仮面ライダー誕生50周年を記念して企画された映画『シン・仮面ライダー』(監督:庵野秀明)が、現在公開されている。本郷猛/仮面ライダー役の池松壮亮、緑川ルリ子役の浜辺美波、一文字隼人/仮面ライダー第2号役の柄本佑が作品への思いを語った。

――『シン・仮面ライダー』の出演が発表された際の周囲の反響はいかがでしたか?

池松:反響は物凄かったと思います。連絡も沢山来ましたし。周りにほとんど話していなかったので驚いたと思いますし「まさか池松だったとは」と言われました。

浜辺:私は情報解禁もそうですが、プロモーション映像の感想を言っていただけることが多かったです。池松さんが歌っていらっしゃっていて最後にタイトルがジャーンと出るプロモーション映像を観て「すごくカッコよかったよ」という声をたくさんいただきました。

柄本:最初にさらっとウチの父に「庵野組に出ることになって仮面ライダー第2号をやることになったんだ」と話した時は「おお!」くらいの感じだったのですが、後日僕の仕事にあまり興味を持っていない叔母から電話がかかってきて「アンタ仮面ライダーやるの!?」と言われました。「うんそうそう」と伝えたら「ちょっとすごいね」と言われて(笑)。

池松・浜辺:(笑)

柄本:なるほど、うちの叔母を動かすかと思いました。

――柄本さんは「プレッシャーを感じている」とコメントされていましたが、どのように乗り越えたのでしょう。

柄本:演じる前から若干プレッシャーはありましたね。ただ、やっているときは普段の仕事とそんなに変わらないかなと思います。

池松:プレッシャーはキャラクター自体が負っているものでもあります。自分たちが世界を変えるだけの力があるのか、あるいは力を扱うに足る人間なのかという葛藤のお話なので、そういったものをむしろちゃんと利用したり手放さずに演じていければとは思っていました。プレッシャーや挑戦を乗り越えていく過程、未知の世界で克服し、新たな姿へと変身してゆく物語、仮面ライダーに変身する物語、それを普遍的かつ現代的なテーマとして、今を生きる人々に届けることが重要だと思っていました。

浜辺:私はどちらかというとクランクインする前のほうがプレッシャーは強かった気がしています。当時の仮面ライダーについては詳しくはありませんでしたが、『仮面ライダー』シリーズにすごく憧れがありました。TVシリーズは劇場版を観に行くくらい好きなのですが、TVシリーズに関わらせていただけるチャンスは正直、あまりないのかなと少し思っていました。新しい“仮面ライダー”に関わることができると決まったときには「どんなことが始まるんだろう」とワクワクしましたし、同時にプレッシャーもすごくありましたが(撮影に)入ったら現実世界のような感覚になってしまったのでその中で「生きる」という感覚になりプレッシャーはなくなった気がしています。

――それぞれの役を演じるにあたって、どういう準備をされたりどういった部分がキーポイントになると感じていましたか?

池松:地球を守れる身体作りからはじめました。そしたら靱帯を痛めて、松葉づえ状態になってしまいました(笑)。最初は地球を守ろうと思っていたのですが歩くのが精いっぱいで何もできなくなってしまい、初めの1ヶ月はたくさん迷惑をかけてしまいました。あとは今回の本郷猛には、純情のようなものが必要だったかなと思います。

浜辺:最初にルリ子が登場する(TVシリーズの)第1話を観たのですが、見た目や傾向が似ているからという理由で庵野さんがキャスティングしてくださったわけではなかったんだなと感じました。そこで、とらわれすぎずに自由に作り上げられたらいいなと思いました。

私はいちお客さんとして仮面ライダーというヒーローに憧れていた気持ちがありました。今回演じさせていただいたルリ子も、彼女にとって初めて出会ったヒーローが仮面ライダーだったのだと思います。自分にとって圧倒的な存在が本郷猛で、その人を初めてヒーローと定義したのがルリ子だったらいいなと感じていました。

柄本:役作りという風なことで言うと池松さんがさっき言っていたように体力づくりとかアクションに対するアプローチはあったりしましたが、衣装が一番でした。ライダースーツオンリーでそれにコートがあるかないかでしたから、ああいった風にフィクション度が強いものだと変に自分からどうこうというよりはその世界観に乗っかりさえすればいいという感覚でした。一文字隼人という役をやるうえで衣装合わせしてサイズを測り何回も着たりしていくことにある種乗っかっていけば自分から何かをやっていくという風なことは特になく、身体を動かせるようにしておくくらいですかね。庵野さんの演出で世界観が明確にあったのでそんなに自分から行ったということもなく、ただひたすらセリフを覚えて言っていたという感じです。

――庵野監督から「こういう作品を観ておいたら?」といったようなリクエストはあったのでしょうか。

池松:特にありませんでした。今回、「仮面ライダー」を大好きな人たちが現場に大勢いて、みんなが「何話のこのシーンが……」みたいに物凄くコアな話をしていて、その中でも庵野さんだけが知っているみたいなこともあって。とてもじゃないけどの手の話にはついていけませんでした。その領域にで話すには何十年もかかると思いました。

柄本:そんな「仮面ライダー」が大好きな人たちが現場にいたじゃない。その前で仮面ライダーをやらなくちゃいけない。

池松:大変でしたよね(笑)。

柄本:各々「仮面ライダーのここが好き」が微妙に違うから、1人が「この時のひじの位置はこうだ」と言ってくるんだけど別の人が来て「いや違う、もうちょっとここだ」と触られて……

池松:上げ下げさせられるんですよね。

柄本:そうそう(笑)。そうしたらまた別の人が来て「もうちょっと下で」みたいな(笑)。大事にしているところがみんな違うから、次はあの人・今度はこの人のパターンでやりましょうみたいな感じで撮って(笑)。

浜辺:(笑)。確かにそういったときはすごかったですよね。

柄本:そう! 決めポーズのシーンになるとみんなの目がぎらついて……。言いに来る人が全然違うもん(笑)。

池松:中には仮面ライダーがジャンプするたびに涙ぐむスタッフの方がもいたりとか……

柄本:いたいた。仮面ライダーと仮面ライダー第2号が並んだ途端泣きだしたりね。

池松:そういった人達にぼくは仮面ライダーにしてもらったんだろうなと思います。尋常じゃないくらいに仮面ライダーが大好きな職人たちの身を切るようなこだわりや仕事ぶりに。

――いまのお話を伺っていても、かなり特殊な現場だったのだなと思います。

池松:あらゆることが特殊で、これまで経験してきた映画作りとは何もかもが違いました。カット割も特殊で、カメラの台数も多いので、誰に何をどう撮られているかが全然わかりませんでした。撮影中もみんながカメラを構えて、自分の好きなアングルを探して……変な感じでしたね。常に囲み取材みたいでした(笑)。

浜辺:確かに。