Tor ProjectとMullvad VPNは4月3日、プライバシー保護に特化した新しいWebブラウザ「Mullvad Browser」(Windows/macOS/Linux)を発表、提供を開始した。VPNに接続することで、通信速度が遅くなるTorネットワークを使わずに、Tor Browserと同様のプライバシーを「誰でも利用できるようにした」としている。
Tor Projectは、検閲を回避するための技術を構築、人々のプライバシーを保護する匿名性を提供し、人権を向上させることをミッションとしている。同プロジェクトが提供するTor Browserは、米国海軍調査研究所(NRL)が開発した「Onion Routing」という通信元を隠蔽する技術を採用し、Torネットワークを経由した匿名化をユーザーに提供する。しかし、Torネットワークは接続の確立に時間がかかり、複数のノードを行き来するため通信速度が遅くなる。一般ユーザーの多くにとっては、メリットに比べてデメリットが大きい。そこで「信頼できるVPNへの簡単な接続」を可能にするMullvad Browserを提供することで、プライバシーを保護したい人達の選択肢を増やす。
Mullvadはスウェーデンに本拠を置くVPNプロバイダーだ。「自由なインターネット」を標榜したセキュリティ対策とプライバシー保護機能を特徴としており、高速で、VPNプロバイダーの中では透明性の高い事業を展開している。VPNはブラウザーのプライバシーを高める方法の1つであるものの、データブローカーはブラウザやOSの種類、インストールされているフォントや拡張機能、ブラウザがアクセスできる入出力デバイスといった様々な情報から利用者の特定を可能にしている。「VPNだけでは不十分。だからこそ、(VPNに加えて)プライバシーに特化したブラウザーが必要である」としている。
Mullvad Browserは「木を隠すなら森」のアプローチで、すべてのユーザーに同じフィンガープリントを作成する。導入後にすぐに使える設定と構成は、フォントやレンダリングされたコンテンツ、いくつかのハードウェアAPIなど、ユーザーの特定につながる情報を引き出すためによく使われる多くのパラメータと機能をマスクする。また、デフォルトでプライベートモードが有効になり、サードパーティのトラッカーとCookiesをブロックし、同じセッションで訪れたページ間のCookiesを簡単に削除できるようになっている。