NASAと米宇宙インフラ開発会社・Axiom Space社が現地時間の3月15日、2025年予定の有人月面探査ミッション「アルテミスIII」における、月面探査用の新しい宇宙服のプロトタイプ「AxEMU」を公開し、ネットで話題になっている。宇宙服を新型へ更新するのは、なんと約40年ぶりなんだそう。

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    NASA、約40年ぶりとなる新しい宇宙服のプロトタイプを公開

「AxEMU(Axiom Extravehicular Mobility Unit)」は、高い機動性と保護機能を備えるという最新型の宇宙服。NASAの宇宙服プロトタイプ「xEMU(Exploration Extravehicular Mobility Unit)」の開発に基づき、最新技術や強化された機動性、月での危険からの保護を組み込んでいるとのこと。硬い胴体には、さまざまな可動関節を持つ腕と脚を備え、新しいブーツと手袋には、月面での長時間作業を想定して、柔軟性と耐久性を搭載。ブーツに関しては、一年中日光が届かず特に寒くなるという月の南極にあるクレーター内部での作業のために、完全な断熱構造になっているそうだ。

この宇宙服は、上半身部分と下半身部分に上下が別れた従来の宇宙服とは異なり、背中に「ハッチ」がついたワンピース型の構造をしている。宇宙飛行士は、後ろからこのハッチに足を入れるようにして着るのだとか。

見た目は、オレンジ色や水色のアクセントが効いた黒色の宇宙服で、このデザインの面でも、白を基調としていた従来の宇宙服とは一線を画す。ただこの黒色は、スーツに関する独自情報を漏らさないためのカバー素材だそうで、その下には熱を反射して極端な高温から宇宙飛行士を守るために白色が採用されているという。

またNASAによると、この宇宙服は幅広い乗組員の「サイズ」に適合するように作られており、米国の男女人口の少なくとも90パーセントに対応できるのとのこと。

新型はかなり動きやすそう。ちょっとゼントラーディ感ある

Axiom Space社のエンジニアであるジム・スタイン氏が、この宇宙服を着用し動いている様子をYouTube上で確認できる。歩き回ったり、膝をついたりして機動性を示している。また、物を掴んで腕がどれだけの柔軟性を持っているかを披露した。

NASAのビル・ネルソン長官は「NASAの長年の研究と専門知識を基にしたAxiom Space社の次世代宇宙服は、女性初の月面歩行を可能にするだけでなく、これまで以上に多くの人々が月面で探査や科学活動を行う機会を提供します」とコメントしている。

今後Axiom Space社は、開発が進むにつれ、生命維持装置や圧力衣における現代の技術革新を用いて改良を続けていく予定としている。

ちなみに、現在国際宇宙ステーション(ISS)の船外活動で使われている現行の宇宙服は、製造から既に40年以上が経っているのだそう。これは、宇宙服が多層の材料を複雑に重ねて作られていることから、機械ではうまく縫えず、手縫いでしか製造できず、その手作業の裁縫技術を継承するのが難しいからなのだそう。先端技術の分野で、職人芸が重要な位置を占め、さらにそれがロストテクノロジー化しつつあるという状況に驚く。

そこで、NASAは自ら「アルテミス計画」の宇宙服開発に着手した。しかし、月での船外活動と火星での船外活動では温度や放射線量など、宇宙服に求められる仕様が大きく異なるなどの理由から開発は難航。そして、2019年に「xEMU」を発表した。しかしその後、開発遅延などで方針を転換し、次世代宇宙服の開発・製造を担う民間企業を募集。2022年9月にアルテミス計画の有人月面着陸で使用する宇宙服を開発・製造する企業として、Axiom Space社が選定されていた。

ネット上では「マクロスみがあって本当かっこいい」「戦艦大和にしても近代の凄い技術でさえロストテクノロジー化しちゃうってなかなか面白いよな」「いつかぴっちりスーツになるんだろうか」「スマートになってかっこいい」などの声が寄せられた。