副業としての「サラリーマン大家」は、大きな収入が手に入るチャンス

「たまには、旅行をしたり、おいしいものを食べにいったりするプチ贅沢をしたい」
「老後、不安なく暮らせるように、しっかりと備えておきたい」

このような思いから、少しでも収入を増やしたい、副業を考えている、という人は多いのではないでしょうか。

そのなかでも、うまく運営すれば、大きな利益になったり、不労所得を得られたりという大家業に興味がある方もいらっしゃると思います。

約10年前、「サラリーマン大家」という言葉が流行り、今では副業の選択肢の1つとして選ぶということも浸透してきました。

実際に、私もサラリーマン大家として、大家業を開始。これまで工夫を凝らしたアパートを合計12棟運営、そのうち6棟を売却してきました。売却利益としては、約6,000万円。また、現在運営する物件からも安定的な収入を得ることができています。

しかし、10年、20年前と大家業を取り巻く環境もガラリと変わり、今から始めるのは大丈夫なの? と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

さらに、特に近年は、時代は変わり大副業時代。クリエイティブ系、インターネット系……多種多様な副業の選択肢も増え、そんななかで、今あえて、「サラリーマン大家」を始めるという選択肢はアリなのか? という疑問が出てくることもあると思います。

今回は、そんな疑問についてお答えしていければと思っています。

また、現在の大家業を取り囲む状況を踏まえて、「このようにすれば成功に近づく」というアイデアもあわせてご紹介していきます。

今、副業としての大家はアリ?

私が始めた2004年頃や、サラリーマン大家が流行した約10年前とは状況がガラリと変わりました。正直、特にここ最近は正直厳しい状況が続いています。

というのも、数年前、"かぼちゃの馬車事件"が起きてから、金融機関による個人への融資の審査が急激に厳しくなりました。"かぼちゃの馬車"という女性用シェアハウスの販売時に銀行による不正融資が行われたもので、しかも、その賃貸事業が破綻したことから投資した人々は大きな負債を抱えることとなり、社会問題にもなったのです。

そのため、厳しい状況の中でもなんとか融資を取り付けるためには、金融機関の担当者に自分が確実に返済のできる人間だというアピールをすることが必要になっています。

また、融資が降り、実際に大家になれたとしても、空室というリスクがあります。空室率も2022 年12月時点で、もっとも人口が密集する、東京23区の賃貸住宅の空室率は約14.5%となっています。

  • 出典:東京都の賃貸用住宅の空室率一覧(ライフルホームズ)より

仮にアパート20室を家賃5万円で運用していて、空室率が15%だとしたら、年間180万円の損失です。意外と大きな金額ではないでしょうか。

大きなチャンスが至るところに転がっている

それでも、まったく可能性がない、とは思いません。むしろこの大家業は、チャンスがいたるところに転がっている、とさえ思います。

何人もの不動産業界の方々とお話をしましたが、奇しくも複数の人が「衣食住のうち、衣食には数多くのサービスがあるのに、住のサービスはまだまだ発展途上なんですよね」と言っていました。

なるほど、まわりを見まわせば、住の世界では家具レンタルやトランクルーム、一人暮らしの高齢者に安心・安全を届けるプログラムなど、新しい商品・サービスはさまざまに出てきていますが、こと賃貸住宅の世界においては新規開拓の余地がたくさん残されていると感じます。

言い換えれば、いまはまだ競争相手がそれほどいないブルー・オーシャンの状態です。だからこそ、副業として、大家業を選択する価値は十分にあると思っています。

私がこの大家業を長年営んできて、薄々感じているのは、立地や設備に頼りすぎている、従来型の大家さんから、徐々に脱落していくのでは……ということです。逆に言えば、「付加価値」を物件に持たせることができる大家さんは、この先、生き残っていくと思うのです。

実際、

・就職の内定がスムーズに取れる学生向きアパート。
・ジョン・ポール・ジョージ・リンゴがいつもそばにいるビートルズ・アパート。
・ドラマの聖地めぐりどころか聖地に住んでしまえるロケ地アパート。

これらの物件は、「絶対ここに住みたい!」と願う物件のファンをつくり、その気持ちを強く惹きつける人気物件となっています。

どんなに立地が悪くても建物が古くても、自分のアイデア次第で人気物件にできる。私はそんな、「強力な個性」を持つ物件を「一芸物件」と呼んでいます。

こういった一芸物件を作れれば、大家業の成功へ大きな一歩を踏み出せるのではないかと思っています。

それでも、「おもしろそうだけど、うまいアイデアなんて、そうそう出てくるものではないでしょ!」と思う人もいらっしゃるかもしれません。そこで次回では、具体的に「一芸」のアイデアを生み出すための方法論についてお話していければと思います。

著者プロフィール:井上敬仁(いのうえ・たかひと)

一芸物件専門家。2021年、株式会社未来人材キャリア開発を設立。「キャリアカウンセリングつき賃貸」として一芸物件を売り出し、満室経営を実現。また、学生の就活支援などにも従事している。著書に『高い家賃なのにいつも満室になる人気物件のつくり方 一芸物件』(アスコム)。