「実話をもとにした小説」「主婦のアイデアをもとに生まれた製品」など、「もとに」という表現を使う機会は多いですよね。漢字で書く際に、「基に」「元に」「下に」のどれが正解なのかわからないという人も多いのではないでしょうか?
今回は、「基に」の意味や「元に」「下に」との違い、使い方などについて解説します。
「基に」の読み方と意味
「基に」に使われている「基」という漢字には、訓読みで「もと」「もとい」という読み方があります。このうち、「基に」は「もとに」と読みます。
意味は、「物事の土台、根拠となるもの」「もとづく」。
「基に」は、「基に」の前に記される事象を基準として、後に続く行動を示す表現として使用されます。
「基に」と「元に」「下に」の意味の違い
「もとに」と表記する漢字は、「基に」「元に」「下に」などさまざまな種類があるため、どの漢字を使えばいいのかわからないという方も多いはず。
それぞれ若干ニュアンスが異なるため、意味を知って適切に使えるようにしましょう。ここでは、「基に」と「元に」や「下に」との違いについて解説します。
「基に」と「元に」の意味の違い
「元に」には、「物事の根本・はじめ」という意味があります。たとえば「失敗は成功のもと」という文は、「失敗」がはじまりで「成功」という事象につながります。そのため「失敗は成功の元」と書くのが正解です。
文中に用いるときは、「~をはじめ、~を出発点として」と言い換えられるかどうかで判断するといいでしょう。
ただし「元に」は、「何かを生み出すもの」というニュアンスを含んでおり、「基に」の代わりに使うことも可能。
使い分けのポイントは、「~の根拠となるもの」という意味合いを強調したいときは「基に」を使うこと。「元に」は、幅広く用いることができると覚えておきましょう。
「基に」と「下に」の意味の違い
「下に」は「物の下の部分。また、そのあたり」「その人のところ。そば」を意味する言葉です。また、「規則や支配力の及ぶところ」を表す言葉でもあります。
たとえば、「法のもとの平等」という文は、「法律が及ぶ範囲の国民は皆平等」という意味になります。そのため、漢字では「法の下の平等」と書くのが正解です。
一方、「法をもとに権利を主張する」という文は、「法に基づいて権利を主張する」という意味があるため、漢字では「法を基に権利を主張する」と書きます。
「基に」と「下に」は、意味や使い方が異なるので覚えておくといいでしょう。
「基に」の使い方と例文
「物事の土台、根拠となるもの」を表すときに用いる「基に」。文中に使用するときはどのようなことを意識すればいいのでしょうか。ここからは、「基に」の使い方や具体的な例を紹介します。
「基に」の使い方
「基に」は、物事の根拠や基準となることを表す言葉です。そのため、「~を根拠にして」「~に基づいて」と表現したいときに「基に」を使うといいでしょう。
たとえば、実話に基づいて映画を制作したことを表現したいときは、「実話を基に映画を制作した」という言い回しで使うことが可能です。
「基に」の例文
「基に」はビジネスシーンだけでなく、日常生活やメディアなどで使われることが多い言葉です。下記の例文を参考にして、使い方を覚えておきましょう。
- このドラマは実話を基にして作られた
- 調査結果を基にしてパワーポイントを作成した
- ひらがなとは、漢字を基にして作られた文字のことである
- 300社以上の採用活動を支援してきた経験を基にアドバイスをする
- 専業主婦のアイデアを基に生まれた製品
- 集めた証拠を基に、犯人を特定していきます
- データを基に世界を正しくみる
- 発生届の情報を基に保健センターから電話する
- 震災での経験を基に検討した支援計画
「基に」の言い換え表現・類語
表現のバリエーションを広げるためには、言い換え表現や類語を知っておくことも大切です。ここでは「基に」と似た意味を持つ言葉をいくつかご紹介しましょう。
土台にして
「土台」には「物事の基礎。物事の根本。根本から。はじめから。もともと」という意味があります。
<例文>
- 今まで培ってきたものを土台にして次のステップに進む
- 基本的な知識を土台にして、新たなスキルを獲得する
- 保育士経験を土台にして、子どもや教育について考えていきたい
ベースにして
「ベース」は「もとになるもの。基礎。基本。土台」を意味する言葉であるため、「基に」と同じように使用できます。
<例文>
- 論文をベースにして有益な情報を配信している
- 基盤技術をベースにして量産技術を開発した
足掛かりとして
「足掛かり」には「高いところへ登るとき、足を掛けて助けとするところ」「物事をする場合のきっかけ。糸口」という意味があります。
<例文>
- 先生からのアドバイスを足掛かりに、新たな研究に取り組んだ
- 環境の変化を足掛かりに発展を進めていく
叩き台として
「叩き台」とは「批判・検討などを加えて、よりよい案を得るための原案」を意味しています。「検討の手掛かりとすること」という意味を含むため、「基に」の類語として使われます。
<例文>
- まずはこれを叩き台として今後の企画を練り上げよう
足場にして
「足場」には「物事をしようとするときのよりどころ」「土台。基礎」「きっかけ」という意味があります。
<例文>
- 今回のデータを足場にして、来年の目標を設定する
- 過去の体験を足場にして、新しいビジネスをはじめる
「基に」と「元に」「下に」の意味や使い方を覚えておこう
「基に」は、「物事の土台、根拠となるもの」「もとづく」という意味を持つ言葉。「実話を基にした映画」「自分の経験を基にアドバイスをする」といった文章で使います。「もと」と表記する漢字は「基」「元」「下」など種類が多いため、使い分けが非常に複雑です。そのため、場合によってはひらがなを使うのも、書き方として有効です。
幅広いシーンで活用するためには、言い換え表現や類語なども使えるようにしておくのがおすすめ。「基に」はビジネスシーンや日常生活によく用いられる言葉のため、この記事を参考に意味や使い方を覚えておきましょう。