第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、二次予選の丸山忠久九段-近藤誠也七段戦が3月30日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、103手で勝利した近藤七段が挑戦者決定トーナメント進出を決めました。
近藤七段の一手損角換わり対策
振り駒が行われた本局、後手となった丸山九段は得意の一手損角換わりの作戦を採用。対して先手の近藤七段は居玉のまま、早繰り銀の要領で攻めの右銀を前線に繰り出しました。後手の飛車先の歩が一手遅れているのに着目した仕掛けで、3筋に築いた拠点の歩を主張にしています。右辺でポイントを稼いだ近藤七段はおもむろに第二次駒組みに移りました。
平凡に駒組みを進めては作戦負けと見た後手の丸山九段は、盤面中央に打開の手段を求めます。6筋に自陣角を打って遠く先手の飛車を狙ったのがその手始めで、ここから中央での勢力争いが本局のテーマとなっていきます。お互いの角を銀と交換し合う激しい応酬が続いたのち、近藤七段が後手陣に角を打ち込んで局面はようやく一段落を迎えました。
詰み逃しをとがめて近藤七段が勝利
手番を握った後手の丸山九段は、持ち駒の角と銀を先手陣に打ち込んで反撃を開始。ここで捕獲した飛車をすぐに敵陣一段目に打ち込んだ手が素朴ながら厳しい一着でした。序盤から守勢に回ってきた丸山九段ですが、ここにきて形勢をリードすることに成功しました。その後も丁寧な指し回しで駒得を拡大した丸山九段が優勢となって局面は最終盤に突入します。
勝ちを読み切りたい丸山九段は、豊富な持ち駒を背景に先手玉に王手ラッシュを開始。対する近藤七段は12分の持ち時間を残していますが、一分将棋の秒読みに追われる丸山九段を尻目に素早い指し手で焦りを誘ったのが実戦的な勝負術でした。この直後、8筋に桂を跳ねて王手をかけたのが丸山九段痛恨の敗着。代えては6筋に桂を打てば難解ながら詰みがあるとされました。
終局時刻は21時18分、最後は先手玉の不詰を認めた丸山九段が投了。手順中、多くの駒を先手に渡しているため後手玉には受けがありません。これで勝った近藤七段は2年連続となる挑戦者決定トーナメント進出を決めました。
水留 啓(将棋情報局)