25日・26日に2夜連続で放送される『キッチン革命』(テレビ朝日系21:00~)は戦前から戦後にかけての激動期に“食に関わる革命”を起こして日本を変えた2人の女性を主人公にしたスペシャルドラマ。第1夜は、あらゆる家庭で豊かな食生活が営めるよう、現代のレシピ=“料理カード”を作った女性医師・香美綾子(葵わかな)の奮闘と、先輩医師・昇一(林遣都)との愛を描く。第2夜は戦後復興の荒波の中、暗く寒々しかった台所に光り輝くステンレスのダイニングキッチンを導入した日本初の女性建築家・浜崎マホ(伊藤沙莉)とバディ・本郷義彦(成田凌)のエネルギッシュな改革の物語だ。
今回は第1夜に出演する葵わかなと第2夜に出演する伊藤沙莉が、共演者や互いの作品の印象を語った。
■元気や勇気をもらえたセリフ
――お2人が演じる綾子とマホが時代を切り開いていく今作で、元気や勇気もらえたセリフがあれば教えてください。
葵:美村(里江)さん演じる仲居の藤子さんとのシーンで、「どうしてそんなに頑張るんですか、誰のために頑張るんですか」と聞かれたときに綾子が「世の中の人を健康に幸せにしたい。あなたも、ここで働く人も、あなたの家族も」と答えるのですが、他人の幸せを行動の動機にできるところが素晴らしいなと感銘を受けました。常に皆が悲しまないように、幸せになれるようにと考え、他人のために何かすることにリミッターのない綾子は私の憧れです。
伊藤:マホの「できない理由を考えるよりできる方法を考える」という台詞には「確かにそうだよね」と衝撃を受けました。「どうしてできないんだろう」と自分を責めるときも一歩踏み出せないときも、人の行動を邪魔するのはいつも“できない理由”だと思うんです。それを知り尽くしているマホが「できる方法を考えよう」と言うことで、皆に元気や勇気を与えて奮起させることができる……大好きなセリフです。
■夫婦役の林遣都、バディ役の成田凌の印象
――葵さんは林さんと夫婦役を演じますが、林さんの印象を教えてください。
葵:私も林さんもおしゃべりなほうではないので、黙っていても成り立つ現場の空気は居心地が良かったです。綾子と昇一さんは、お互い実現したいことや信念をしっかり持っている研究者。研究者として突っ走っている中で夫婦の絆を感じ合える2人だと私は感じました。そんな夫婦像を直接話したわけではないのですが、演じていると林さんもそう考えているのではないかと感じることができて、自然と2人の芝居がリンクしていった感覚があります。言葉を交わさずとも、そのシーンになれば年齢を積み重ねてきた夫婦として存在できた気がして、楽しく演じられました。
――伊藤さんは成田さんとバディのような役どころでの共演となりましたが、成田さんの印象を教えてください。
伊藤:「こういう作品にしていきたいね」と相談しながら、成田さん含む公団チーム皆で仲間意識を持って作っていくことができました。「よーい、はいっ!」と言った瞬間立つという実験のシーンのリハーサルを戸塚(純貴)さんたちがやっていたのですが、私と成田さんは時間の関係で参加できなくて。そのリハーサルがあまりにも楽しそうだったので、監督に「どうして入れてくれなかったんですか! やりたかったです!」と2人で熱く訴えるくらい現場が楽しかったです。もっと同じ時間を皆で過ごしたかったと思えるようなメンバーでした。私たちの作品づくりへの活気や熱は、マホたち公団チームの台所作りへの思いとリンクしていたんじゃないかなと思います。
■互いの出演エピソードの感想
――お2人はそれぞれ第1夜、第2夜もご覧になったとのことですが、感想を教えてください。
葵:第1夜では、綾子というキャラクターの成長から描かれていましたが、第2夜の主人公のマホさんはすごくシャキッとしていて、「できる人がどうやって自分のアイデアを世に広めていくか」というストーリーだったので、構成から違っていて面白かったです。監督から第1夜と第2夜で全然違う作品のように撮りたいと聞いていたのですが、いざ拝見すると「なるほど」と。第2夜の、会話劇で進んでいくスタイルも魅力的で、明るく楽しそうな世界観は羨ましいくらいでした(笑)。マホさんはあの時代の中で台風を自ら巻き起こすような力強い女性。それでいて柔らかさや穏やかさも兼ね備えているからこそ、たくさんの方に愛されているんだなと感じました。その魅力はマホさんのものでもあり、演じている沙莉さんのものでもあるのかなと思ったので、またぜひ別の作品でご一緒したいです。
伊藤:ワクワクしながら拝見すると「全然違う作品じゃん!」とビックリ(笑)。第1夜は温かくて優しい時間の中で紡がれるしっとりとした作品に仕上がっているのですが、綾子と昇一さん夫婦については「まさか」という展開でした。素敵なキャラクターばかりでしたが、応援したくなったのはやっぱり綾子さん。葵さんの声や表情で表現される綾子だからこそ、「頑張れ」と言いたくなる女性になっているんだといち視聴者として感じました。年齢を重ねていく姿を演じるのは難しいと思うのですが、実は監督たちが「そこに関しては心配してないよね! 葵さんならやってくれる!」と現場で話しているのを聞いたんです。完成した映像を見て、その言葉の意味が分かりました。“哀愁”を表現できる女優さんに自分自身憧れているのですが20代で体現できる葵さんは本当にすごい。感動しました。
■頑張っている女性たちへのメッセージ
――では最後に、綾子さんやマホさんのように頑張っている女性に向けてのメッセージをお願いします。
葵:今回頑張る女性を演じられてすごくうれしかったです。今の時代はジェンダーの考え方や捉え方も変わってきましたが、その息吹も感じられなかった時代に一生懸命生きていた女性がいたんだなと、今作で改めて知ることができました。女性が何かに挑戦するには難しい時代だったと思うのですが、弱音を吐かず世の中を見捨てず、自分のやりたいことを全うした綾子やマホさんの姿に、私自身背中を押されました。今の時代を生きる皆さんにも、きっと2人の思いが届く作品になっていると思います。
伊藤: “戦う人”って性別問わずかっこいいですよね。女性が挑戦しづらい時代に、綾子さんやマホのような女性たちが戦う場所を作ることから始めてくれたから、今を生きる私たちに戦う場所があると思うんです。やりたいことを実現したり、生み出したり作り出したりしながらいろんなものと戦う姿を見るとすごく応援したくなるし、私も一緒に頑張ろうと勇気をもらえます。世の中や従来のものに疑問を持ちながらも、いろんな矛盾さえ楽しんで、自分を信じていろんなことに挑戦している綾子さんやマホの姿から、「皆で一緒に頑張ろう」という思いを抱いていただけたらうれしいです。
1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。2009年女優デビュー。2017年NHK連続テレビ小説『わろてんか』でヒロイン・藤岡てん役を好演し、お茶の間の人気を獲得する。2019年にはエランドール賞 新人賞を受賞。近年の出演作にドラマ『年の差婚』(20)、舞台『冬のライオン』(22)、舞台『COCOON PRODUCTION 2022 NINAGAWA MEMORIAL「パンドラの鐘」』(22)など。2023年はW主演ドラマ『ホリデイ〜江戸の休日〜』、主演ドラマ『三千円の使いかた』が放送され、4月22日スタートの日本テレビ系ドラマ『Dr.チョコレート』にも出演。今秋には主演ミュージカル『アナスタシア』の公演が控える。
1994年5月4日生まれ、千葉県出身。2003年にドラマデビュー。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(17)で注目を集め、ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、ブルーリボン賞助演女優賞、山路ふみ子女優賞、文化庁芸術祭放送個人賞など受賞歴多数。近年の主な出演作に映画『ちょっと思い出しただけ』(22)、ドラマ『ミステリと言う勿れ』(22)、『拾われた男 Lost man Found』(22)、『ももさんと7人のパパゲーノ』(22)、舞台『首切り王子と愚かな女』(21)、『世界は笑う』(22)など。公開待機作に映画『宇宙人のあいつ』(5月19日公開予定)、主演映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(6月30日公開予定)があり、舞台『パラサイト』が6月より上演される。2024年には、前期NHK連続テレビ小説『虎に翼』で主演を務める。