を適切に使おう
前述の通り、業務時間外に仕事の連絡をすることは基本的には避けた方が無難な行為です。しかし、仕事となるとどうしても緊急で連絡をしなければいけないケースが発生してしまいます。
業務時間外の連絡はただでさえ対応が憂鬱(ゆううつ)であるのに、そのメールに謝意が一切ないとなると、悪印象を抱かれがちです。
そうならないためにも「夜分に失礼します」の正しい使い方をきちんと覚え、使いこなせるようにしておきましょう。