オフィスに人は戻ってもハイブリットワークは継続。まずは新製品をざくっとチェック
デルは2023年3月28日、ひさびさにオフライン会場での新製品発表会を、大手町のデル本社で開催しました。あわせてオフィスツアーを行いました。
PC需要は一服。Latitudeは軽量化と再生素材採用のニーズが高い
説明会はまずデル・テクノロジーズ株式会社 クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 フィールドマーケティング 本部長 三井 唯史氏がビジネスの概況を説明しました。
日本の法人向けパソコンでは継続的にシェアを伸ばし、2022年はシェア18.0%となったと説明。昨今の半導体不足や為替の影響もあって状況は厳しいものの、サプライチェーンの強みを生かした結果だとコメント。シェアを伸ばした理由として、日経の顧客満足度調査で連続1位を理由の1つに挙げていました。
今後のパソコンの姿として、新型コロナウイルスもひと段落してオフィスでの業務に戻りつつある状況な一方、ハイブリッドワークやリモートワークは今後も続き、オフィスにいてもweb会議やクラウドの利用が増えるため、性能とセキュリティが求められると言います。
ノートパソコンは生産性が高く取れる14インチが伸びを見せており、製品ラインナップを充実。しかし狭額縁化で元々13インチサイズの筐体に14インチのパネルが入り、軽量化に加えて作業領域が拡大。さらに大型化のニーズに対しては16:10の16インチモデルも投入することで、17インチFHD製品と比較してもそん色ないとWUXGA解像度(1,920×1,200ドット)の優位性を説明しました。一方、デスクトップ製品はパフォーマンスとサステナビリティ性を上げ、さらにシリーズナンバーを排したところがポイントです。
サステナビリティについては、2030年までに達成するムーンショットゴールとして「販売する製品よりも多くの製品を回収し、再利用またはリサイクルを行う」「製品の50%以上をリサイクル素材または再生可能な素材から製造」「梱包材の100%をリサイクル素材か再生可能な材料から製造」を制定しています。梱包材に関してはすでに昨年のLatitudeで達成しており、今後も他の製品に広げていきます。
法人向け製品はフルラインナップで提供します。一般のユーザーでも新製品を実際に触れられる機会として、来週開催されるJapan IT Week【春】に出展すると告知がありました。
引き続き、法人向け製品の概要をデル・テクノロジーズ株式会社 クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 フィールドマーケティング コンサルタント 佐々木 邦彦氏が登壇して説明しました。
ビジネス向けのメイン製品であるLatitudeに限らず、顧客からのフィードバックが製品に反映されていますが、今回発表されたLatitudeはコラボレーション、インテリジェント、デザインとサステナブルという4つが主となっています。
なかでもハイブリッドワークが増えたことで、薄型軽量の要求が高かったほか、サステナブル要素にも引き合いが多かったとか。
そもそもLatitudeには仕様に応じて9000 / 7000 / 5000 / 3000と4つのシリーズ構成があり、なんと2023年のラインナップはほぼ刷新。従来は9000 / 7000系の製品にしかなかった5G WWANオプションを5000シリーズにも設定した他、7000シリーズでは史上最軽量の14インチモデルに加え、近年盛り上がりを見せるアスペクト比16:10のWUXGA液晶を投入しています。
サステナブルについても、バイオベースプラスチックを9000/7000シリーズの本体外装等に採用したほか、5000シリーズはリサイクルプラスチック使用率を引き上げています。見た目でリサイクル素材を強く押し出しているメーカーもありますが、デルの場合はビジネス用途という事もあり、パッと見てもわからないハイクオリティな作りになっています。
中でも、特に日本で大きな引き合いがあるとアピールするのが、1kgを切る軽量さの“UltraLight”モデルです。2022年から「Latitude品質を満たすUltraLight」の開発に成功したとして、Latitude 7330 UltraLightを発売。基本的な仕様はUltraLightではないモデルと共通ですが、ボディにマグネシウム合金を採用したことで薄く軽くなっている点がポイントです。
そこで、今年はサイズアップのニーズにも応えるべく、7340 / 7440 UltraLightに加えて14インチ製品も投入。14インチ製品は1.06kgと1kg切りではありませんが、実物を手に持ってみるとそこそこ軽量です。ハイブリッドワークを意識して高解像度カメラを内蔵したほか、キーボードバックライトのLEDも省電力化を実現し、液晶もWUXGA解像度でモダンな仕様に仕上げられています。
最上位のLatitude 9440は、現在利用できるテクノロジーをすべてつぎ込んだ製品。今年投入の新モデルでは、キーボードがこの10年ぐらいの主流だったアイソレーションキーボードから、新しく「ゼロラティスキーボード」と呼ばれるタイプに変更されました(注:アイソレーションキーボードは2006年のMacbookで採用したのがはじめと言われています)。
また、タッチパッドには触感がわかるハプティックフィードバックを採用。この2つの技術は昨年個人向けのXPSで採用されているものなので、信頼性等を加味してLatitudeにも投入したというところでしょう。
そのほかの主要なトピックとしては、タッチパッドにZoom利用時に直接設定を変更できるコラボレーションタッチパッド機能を搭載。CTOオプションではIntel Movidius VPUも搭載でき、Web会議の背景ぼかし等のAI処理をCPUに負荷をかけずに利用可能。本体素材の75%でリサイクルされた再生アルミニウムを使用しています。
法人向けデスクトップPC「OptiPlex」が30周年!サイズ→仕様で選びやすく進化
デスクトップのOptiPlexは今年で30周年。ITや管理をよりシンプルにするとともにイノベーションとサステナビリティも忘れていません。
今回大きく変わったのは、これまで性能ごとに7000 / 5000 / 3000と数字でシリーズ番号が使われていましたが、今回から廃止。というのも顧客はまずフォームファクターから製品を選んでいるので、まず、Micro/Small Form Faxtor/Tower/AIOとケースのサイズを選択し、その上に必要スペックを積み上げる形になりました。
製品のグレードに関してはOptiPlex(無印)と高機能なOptiPlex Plusに分類され、一例として無印のメモリがDDR4である一方、PlusはDDR5搭載のように差別化が図られています。さらにBIOSを液晶一体型モデル以外で統一し、今後のアップデートの標準化につながる取り組みも行われています。
ワークステーションのPrecisionシリーズは、今回3000 / 7000シリーズが刷新されました(5000シリーズは据え置き)。エントリー向けの3000シリーズは最大i7-1370P(14コア、28W)のCPUに最大NVIDIA A500に対応する3480 / 3580と最大i7-13700H(14コア、45W)のCPUに最大NVIDIA RTX2000 Adaを搭載する3581となり、フラッグシップ製品の7000シリーズは最大i9-13700HX(24コア、55W)に最大NVIDIA RTX5000 Adaを搭載する7680 /7780が登場します。
スモールビジネス向けのVostroは、すでに発売を開始しているVostro 14 / 15を紹介。以前のVostroは無骨で今一つなイメージでしたが、現在のVostroはかなりスッキリしたデザインになっています(ただし、コスパ優先なのでプラスチックトップです)。
最後にハイブリッドワークを支える周辺機器もいくつか紹介。USB-C接続のモニターも幅広いラインナップと日本を含む出荷台数No.1を3年継続しています。ケーブル1本で映像出力とPCへの給電が行え、さらにディスプレイのハブに接続されているキーボード、マウスとも接続可能。最近の企業でよくある、フリーアドレスオフィスに最適でしょう。
今年発売されたトラベルマウスMS700や近日発売予定のZoom認定(専用キーが追加された)のPremierコラボレーションキーボードおよびマウス、Sony STARVISセンサーを採用した2Kカメラ「WB5023」も紹介していました。
「壊れる前に直す」新しいサポート。災害時でも強いサポートを実現するSCC
最後に、サービスビジネス統轄本部 担当部長 白戸俊平氏が製品を支える保守サービスの進化を紹介して説明会を終了。東京・大手町にそびえる「Otemachi Oneタワー」内にある、デル・テクノロジーズ本社を見学できるオフィスツアーが行われました。
デルの追加サポートサービスとして、ビジネス向け製品ではProSupport Plusが推奨されています。日本にあるコールセンターを通じて保守サービスが受けられるProSupportが標準ですが、ProSupport Plusではレベルに応じて翌営業日から4時間対応までのオンサイトサービス(会社まで修理エンジニアが訪問する)を利用できます。
以前のProSupport Plus保守は「壊れたら連絡して直す」もので、異常が発生してからユーザーがサポートに連絡をするものでしたが、現在のProSupport Plusは「壊れる前に直す」「デルに連絡をする前に修理の手配が始まる」ようになりました。
ユーティリティ「SupportAssist」がプリインストールされており、定期的にテレメトリーデータをデルに送信します(ユーザーがデータを送らない設定も可能)。このデータを機械学習によって故障可能性を判断し、異常が表面化する前に通知します。これによって壊れる前に保守サービスが受けられるのです。
また、すべてのパソコンを一元的に管理できるダッシュボードを備えており、BIOSやファームウェア、ドライバー等を一元的に管理できます。
顧客満足度の高いサポートですが、自然災害時にも円滑なサポートが受けられるかという課題があります。大地震のような災害が発生すれば故障する機器は通常と比べて非常に多くなり、災害に伴う物流の混乱もあるので契約通りにサービスマンが訪問できるかどうかも疑問です。
これに対し、デルは世界6か所にService Command Centerを開設。簡単に言うと保守業務が問題なく稼働しているかを確認してSLAを守れるようにする他、自然災害のような深刻な状況に対しての危機管理、サービスデリバリーに影響がありそうなイベントの影響を事前評価し、回避するように対策を行うものです。
サポート部隊が円滑に機能しているかチェックし、さらに自然災害等で影響がありそうなケースでは周辺の拠点と連携して対応するわけです。また、仮にSCCの一拠点が自然災害等で機能しなくなった場合は他のSCCが対応します。
世界に6か所とありますが、東京以外の施設では「DELLの(元)工場」を使用。東京のように、一等地のオフィス内にSCCが設置されている例は少々特殊な事例のようです。
実際にSCCの見学をさせていただきましたが、基本は正面のモニターにはTV番組が映っているだけ。実は左はNHKで「ニュース速報がいち早く出るため」とのこと。中央と右も海外の番組で災害等の情報をいち早くチェックするためで、当日はオフィス勤務のスタッフは1名だけ。他はリモート勤務とのことでした。
災害発生時などになるとモニターは3画面から12画面に切り替え、より幅広い情報収集を行います。モニター下部はライブモニターの映像で、これで市中の様子を確認するようになっています(デル独自のモニターではなく他社から購入しているそうです)。