各地にさまざまな神話や言い伝えが残されている妖怪。日本ではカッパや天狗とともに「座敷わらし」が有名ですよね。
本記事では座敷わらしについて、基本的な特徴から正体や効果、座敷わらしがいるといわれる家の特徴、呼び方などを解説します。座敷わらしに会えるとされる旅館についてもまとめました。
座敷わらし(座敷童子、座敷童)とは
座敷わらしとは東北地方、特に岩手県の北上盆地を中心に伝承されてきた妖怪のことです。座敷童子、座敷童と書くこともあります。
旧家の奥座敷にいる守り神や精霊ともいわれています。民俗学者である柳田國男氏が著した『遠野物語』(1910年発行)に記されているなど、今では全国的に知られる存在となっています。
見た目の特徴はさまざま
一般的に座敷わらしは、おかっぱ頭で赤ら顔の幼い子供、年齢は5歳くらいとされています。しかし座敷わらしは大人である、夫婦であるとの意見や白い顔をしているなど、その特徴はさまざまな説で伝えられているのが実情です。
性別も男女問わず、男の子を見た人もいれば女の子の風貌だったとする人も。服装は男の子が黒に似た色の着物、女の子は着物または赤いちゃんちゃんこ姿などとされています。
イタズラ好き
古くからの言い伝えによれば、座敷わらしはイタズラ好き。部屋中を歩いたり走り回ったり、物音を立てたりすることがあるそうです。時には就寝している人の枕をいじり、場所を変えるなどの行動を取ることも。座敷わらしが胸の上に乗るとうなされることもあるといわれています。
好物
座敷わらしは小豆飯(あずきめし)を好んで食べるとされています。小豆飯とはお赤飯のことで、事前に煮ておいた小豆を白米に混ぜ合わせ、煮汁と一緒に炊いたご飯のこと。炊き上がりは赤みがかった色合いになり、今でもお祝いのときに好まれますね。
座敷わらしが好むとされる食べものには、他にもお菓子類が該当します。
座敷わらしの別名
座敷わらしには別名があり、「座敷ぼっこ」「蔵ぼっこ」「蔵わらし」「蔵っこ」と呼ばれることもあります。岩手生まれの作家、宮沢賢治の童話にも『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』という題名のものがあります。
家に住みつくとされるが、人につくことも
座敷わらしは気に入った家に住みつくとされる一方で、好みの人につくこともあるといわれています。気に入った人には、たとえ遠方にいても座敷わらしのほうから会いに来るそうですよ。
座敷わらしが見える人とは
座敷わらしの姿が見えるのは子供といわれています。大人で座敷わらしを目にする人は少ないとされていますが、心がきれいだったり運が良かったり、霊感が強かったりと、場合によっては姿が見えることもあるようです。
座敷わらしがいるとされる家の特徴
座敷わらしは、家であればどこでも住みつき姿を現すというわけではありません。出没しやすいとされる家の特徴について、簡単に見ていきましょう。
旧家
座敷わらしは通常、古くから続いてきた由緒ある旧家、年数がたっていて伝統ある家の奥座敷に住みつくことが多いとされています。反対に成り上がりの家では、座敷わらしが姿を見せることはないともいわれています。
ニワトリが先か卵が先かともいうように、座敷わらしが気に入った家が、結果的に代々長く続いている、ということなのかもしれません。
新築の場合
旧家に現れやすいとされる座敷わらしですが、新築住宅にも姿を見せる可能性もあるようです。青森県の一部で古くから言い伝えられている話によると、家を新築するときには金の玉、あるいは木彫りの座敷わらしの人形を床下に埋めると座敷わらしが来てくれるそうです。
座敷わらしを呼ぶ方法
現在暮らしている家屋に座敷わらしを呼ぶ方法としては、好物を用意するのが効果的といわれています。小豆飯など小豆を使用した料理や、お菓子をお部屋に供えてみましょう。食べもの以外であればおもちゃを置くのもいいそうです。
また、家をきれいに保ち、居心地の良い空間にすることも大切だといわれています。
座敷わらしを見たらどうなる? 幸運に恵まれる?
古くから、実際に座敷わらしを目にした人には幸せな出来事が訪れるといわれてきました。座敷わらしがわれわれに届けてくれる効果とは、一体何なのでしょうか。
家の繁栄
座敷わらしが住みついた家には、富がもたらされるといわれています。
見た人にも幸福をもたらす
家の繁栄のほかにも、座敷わらしを見た人にも良いことがあると伝えられています。言い伝えによれば男性は出世する、女性は玉の輿に乗れる、家族に恵まれるなどの幸せをもたらすそうです。座敷わらしを見た後に宝くじに当選した人もいるのだとか。
去った後は没落
一度住みついた座敷わらしが家から離れると、一家全体の運勢が悪くなるとされています。
岩手県遠野市には、矢で射られた座敷わらしが家を去り、後日家運が傾いて没落した逸話が残されているとか。柳田國男氏の『遠野物語』にも、座敷わらしが去った家で、暮らしていた20人以上が毒キノコで命を落としたとの話があります。
吉凶は座敷わらしの色で判断するとも
目の前に現れた座敷わらしが幸運をもたらすか、家から去る前触れかを判断するには、色の確認が有効とされています。
一説によると白い座敷わらしは、今後幸せなできごとが訪れることの前兆。顔や服が赤く、赤い手桶を持つなどの赤い座敷わらしは家を出る前の状態で、災難の訪れを示すともいわれています。
座敷わらしの正体・由来とは
吉凶の訪れを示す存在として言い伝えられている座敷わらしは、一体なぜ生まれたのでしょうか。その正体や、由来とされる説を解説します。
子供の幽霊説
民俗学者である佐々木喜善氏が唱えたのは、かつて圧殺された子供の幽霊が座敷わらしであるとする説です。
東北地方ではかつて、飢餓などに耐えるための口減らしで、多くの生まれて間もない赤ちゃんが犠牲になったといわれています。さらに命を奪った赤ちゃんを、土間あるいは台所に埋める風習があったそうです。この子供が幽霊となり、家に現れては人々を驚かせているのでは、という考えです。
カッパ説
また水と関係の深いカッパも、座敷わらしの正体と考えられています。元々別の場所で暮らしていたカッパが家に住みつき、やがて座敷わらしになったのでは、などといわれています。
これは水が農作、ひいては家の繁栄につながることから来ているようです。
呪い説
座敷わらしの誕生には大工の呪いが関係しているとの説もあります。かつて大工の間では、家を建てる中で仕事に不満を抱いたとき、人形を残していくなどして、その家や家人を呪う習慣があったとか。
大工の怨念が人々の目に触れる存在へ変化した、あるいは呪いが座敷わらしを呼び込むと考えられているようです。
座敷わらしが出てくる夢の意味
座敷わらしは夢の中に現れることもあります。では夢に登場する座敷わらしは何を暗示しているのでしょうか。
吉
夢に座敷わらしが現れた場合、基本的には幸運に恵まれるとされています。具体的には金運や恋愛運がアップするかもしれないという幸運の予兆です。座敷わらしと遊ぶ、あるいは座敷わらしが笑っている夢は特に運気が高まるともいわれています。
凶
座敷わらしの夢を見て気分の落ち込みなどを感じたときは、健康面に注意が必要です。体調を崩す恐れや体力低下、不安定な精神状態による集中力低下などを引き起こす可能性があります。無理せず休息を取りましょう。
座敷わらしに会えるとされる旅館・スポット
日本には座敷わらしの存在をすぐ近くに感じられる有名旅館や人気スポットが存在します。座敷わらしを待っているだけでなく、会いに行って運気を高めたいという人は、ぜひ参考にしてください。
全国各地にうわさのある宿が点在
岩手県二戸市にある「緑風荘」は、「亀麿」と呼ばれる座敷わらしの目撃談がある温泉宿です。宿には座敷わらしにまつわる伝説が存在し、中庭では亀麿を祀っている祠(ほこら)も見られます。
「生寿苑(しょうじゅえん)」は、群馬県利根郡みなかみ町の猿ヶ京温泉にある宿です。館内には座敷わらしに関するスポットがいくつかあり、実際に見たとの体験談もあるそうです。
山口県山口市で、築400年とされる古民家で営業中の宿泊施設は「座敷わらしさん家」。座敷わらしの目撃情報や、不思議な経験をしたとの報告が複数件、寄せられているそうです。一日一組だけ宿泊できるほか、日帰り参拝にも対応しています。
座敷わらしに出会うチャンスをつかんでみては?
家の守り神であるとされる座敷わらし。実際に座敷わらしを見た方には幸福が訪れ、家自体も繁栄するとか。人につくこともあるそうですが、座敷わらしが離れた後には不幸なできごとが待っているともいわれています。子供の幽霊やカッパなどが正体という説もありますが、真実は定かではありません。
旅館をはじめ、座敷わらしに会える可能性が高い施設は全国各地に存在しています。一度は会ってみたいと思うのであれば、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。