TBSラジオの新番組『朗読・斎藤工 深夜特急 オン・ザ・ロード』(4月3日スタート、毎週月曜〜金曜 23:30〜23:55)の記者会見が24日、都内にて行われ、斎藤工、沢木耕太郎氏が登壇した。

  • 左から斎藤工、沢木耕太郎氏

沢木耕太郎氏の紀行小説『深夜特急』全6巻すべてを朗読する同番組。ラジオ放送に加え、Amazonオーディブルでオーディオブックとしても配信される。

朗読を担当する斎藤は「僕の人生のバイブルである『深夜特急』、そして沢木耕太郎さんとこうして交点を持つタイミングがやってくる人生だとは思っていなかった」と率直な思いを明かし、「大きな責任と、同時にバックパッカーの気軽さを持ち合わせ、多くの方に“音の深夜特急”に乗車いただけるように精進していきたい」と意気込み。

一方の沢木氏は「こういう場所に出てくるのは一生に一度か二度で、自分は場違いなのですが、斎藤さん一人をこの場に立たせるのはかわいそうな気がして。父兄の付き添いのような気持ちで来てる(笑)」と冗談めかし、会場の笑いを誘った。

『深夜特急』を読んで影響を受け、18歳で香港をはじめ世界各国を旅した斎藤は「この作品に出合って、読み終える頃には日本にいなかった、というくらい、冒頭にある『これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ』という一行が、漠然とした恐れや不安があった“自分が住んでいる場所から出る”という行動を起こすきっかけ……着火に近いような体験だったんですね」「当時僕はたくさんの映画に魅せられていたのですが、沢木さんの書かれる文章から、土の匂い、風の匂いといったものが自分のなかに広がって。『深夜特急』と自分が共犯関係にあるなかで、沢木さんの20代の旅をなぞるという、かつてない体験があった記憶がある」と回顧。

その上で「僕という媒介を通して、『深夜特急』に触れていない世代の方にとっても、それが旅ではなくても、僕が体験したような何かのきっかけになればいいなという思いでいっぱいです」「僕自身、音声で色々な作品を自分の日常と重ね合わせて受け取るという日々なので、(新番組は)未来に向かったプロジェクトになるんじゃないのかなと、いちリスナーとしてもワクワクしています」と声を弾ませた。

『深夜特急』のあとがきには、「恐れずに。しかし気をつけて」という一文が記されていたが、コロナ禍を経た今、 語順を変えて「気をつけて、だけど恐れずに」と伝えたいという沢木氏。

「『深夜特急』のあとがきに書いたときには、どこかで若い人たちに向けたメッセージだった。それは一歩を踏み出すことを恐れない。だけど、一歩踏み出して、未知の世界へ行ったときに『気をつけて』と。だけど、今のこの状況のなかでは、あまりに気をつけることばかりで、その一歩を踏み出すことを阻止するような圧力を感じたり、あるいは自分の内在的な気持ちとしてあったりするんだろうけど」と前置きしながら、「今は、一歩を踏み出すことを恐れないことのほうが大事なんじゃないのかなと思って。気をつけて、だけど恐れずに一歩前に行ったほうが楽しいんじゃないのかなと思ったんですね」と説明した。

そして最後にリスナーへのメッセージとして、「斎藤さんの物語性のある声で、僕が書いた作品を半年にもわたって聞かせてもらえるというのは本当に楽しみ。毎日楽しく聞かせてもらおうと思っていますので、皆さんも良かったら一緒に聞いてみてください」(沢木氏)、「本当に長い旅にはなると思うんですけど、どうかお気軽に。途中乗車も途中下車もありだと思いますし、音の旅を一緒に楽しんでいただきたいなと心から思っております」(斎藤)と伝えた。