AIがどんどん進化するなか、子どものコミュニケーション能力を高めたいと考える親御さんは少なくないでしょう。人とうまくやっていく性格はどう育まれるのでしょうか?

  • 書籍『臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました』より マンガ/松尾達

前編(『幼児期に塾や習いごとをやらせ過ぎる親がハマる罠とは?』)に引き続き、臨床心理士の杉野珠理さんと、精神科医の荒田智史さんにお伺いします。

■家族より友達とつるむ「ギャングエイジ」

児童期(だいたい6歳〜12歳)では、友達と十分に遊ぶこと、つまり、仲間づくりが必要であるといわれています。小学校3、4年生ぐらいになると、家族よりも友達と行動するようになりますが、心理学ではこれを「ギャングエイジ」と呼んでいます。

「ギャング」といっても不良という意味ではなく、あくまでグループ行動をともにする同性・同年代の仲間という意味です。グループ行動をするなか、仲間の意見や行動に流されやすくなり(同調)、その結果、男の子ははめを外した行動、女の子は仲間外れが見られるようになります。そうすることで、さらにグループの結束(同調)を強めていきます。

■友人関係は人とうまくやっていく練習の場

児童期は、対人ストレスの小さい家庭から一歩外へ出て、対人ストレスの大きい仲間や友人グループといった、より高度な人間関係のなかで、人とうまくやっていく性格を育んでいく時期です。

人とうまくやっていけるかどうかは、非認知能力と関係が深いことは前編(『幼児期に塾や習いごとをやらせ過ぎる親がハマる罠とは?』)でご説明しました。

仲間に積極的に話しかけたり(自発性)、気遣ったりする(共感性)経験や、相手のデリカシーのなさ(鈍感さ)やその反対の過剰反応(敏感さ)に冷静を保ったり(セルフコントロール)、逆にツッコミを入れて笑いに変えたりする(自発性)経験を重ね、相手と心理的な相互作用(※心理的に自分と相手がお互いに働きかけ、影響を及ぼし合うこと)を起こすことで、その人の性格が形成されていくのです。

■友人と遊ばないとどうなる?

ギャングエイジと呼ばれる時期に仲間やグループに属さないことは、特有のわずらわしさがない反面、わずらわしい経験から学ぶ機会も持てず、ゆくゆく子どもが困ってしまう可能性が出てくるということです。

友達とのかかわりが少ないと、仲間づくりの練習ができず、人とうまくやっていく性格に成長できないリスクがあるといえます。

本人は友達と自由に遊びたいのに、毎日習いごとや塾に通わせることを優先してその機会を持たせない管理的な親は、「教育虐待」のリスクがあります。
また、子どもの要求に流されて一人でゲームをさせ、結果友達と遊ぶ時間を軽んじる放任的な親は、「教育ネグレクト」のリスクがあります。

なお、児童期の仲間づくりで培った「人とうまくやっていく」感覚をベースに、思春期には気の合う特定の相手、つまり親友をつくり、人間関係を深めていきます。つまり、仲間づくりは友情の土台であり、なくてはならないものだといえるでしょう。

  • 書籍『臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました』発行:集英社クリエイティブ 発売:集英社

※本記事は書籍『臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました』をベースに構成しています。

文/杉野珠理、荒田智史