帝国データバンクは、昨今の食品値上げが家計に与える影響と今後の見通しについて調査・分析を行った。

  • 相次ぐ食品値上げ、家計負担は月2,000円増 年間2.6万の負担増に

断続的な食品の「値上げ」が続くなか、家計への負担は前年に引き続き重みを増しそうだ。
帝国データバンクが3月31日までにまとめた、国内の主要な食品や飲料メーカー195社が4月以降に値上げする食品約9,000品目の値上げデータと、総務省「家計調査」における二人以上世帯の2021年度消費支出データを基に、生鮮食品を除く食品値上げによる家計支出額の影響について試算した。

その結果、2023年度における1世帯あたり家計への食費負担額は、節約など値上げへの対策をしない場合、前年の22年度月平均から1カ月当たり約2,140円、年間で約2.6万円増加することが分かった。年間の消費支出額(21年度:平均330万円)のうち約1%が、食品値上げによって圧迫される可能性がある。値上げラッシュが本格化した2年前と比較すると1カ月当たり約3,110円、年間で約3.7万円増加する試算となる。

家計負担額を食品分野別にみると、前年度比で最も負担額が増加したのは「加工食品」で月723円の負担増だった。加工食品では3月末時点で年平均約15%の値上げ幅となるなか、ソーセージなど比較的使用頻度の高い食品分野での値上げが響いた。「酒類・飲料」では月498円の負担増となり、1世帯当たり350ml缶チューハイ(約120円)4本分相当の負担が発生する可能性がある。酒類・飲料では、ウィスキーやワイン、缶コーヒーなど比較的嗜好性の高い品目で値上げが多く、昨年10月の缶ビール類の一斉値上げに比べると影響度は小さくなった。

「乳製品」(月300円増)は、購入頻度の高いパック牛乳などが値上げの対象となることで、全食品分野のうち3番目に負担が重たい試算だった。今後も、飼料価格高騰などを背景に生乳取引価格がさらに引き上げられる可能性があり、負担額は年度末にかけてさらに増加する可能性がある。チョコレートなどの「菓子」(252円増)、マヨネーズやドレッシングといった「調味料」(145円増)も増加した。

  • 2022年度1ヶ月当たりの購入個数比較

  • 2023年通年では値上げ累計2万品目超え予想 年後半にかけて家計負担さらに重く

政府は3月、低所得者世帯向けの現金給付や、LPガス、大規模工場向け電力の負担軽減を柱とした総額2兆円規模の物価高対策を決定した。また、電力大手7社が値上げ申請している電気代も、再エネ賦課金の調整により標準家庭当たり月800円の引き下げを表明しており、エネルギー関連の家計負担軽減策は物価高騰に苦しむ家計に恩恵となりそうだ。

ただ、これまでの値上げの影響で、23年2月における消費者物価指数でも、生鮮を除く食料は1976年7月以来46年7カ月ぶりの伸びとなる7.8%の上昇となり、食用油など2ケタの上昇品目も目立つ。

これまでのコスト増加分に加え、鶏卵価格や電気代など新たなコスト高に対応する価格転嫁も想定されるなか、2023年通年では22年に続き累計2万品目超えが確実となる見通しで、家計における食費負担は年後半にかけてさらに重くなる可能性が高い。