先日開かれたカメラ展示会「CP+2023」のキヤノンブースで熱い視線を集めていたのが、4月発売予定の「EOS R8」です。フルサイズフォーマットのイメージセンサーを搭載するミラーレスで、「EOS R6 Mark II」の下位に位置付けられるモデルとなります。同じポジションには「EOS RP」が存在していますが、そのモデルチェンジ版と思いきや、どうやら違う模様です(EOS RPは継続して販売されます)。そのようなEOS R8を改めて検証してみることにしましょう。
さまざまな装備を簡略化して大胆な薄型軽量化を図った
まずは手にして驚かされるのが、フルサイズモデルとしての大きさと質量。EOS RPもコンパクトで軽量な部類に入りますが、本モデルも同様です。マウントがひときわ大きく感じるボディサイズは、手のひらにすっぽり収まる感じを受けます。手ブレ補正機構を搭載してないこともあり、ボディの厚みも上位モデルにくらべ薄く仕上がっています。
質量は、EOS RPよりもさらに20gほど軽い461gとのこと。フルサイズのイメージセンサーを積むミラーレスとしては、驚きに近いものがあります。しかも、カメラの中心部を支えるシャシーは高い耐久性を誇るマグネシウム合金製であり、外装の構造も撮影環境を選ばない防塵防滴の採用と、上位モデルと変わらないことにも驚かされます。エントリーモデルに位置付けされるモデルですが、そのサイス感からプロやベテランのサブカメラとしても使い勝手はよさそうです。
操作感としての注目点は、電源スイッチの位置となります。すでにEOS R6 Mark IIや本モデルと同時発表のAPS-C機「EOS R50」でもそうでしたが、シャッターボタン側のトップカバーに配置され、この位置がEOS Rシステムの今後の定位置であることを強く知らしめるものです。もちろんこの位置としたのは、カメラを持った右手だけで操作できることにあるのですが、実際とても具合がイイ。こまめに電源のON/OFFがしやすいため、バッテリーの節約に一役買ってくれそうです。ただ、以前のEOS Rシステムを使用するユーザーは、最初のうちは戸惑うことも多そう。「EOS R5」をメインのカメラとしている筆者も、トップカバー左にある静止画撮影/動画撮影切り換えスイッチを電源スイッチと勘違いして操作してしまうことがたびたびありましたので、従来からのEOS Rユーザーは慣れるまでちょっと意識しておいたほうがいいでしょう。
キーデバイスの注目は、EOS R6 Mark IIと同じイメージセンサーとなるでしょう。画素数は有効2,420万画素と十分。しかも新シャープネス処理の採用により、3,000万画素に匹敵する解像感が得られるといいます。EOS R6 Mark IIのレビューでお伝えしたように、その解像感の高さはレタッチソフトで単純にシャープネスを上げたものと異なり、硬い印象を与えたり、ディテールの損失などはありません。イメージセンサーの特性に最適化されたカメラ内画像処理による癖のない自然な解像感の高さと述べてよいものです。最高感度は常用ISO102400を実現しています。高感度域におけるノイズの発生はよく抑えられているので、スナップなど日常的な撮影ではISOオートに設定しておいても写りは問題ないように思えます。
AFもEOS R6 Mark IIと同様と考えてよいものです。一度捕捉した被写体を選択した測距点とは関係なくファインダー内で追い続けるトラッキング機能や、被写体をカメラが判断してピントを合わせ続ける被写体検出機能など、ここ最近登場しているEOS Rシステムと同じく搭載しています。測距点を素早く選択できるマルチコントローラーは搭載していませんが、このようなAFを活用すれば、さほど気にならないように思えます。さらに、絞りF22までの光束対応のAFも特筆すべき部分。例えば「RF800mm F11 IS STM」と「EXTENDER RF2×」との組み合わせでは開放絞り値F22となりますが、それでもAF撮影が楽しめるのです。しかも、ファインダーの像は一眼レフのようにレンズの開放F値に左右されることがなく、明るく快適。ミラーレスならではといったところです。
シャッター方式は、電子先幕シャッターと電子シャッターを搭載しています(メカシャッターはありません)。最高シャッター速度と最高コマ速については、電子先幕シャッターの場合で1/4000秒・6コマ/秒、電子シャッターでは1/8000秒・40コマ/秒となります。電子シャッターの場合、問題となりやすいローリングシャッターゆがみについては、EOS R6 Mark IIと同様によく抑えられており、高速で目の前を通り過ぎる被写体を追いかけるような撮影条件でない限り発生することはないように思えます。
電子シャッターを活用したRAWバーストモードの搭載も注目点。この機能は、電子シャッターで30コマ/秒の高速連続撮影を行うもので、シャッターボタンを押す0.5秒前から記録を開始できるため、野鳥の飛び立つ瞬間なども撮り逃しを抑えられます。なお、このRAWバーストモードで撮影したRAWデータを閲覧・生成するには、同社の現像ソフト「Digital Photo Professional」を使用する必要があります。
EOS R6 Mark IIの簡略版ともいえる本モデル。小型軽量なフルサイズ機ながらスペックに不足を感じるようなところは見当たらず、エントリー機としての位置付けを考えた場合とても満足できるモデルに仕上がっています。上位モデルと異なり、サブ電子ダイヤル1やマルチコントローラーなどが省略されていますが、むしろ割り切った操作性により、シンプルにフルサイズの写りが楽しみたい写真愛好家に訴求でき、それは“フルサイズKiss”と例えてよいかもしれません。
ただし、少々気になるのがプライスタグ。同社のオンラインショップでは、ボディ単体で264,000円と、クラスを考慮するとちょっと強気の価格設定であるように思えてなりません。ちなみにEOS RPの実売価格はボディ単体モデルが132,000円で、EOS R5はちょうどその倍ほどの価格となります。果たしてそれが今後どのような結果となるか、静観しておこうと考えています。
【編集部より】今回の評価に用いたEOS R8は試作機のため、製品版とは異なる場合があります。作例はいずれもリサイズして掲載しています。