第36期竜王戦2組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、準決勝の佐藤康光九段―菅井竜也八段戦が3月27日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、136手で勝利した佐藤九段が決勝トーナメント進出と1組昇級を決めました。
佐藤九段が積極策で作戦勝ち
振り駒が行われた本局、先手となった菅井八段が角道を止めた三間飛車に組んだのに対して後手の佐藤九段は居飛車銀冠を採用。穏やかな組み合いが続いたのち、局面はオーソドックスな対抗形の持久戦に落ち着きました。菅井八段が左銀を立って攻撃陣を組み替える動きを見せたところで、佐藤九段が飛車先の歩を突き捨てて戦端が開かれました。
突き捨てを歩で取ると8筋からの突破を狙われる菅井八段は角で取ってしばらく受けに回る方針を採りますが、この利かしに満足せず4筋の歩を突き捨てたのが後手の佐藤九段の機敏な動きでした。素直に応じると王手飛車取りの角打ちがあるため、先手はこの歩を取ることができません。積極的な仕掛けで主導権を握った佐藤九段が中盤戦をリードします。
馬の働きが勝敗分ける
盤面左方でのねじり合いが続いたのち、先手の菅井八段にもチャンスが巡ってきます。6筋に作ったと金を拠点として5二の地点に香を打ち込んだのが遅いながら確実な攻めで、「と金の遅早」の格言通りの銀冠崩しが確実になりました。受けがないと判断した佐藤九段もこれに急所の桂頭攻めで応戦して、局面はお互いの囲いを直接攻め合う終盤戦に突入します。
激しいやり取りが続いたのち、局面を一歩抜け出したのは後手の佐藤九段のほうでした。菅井八段が金取りに竜を入った手に対して、9筋で遊んでいた馬を大きく使って先手玉に詰めろをかけたのが狙いすました攻防の決め手。この手が取られそうになっていた自陣の金にヒモをつける一石二鳥の好手となり、一気に攻守が逆転しました。
終局時刻は21時31分、最後は自玉の受けなしを認めた菅井八段が投了を告げて決着がつきました。これで勝った佐藤九段は決勝トーナメント進出と1組昇級を決めています。
水留 啓(将棋情報局)