高知けいばはどのようにQuuppaを運用しているのか?
「Quuppa」の大きな特徴は、タグの小ささと軽さにある。タグのサイズは直径約3.9センチ、厚さ約5ミリ、そして重さが約10グラムで、高知けいばではこのタグを騎手に取り付け、位置情報を測定している。
「小さくて軽いからこそ、騎手に取り付けられます。当初はタグのスリットにベルクロを通して止めていましたが、馬具屋さんと相談して、最終的に装着のしやすさとホールド性を考慮して、伸縮性の高いウェットスーツ生地でポケットを作り、騎手のプロテクターにつけました。位置もいろいろと検討したのですが、落馬の際の危険性が低いであろう、背中の上部にしました。騎手の反応も良好です」(高知けいば 松本氏)
もう一つの特徴はバッテリー持続時間の長さ。稼働日数を加味すると、半年程度バッテリーが持つ想定だったが、実際には1年近く経っても利用できているという。
「もっと交換頻度が高ければ、費用や新規タグの設定についても検討しなくてはいけなかったかもしれません。おそらく、節電機能が効いているのでしょう。タグは、必要に応じて自動でオン/オフを行ってくれるんですよ」(高知けいば 松本氏)
このタグの小ささとバッテリー持続時間が、送受信機のサイズが大きいRTK-GPS測位方式との違いにつながっている。バッテリーの持ちは長くとも10時間程度。これに対し、Quuppaは騎手に取り付けることが可能で、交換頻度も低い。
「RTK-GPS測位方式では、送受信機と競走馬のひもづけがレースごとに毎回発生します。これに対し、Quuppaは騎手とタグをひもづけできます。高知けいばには24名の騎手がいますが、その24名の管理さえすれば良いので、運用が非常に簡単です」(高知けいば 松本氏)
ICTによってさらに楽しみが増す競馬の世界
現在、高知けいばは全レースの中継放送に「高精度測位サービス」から得られた情報を表示している。ネットでの書き込みや競馬ライターからの反応を見る限り、この取り組みは概ね好評とのことだ。今後は、「各馬の全データをすべて無料で提供する予定」と松本氏は話す。
「馬のデータは、どちらかというとメディア向けの情報だと思います。競馬予想をされる方に見てデータを分析・解釈していただき、それをお客さま向けに広く提供いただくことを狙っています。もちろんデータにはエラー値もありますので、こちらで内容を精査してからお渡しします」(高知けいば 松本氏)
高知けいばには、実況しながらストップウォッチで区間タイムを計測する、橋口浩二さんという名物アナウンサーがいる。だが一昨年、橋口さんが病気療養となり、スタートから200メートルと上がり3ハロンのタイムを実況できない時期があった。こうした状況も踏まえ、実況アナウンサーがデータを活用できる仕組み作りも行っているという。
「このデータは、マンネリ化していた競馬情報のスパイスになると思います。活用次第で、レースのビジュアライズ化なども可能でしょう。また、スタートとゴールを決めなくても、ロケーターがある場所であればデータを取得しているので、生データを出すようになれば騎手も参考にするかもしれません。一方、実際に馬が走っている映像上では、多すぎる情報が邪魔になることもあります。次のステップはメディアによる活用の推進ですね。われわれは情報提供を頑張りますが、楽しむ方法はお客さまが決めていただきたいと思っています。ぜひ、競馬を楽しんでください」(高知けいば 松本氏)