2023年3月22日、東京都にあるベルサール秋葉原にて、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』を競技タイトルとする大学生eスポーツ大会「マイナビeカレ〜esports全国大学選手権〜」(以下、マイナビeカレ)のオフライン決勝が開催されました。
予選リーグを勝ち抜いた4チームによるオフライン決勝の試合や会場の様子、「マイナビeカレ」のスペシャルアンバサダーとコーチを務めた、ストリーマーのClutch_Fiさんへのインタビューをお届けします。
予選リーグを勝ち抜いた4チームがオフライン決勝で激突
「マイナビeカレ」は、同じ大学内でチームを組んで出場する大学対抗戦です。参加したのは25チーム。1月から2月にかけてオンラインで予選リーグが行われました。予選リーグでは、各チームが4つのグループに振り分けられ、Bo1(1マップ先取)の総当たり戦を実施。それぞれのグループで1位となった4チームが、オフライン決勝へ進出しました。
オフライン決勝に出場したのは、日本大学の「日大ペンギンズ チームA」、近畿大学の「近畿大学esportsサークル」、日本大学の「日大ペンギンズ チームB」、明治大学の「Meiji e-Sports Club」の4チーム。トーナメント形式で、準決勝はBo1、決勝はBo3(2マップ先取)のルールで優勝をかけて争います。
また、オフライン決勝に出場した4チームには、プロ選手としての実績を持つストリーマーが、それぞれのコーチに就任。事前に行われた3回のスクリム(練習試合)に参加し、フィードバックを行いました。さらに、オフライン決勝当日は試合中に選手の後ろに立ち、タイムアウト時に作戦などを話し合います。
オープニングでは、4チームの選手たちとコーチがステージに登場。各チームのリーダーとコーチが、それぞれ試合に向けた意気込みを語りました。
20-18のオーバータイムも! 準決勝から白熱の試合が続く
準決勝の第1試合は、「近畿大学esportsサークル」対「日大ペンギンズ チームA」。近畿大学は、プロの競技シーンやeスポーツ業界で活躍する人を多数輩出しており、キャンパス内には最新設備のeスポーツ施設を持つなど、eスポーツが盛んな大学です。
対する日本大学は、予選リーグに3チームが出場。3チームというのは、「マイナビeカレ」で規定されている、同一の大学から出場可能な最大チーム数です。しかも、そのうち2チームがオフライン決勝に勝ち上がっていることから、プレイヤー層の厚さとレベルの高さがうかがえました。
試合では、「日大ペンギンズ チームA」が6ラウンドを連取するスタートを切りましたが、「近畿大学esportsサークル」も負けじと追い上げを見せます。少しずつラウンド差が縮まるなか、「日大ペンギンズ チームA」が序盤のリードを活かして逃げ切り、13-9で勝利。初戦から見応えのある内容で、会場を沸かせました。
続いて、準決勝の第2試合は、「Meiji e-Sports Club」対「日大ペンギンズ チームB」です。「Meiji e-Sports Club」は、昨年行われた大学生大会「VALORANTイーカレ アイパクカップ」のオフライン決勝で、日本大学を破って優勝した実績を持ち、今回の大会でも優勝候補の筆頭とされていました。
対する「日大ペンギンズ チームB」には、4チームのなかで唯一の女性プレイヤーである、FCS ごんごん選手が所属しています。また、会場には「日大ペンギンズ チームB」を応援する手作りのうちわやボードを持った学生が多く駆けつけていて、たくさんの声援を受けていることが印象的なチームでした。
試合は、お互いに譲らない接戦が続き、12-12でオーバータイムへ突入。オーバータイムでは先に2ラウンドを連取したチームが勝利しますが、ラウンドを取っては取られての激戦をくり広げ、なんと18-18に並ぶ超長期戦へともつれ込みます。最後はYackY選手が1on1を制し、「日大ペンギンズ チームB」が20-18での勝利をもぎ取りました。
決勝は同サークルでの対決へ! 日本大学の強さの理由は?
いよいよ迎えた決勝は、同じサークルから出場する「日大ペンギンズ チームA」と「日大ペンギンズ チームB」の、日本大学2チームによる対決となりました。
Bo3で行われた決勝の試合は、1マップ目のフラクチャーから「日大ペンギンズ チームA」が大きくリード。追い上げを見せる「日大ペンギンズ チームB」を抑え、13-9で勝利します。続く2マップ目のヘイヴンでは、さらに勢いを増した「日大ペンギンズ チームA」が圧倒的な展開で、13-4での勝利を獲得。マップカウント2-0で、「日大ペンギンズ チームA」が見事優勝に輝きました。
今回、日本大学から2チームが決勝に勝ち上がった背景の1つとして、同じ大学内でチームを組む「マイナビeカレ」では、学生数の多さがプラスに働いたことが考えられます。日本大学は学生数が7万人を超え、「日大ペンギンズ」には100名以上が所属。一方、学生数が少ない国公立大学などは、メンバー集めが難しく、出場チーム数が少ない傾向にあります。
ただ、出場選手たちに話を聞いてみたところ、単に学生数が多ければ強いチームが組めるというわけでもありませんでした。例えば、「近畿大学esportsサークル」は、サークル全体で360名ほど、VALORANT部門だけで130名ほどが参加していますが、なんとか大会に出るメンバーを5人かき集めてエントリーしたといいます。
その理由は、プロ選手としての活動を目指す層か、大会などには出ずに楽しむエンジョイ層のどちらかに偏っているから。チームを組み、大学生大会で勝つことを目指して活動する人は、現状かなり少ないそうです。これは、今までeスポーツサークルの活躍の場が少なかったことも要因と考えられ、まだまだこれから大学生eスポーツ大会の存在を根付かせていく必要があるでしょう。
こうした課題は「日大ペンギンズ」も同様ですが、それを踏まえたうえで、ただ楽しむだけでなく、大会で実績を残すことを目指すサークルの方針を定めています。このことを入会時点でしっかりとメンバーに伝えているそうで、この明確なサークル方針が、日本大学の強さにつながっているのだと感じました。
学生スタッフの呼び込みで、会場にはお客さんが続々と入場
「マイナビeカレ」では、大会に出場する選手だけでなく、裏方のスタッフでも大学生が大活躍。インターンとして大会運営に参加する学生たちは、オンラインで行われた予選リーグにおいて、大会の審判やオブザーバー(ゲーム内カメラマン)などを務めました。
学生スタッフは、オフライン決勝の前日から会場設営の手伝いとして参加。椅子を並べたり、パンフレットを袋に封入したりしながら、ステージが作り上げられていく裏側の様子を見て、「地道な作業の積み重ねでオフライン大会が成り立っているんだ」と実感したといいます。
そして、オフライン決勝の当日には、会場の外に立ってお客さんの呼び込みを行っていました。会場のベルサール秋葉原は、人通りの多い秋葉原のメインストリートに面しています。しかも、誰でも無料で観戦できるフリー入場。この呼び込みがきっかけで、さらに多くのお客さんが来場していました。
呼び込みを行う学生たちに話を聞くと、親子連れから年配の方まで、かなり幅広い年齢層の方に興味を持って反応してもらえたとのこと。立ち止まった人に、「無料なのでよかったら観ていきませんか?」と声をかけると、『VALORANT』を知っているかどうかに関わらず、会場に入って観戦してもらえることが予想以上に多かったようです。
これにより、会場には続々とお客さんが集まり、座席が後方まで埋まっただけでなく、立ち見まで出ていました。準決勝第2試合目には、一時的に入場規制がかかったほどです。プロシーンにおけるオフライン大会では、有料チケットが販売されることがほとんどのため、こうしたフリー入場と呼び込みは、eスポーツの裾野を広げることにつながる良い試みだと感じました。
アンバサダー&コーチを務めたClutch_Fiさんにインタビュー
大会終了後、会場にて「マイナビeカレ」のスペシャルアンバサダーとコーチを務めた、ストリーマーのClutch_Fiさんにインタビューを行いました。大会全体を通しての感想や、「Meiji e-Sports Club」のコーチとして感じたことなどを聞いています。
――まずは「マイナビeカレ」の大会全体を通しての感想を教えてください。
Clutch_Fi:同じ大学のメンバーで練習を経て大会に参加できる機会はなかなかないと思うので、うらやましい気持ちで見ていました。会場には、想像以上にいろいろな方が観に来られていました。ラウンドを取ったりすごいプレイが起こったりするたびに、拍手や歓声が起きていて、観ている方々の楽しんでいる空気も伝わってきましたね。
――大学生チームの実力や練習への取り組み方について、コーチ目線でどう感じましたか?
Clutch_Fi:これまでいろいろなイベントでコーチをしてきましたが、今回コーチをした「Meiji e-Sports Club」は、すでに基礎ができていたので、自分は補足する程度でした。最初の練習の時点から、ほかの大学生大会で優勝経験があるのも納得のレベルだなと思うくらい完成度が高かったです。
練習に関しては、カスタムの部屋を立てて、自分たちの動きを合わせる練習を反復して行っていたようです。実際に、ランクをプレイしているだけでは身につかない、チームとしての動きがすごく上手くて、チームでの練習に重点を置いて取り組んできたことを感じました。
――「Meiji e-Sports Club」は激戦の末、惜しくも準決勝で敗れてしまいましたが、コーチとしてどんな声をかけられましたか?
Clutch_Fi:長いオーバータイムのあと、最後に負けが決まった瞬間はみんなうなだれていて、悔しい気持ちがひしひしと伝わってきました。本当にいい試合で、どちらが勝っておかしくなかったので、「ナイスゲーム!」と声をかけました。
――大学のeスポーツサークルでは、大会に向けてチームを組んで取り組む人がまだ少ないようです。
Clutch_Fi:いきなり大会となるとハードルを感じるかもしれませんが、普段からゲームで遊んでいるなかで、「勝ってうれしい、負けて悔しい」という気持ちが芽生えると思うんです。そこから次第に、真剣に取り組むことにハマっていくんですよね。自分自身がそうでした。なので、そういう気持ちをより強く感じる人は、サークルにいる期間だけでも、打ち込んでみてほしいなと思います。
――最後に、大学生eスポーツ大会に興味を持つ学生にメッセージをお願いします。
Clutch_Fi:今回の大会を見ていて、大学という限られた時間のなかで、真剣に打ち込めるものがあることは、本当にいいことだなと思いました。その対象は、もちろんゲームでもそれ以外でもいいと思いますが、もしゲームが好きで大会に興味があるという人は、ぜひ挑戦してみてほしいです。
――Clutch_Fiさん、ありがとうございました!
eスポーツ活動を充実させるDiscordサーバーの運営も
「マイナビeカレ」は、大学生のeスポーツ活動の充実を目的としたDiscordサーバーの運営も行っています。『VALORANT』に限らず、さまざまなゲームタイトルでのイベントや大会が開催されているので、活動の場や仲間を探している方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。