「収める」と「納める」は意味が異なるため、それぞれ状況に応じた使い分けが必要です。漢字をみてなんとなく意味を理解していたとしても、自信を持って使い分けできない人が多いのではないでしょうか。
本記事では「収める」と「納める」の意味の違いを解説し、例文を用いて使い方も紹介します。それぞれの違いを理解し、自信を持って使い分けできるようになりましょう。
上記の「おさめる」以外にも、「治める」「修める」との違いや使い方も紹介しているので参考にしてください。
「収める」と「納める」の違い
「収める」と「納める」の漢字は知っていても、それぞれの意味を理解した上で使い分けできているか不安ですよね。まずは「収める」と「納める」の意味の違いを解説します。
「収める」の意味
「収める」は「一定の範囲内にきちんと入れる」「決まったところにしまう」の意味です。
「おさめる、集める、取り入れる、まとめる」といった意味が含まれており、何かを手に入れたり、整理して中に入れたりするという意味が含まれています。
「納める」の意味
「納める」は「きちんと入れるべきところに入れる、終わりにする」「渡すべきものを相手に渡す」という意味です。
「納」の漢字には「献上する、しまい込む、受け入れる、終わりにする」といった意味が含まれているため、渡すべきものを受け取る側に渡す、物事を終わりにする、といった場面で使われます。
「収める」と「納める」の使い方・例文
「収める」と「納める」の意味や違いを理解しても、具体的にどのような使い方ができるのか気になりますよね。それぞれの使い方について、例文を用いて紹介します。
「収める」の使い方・例文
「収める」には、一定の範囲内にきちんと入れる、決まったところにしまう、といった意味が含まれています。
意味を理解できたところで、実際にどのような使い方をするのか一部を解説します。
・製品を倉庫に収める
・カメラで写真に収める
・努力して成功を収める(勝利を収める)
・仕事で成功を収める
・喧嘩を丸く収めることができた
・映像をテープに収める
など多様な使い方がありますが「きちんと中に入れること」「自分のものにすること」といった意味が含まれていることを把握しておきましょう。
「納める」の使い方・例文
「納める」には「きちんと入れるべきところに入れる」「物事を終わりにする」「渡すべきものを相手に渡す」といった意味が含まれています。意味を理解できたところで、どのように使われているのか確認しましょう。
・大学の授業料を納める
・先月発注した注文の品を納める
・税金を納めるのは国民の義務だ
・社長の椅子に納まる
・遺骨を墓に納める
・香典として納める金額を相談する
渡すべきものやお金をきちんと入れたり、何かを終わりにしたりといった場面で使われるのが「納める」です。
「修める」や「治める」との違いは?
「おさめる」を表す単語には、他にも「修める」と「治める」があります。 漢字自体は難しいものではありませんが、この2つの言葉の違いを説明することは難しいのではないでしょうか。
「修める」と「治める」の意味を理解し、それぞれ適切な場面で使い分けできるようになりましょう。
「修める」の意味
「修める」は学問や学芸などを学んで身につけるという意味で、「修学」「修道」などの熟語を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。
また、学んで身につける意味以外にも関係をうまく保ったり、手を加えてなおしたりするといった意味が含まれています。「修正」「修理」「改修」「補修」「修繕」などの熟語が、手を加えてなおす熟語の一例です。
学問を学ぶ意味と関係を保つ・なおす、の意味があると覚えておきましょう。
「治める」の意味
「治める」は世の中や家の中を統治したり、静めたりすることを意味する単語です。「国を治める」や「政治」がイメージしやすいでしょう。
また「治」には病気をなおすという意味があり、熟語の例として「湯治」「主治医」「不治」などが挙げられます。
「収める」「納める」「修める」「治める」の使い分け
ここまで、4つの「おさめる」を紹介しました。それぞれ意味や使い方が異なるため、使い分けが必要です。
本項では4つのテーマに分けて、どの「おさめる」を使うのか解説します。
お金の場合
お金に対して「おさめる」を使う場合は「納める」が正しい表現です。「納」の漢字には「献上する」「受け入れる」意味が含まれており、渡すべきお金や物を相手側に渡すときに使われます。
例えば、税金や消費税などの「納税」をイメージしてみましょう。会社に勤めて給与を得ているのであれば、所得税を納める必要があります。また、物を購入するときは消費税を含めた金額を支払うなど、さまざまな場面で国や政府にお金を支払っています。
さらに、水道代や電気代などの生活する上で必要な公共料金も、払わなくてはいけないお金であることから「納める」を使います。
お金を支払うときの「おさめる」は「納める」と覚えておきましょう。
時間の場合
何かを終える場合の「おさめる」も「納める」を使います。「納」は「献上する、受け入れる」意味の他に、「物事を終わりにする」といった意味もあるので注意してください。
例えば「仕事納め」の言葉で考えてみましょう。「仕事納め」という言葉は、年内最後の仕事を終えるといった意味合いで使います。また、歌い終わるときも「歌い納め」、何かの楽器を弾き終わるときも「弾き納め」といった言葉が使われます。
何か物事を終わりにする、終わるときの「おさめる」も「納める」を使うと覚えておきましょう。
成績の場合
テストやスポーツにおける成績に対しての「おさめる」には、「修める」を使いましょう。「修」には学問や学芸を学んで身につけるといった意味があるため、「学問を修める」「英語を修める」などの使い方があります。
「身体へと染み渡るように覚える・身につける」のようなニュアンスをイメージしてください。
また、学んで身につけるとは別に「正しくなおす」という意味も含んでいます。「修理」「修繕」「改修」「補修」などの熟語が一般的な例です。
成績や修正を表している場面の「おさめる」は「修める」を使うと覚えておきましょう。
静める・混乱した状態を元に戻す場合
混乱した騒ぎを静めて元に戻す場合の「おさめる」は「治める」です。「じ」「ち」とも読まれる「治」には、心を落ち着かせたり整えたりする意味が含まれています。
例えば「争いを治める」「暴動を治める」などの使い方がイメージしやすいでしょう。「混乱した状態を元に戻す」以外にも「痛みが治る」という意味として使われることがあります。
心を整えてあるべき状態に戻したり、世の中や家の中を紀律ある状態にしたりする際の「おさめる」は「治める」と覚えておきましょう。
「収める」「納める」「修める」「治める」の覚え方
「おさめる」を表す単語は4つあり、場面に応じて使い分ける必要があります。 しかし「それぞれの意味や使い方をしっかり覚えられるか不安だ」と感じる人もいるのではないでしょうか。
4つを効率よく覚えるための方法として、熟語を使って覚える方法があります。
例として「おさめる」の熟語を紹介します。
・収める: 徴収、収容、収益、収集、収拾など
・納める: 納税、納骨、納車、納品、収納など
・修める: 習得、修行、修練、修正、修理など
・治める: 統治、治安、治権、治療、完治など
熟語を使って覚えておくと、それぞれにおける意味の違いがよりはっきりします。 4つの「おさめる」を使い分けることに不安を感じる人は、熟語を使って覚えてみましょう。
「収める」と「納める」の違いを把握して使い分けできるようになろう
本記事では「収める」と「納める」の意味や使い方に加えて「修める」と「治める」も紹介しました。同じ読み方であっても、それぞれの意味は異なるため状況に応じて使い分ける必要があります。
また、4つの「おさめる」をすぐに覚えて、使い分けできるか不安な場合は、それぞれの熟語を知っておくことでより覚えられやすくなります。本記事で紹介した例文や熟語を参考にしてみてください。