ビジネスシーンなどでよく聞く「クッション言葉」。対面での会話だけでなく、電話対応やメールの文面にも使用できるクッション言葉について、具体的にどういったものなのかや、実際に役立つシーンを解説します。それぞれの場面でのクッション言葉一覧、例文や注意点もまとめました。
クッション言葉とは
「クッション言葉」はビジネス枕詞とも言われ、会話の際に前置きとして添えることにより、そのままストレートに言うよりも相手に伝わる言葉の印象を和らげる効果があります。まさしく「クッション」のように、言葉の衝撃を和らげるためのものです。
また、自身の「申し訳ない」と思う気持ちや、「もしかしたら相手としては迷惑かもしれないけれど…」といった、相手をおもんぱかる気持ちを伝えることもできるのです。
では、実際にクッション言葉が役立つ場面というのは、どのような状況なのでしょうか。
クッション言葉が役立つ場面6選
日常生活はもちろんですが、ビジネスシーンには特にクッション言葉が役立ちます。ビジネスの場は人との会話であふれており、あまり親しくない人とやりとりすることも多いです。メールの文面や電話での挨拶、会議や訪問などのあらゆる場面で、クッション言葉が活躍します。
主な6種類の場面を見ていきましょう。
何かを依頼したいとき
誰かに依頼をする際は「お忙しいところ恐れ入りますが」などのクッション言葉を使用します。
すると相手に対し「あなたが業務で忙しいことを理解しています。しかしその上で依頼したいです」と申し出ていることを伝えられます。
クッション言葉を文頭に置くことで、「自分は相手の状況を気にしている」というニュアンスを文の中に含めることができるため、相手に「今、忙しいんだけど!?」と不快に思わせる可能性が低くなるのです。
修正・改善をお願いしたいとき
何かの修正や改善、やり直しなどをお願いしたい場合には「私の説明が十分でなかったかもしれず恐縮ですが」や「こちらの都合ばかりで恐れ入りますが」などの言葉を使用します。
こうすることで、こちらの説明不足が原因かもしれないことや、根本の原因は相手だけでなくこちらにもある、というニュアンスが含まれるのです。
友人などの親しい間柄ではなくビジネスの関係性では、意見や要望を伝えるのは難しいものです。そのような場面で、自分の意思を穏便に伝えることができるクッション言葉は重宝します。
質問をしたいとき
質問をしたい際には「差し支えなければ」や「もしご迷惑でなければ」といったクッション言葉を使用します。
「そちらがよろしければ、何かを聞きたい」というニュアンスを含むため、相手の都合が良ければ回答をもらえ、回答したくなければ答えなくてもいい、という選択を相手に委ねられます。
依頼・招待などを断るとき
依頼や要望、招待などを断りたい際には「ご期待に添えず申し訳ありませんが」や「誠に申し訳ありませんが」などの言葉を添えましょう。
そもそも断りの言葉は言い出しにくいものですが、このクッション言葉を使用することで「断ること自体を申し訳なく思っている」ということをアピールできます。
「今後も相手との関係を良好に続けたい」「次回は参加したい」などのニュアンスを相手に伝えたい場合に有効です。
反論をしたいとき
反論をしたい際には「差し出がましいようですが」や「申し上げにくいのですが」といった言い方をします。
「非常に言い出しにくいのですが」というこちらの気持ちを前置きすることで、相手に「反論をしたいが、攻撃的な態度を取りたいわけではなく、ただ意見を聞いてほしい」という感情が伝えられるでしょう。
相手の気分を害さないよう気を配ることで、相手もこれから聞く反論や意見を、より受け入れやすくなります。
援助を申し出たいとき
援助を申し出たい際には「よろしければ」「差し支えなければ」「お力になれることがあれば」といった表現をします。
文章の前に「もしもよければ」という気持ちを表すことで、相手に押し付けすぎないニュアンスが伝わるでしょう。
また「援助が必要無い場合には、遠慮なく断ってもらっていい」という意味合いも含むため、相手の回答に自由度があります。相手にとってこちらの援助が迷惑にならないか、負担ではないか、控えめに提案を申し出るイメージで使用してみましょう。
【場面別】クッション言葉一覧
クッション言葉を覚えておくことで、特に目上の人に対してや、言い出しにくいことを伝える際に、相手に伝える印象を和らげることができるでしょう。しかしいつも同じ言い回しだと、単に事務的な対応をしているだけだと思われてしまうかもしれません。
そこで前述の場面別に、クッション言葉の一覧を紹介します。さまざまなバリエーションを覚えておくことで、コミュニケーションをより円滑にしましょう。
何かを依頼したいときのクッション言葉
何かを依頼する際、相手が忙しいかもしれないことを考慮して「ご多忙と存じますが」といった言葉から始めると、相手への気遣いがニュアンスで伝わります。気遣いを言葉にすることで、より丁寧なイメージを与えるのです。
急ぎでなければ、相手の手が空いていることを指す尊敬語の「お手すきの際に」を添えると、相手の事情をおもんばかっていることが伝わるでしょう。
また、メールなどで来訪の依頼をするときには「ご足労をおかけしますが」という表現を添えます。こうすることで「お忙しいとは思いますが、こちらにお越しいただきたいです」という長文を、スマートに伝えることができます。
【クッション言葉一覧】
- お忙しいところ恐縮ですが
- 御多忙と存じますが
- 大変恐れ入りますが
- もしも可能であれば
- もしそちらがご面倒でなければ
- お手すきの際に
- ご足労をおかけしますが
- お手数をおかけしますが
修正・改善をお願いしたいときのクッション言葉
修正ややり直し、改善などをお願いする際は、こちら側にも多少の非があるニュアンスを含むことで、一方的に意見する印象にならずに、相手に意図を伝えられます。
また、自分側の都合で日程を変更してもらうときには「こちらの都合により恐れ入りますが」などと始めることで、日程変更を申し出やすくなります。
【クッション言葉一覧】
- 私共の説明不足で恐縮なのですが
- 言葉足らずで申し訳ありませんが
- 説明が足りず恐縮ですが
- こちらの都合により恐れ入りますが
- お手数をおかけし大変恐縮ですが
質問をしたいときのクッション言葉
質問をする際に気を付けたいのは、できれば知りたい程度の内容なのか、どうしても回答が必要な内容なのかで使い分けが必要、ということです。
例えば「お尋ねしてもよろしいでしょうか」は、質問を切り出す際には使い勝手がいいですが「よろしいでしょうか」と伺っているため、断られる可能性があるのです。できれば知りたい内容の場合には、それでも問題はありません。しかし、必ず回答が必要な場合には「失礼ですが」「恐れ入りますが」などと切り出しましょう。
【クッション言葉一覧】
- 差し支えなければ
- もしご迷惑でなければ
- お尋ねしてよろしいでしょうか
- 立ち入ったことを伺いますが
- 失礼ですが
- 念のため伺いたいのですが
- 恐れ入りますが
- お忙しい中、申し訳ありませんが
依頼・招待などを断るときのクッション言葉
断りを入れる際に気を付けたいのが、相手に冷たいイメージを持たせないか、ということです。「申し上げにくいのですが」や「残念ながら」といった表現をすることで「こちらとしても断りたくはないのです」という気持ちが込められます。実際に対面で断るときにも、この言葉が文頭に来ることで、相手は後半の断りを予想することができます。
期待や目的にそぐわないことを表す「あいにく」は、「あいにく××曜日は公休日でございます」のように使用します。「せっかくのご提案ですが、都合が合いません」ということを丁寧に伝えることができます。日程の調整などで実現可能な場合は、「○日の〇曜日か、△日の△曜日はいかがでしょうか」などのように、続けて代替案を提示するとより親切でしょう。
【クッション言葉一覧】
- ご期待に添えず申し訳ありませんが
- 大変申し訳ありませんが
- 残念ながら
- あいにく
- 申し上げにくいのですが
- 心苦しいのですが
反論をしたいときのクッション言葉
反論をする際には、なるべくこちらが謙遜している、という印象を与えることが大事です。相手がこちらの意見を聞きやすいように「失礼を承知で申し上げますが」「出過ぎたことを申しますが」などと前置きしましょう。
特に電話口の場合など、少々長い文に感じて言いづらければ「僭越(せんえつ)ながら」と短く前置きするといいでしょう。「こちらがこれから意見します」ということが相手に伝わることで、相手も聞き入れる準備ができるでしょう。
【クッション言葉一覧】
- 差し出がましいようですが
- 大変申し上げにくいのですが
- 失礼を承知で申し上げますが
- 出過ぎたことを申しますが
- 僭越ながら
- お言葉を返すようで恐縮なのですが
援助を申し出たいときのクッション言葉
援助を申し出たい際は、「そちらがご迷惑でなければ」といった表現をすると、押し付けがましくならない印象を伝えられます。
「こちらとしては『必要であれば援助をするが、断られても大丈夫です』という思いで提案していることであり、断ることに後ろめたさは感じなくていいですよ」といった気持ちを含んだ、柔らかな言い回しにできます。
【クッション言葉一覧】
- もしよろしければ
- もしも差し支えなければ
- 私でお力になれることがあれば
- そちらがご迷惑でなければ
- もし私にできることがあれば
クッション言葉の会話例
クッション言葉を知っていても、使い方が間違っていれば、せっかくの思いやりが伝わりません。実際に使うときはどのような文脈になるのか、クッション言葉を使用した会話例を見ていきましょう。
上司や顧客に依頼をするときの例文
特に上司や顧客など、目上の人に依頼をする場合に便利なクッション言葉。以下のように会話やメールで用いるといいでしょう。
「お忙しいところ誠に申し訳ございませんが、〇〇の対応をお願いできますでしょうか。」
「ご面倒でなければ、お手すきの際に〇〇についてご教示いただけませんでしょうか。」
「お忙しいところ恐縮ですが、貴社に伺いご挨拶をさせていただければと存じます。
つきましては今月でご都合の良い日時をお聞かせ願えますでしょうか。」
修正や改善をお願いするときの例文
修正ややり直し、改善をお願いする場合には、クッション言葉でこちらの不備などに対するお詫びをしつつ、要望をしっかりと伝えましょう。
「こちらの確認不足で申し訳ありませんが、画像内に誤字がありましたので、明日〇時までに修正をお願いできますでしょうか。」
「細かいことを言ってしまい大変恐縮ですが、○○の部分がもう少し目立つようにデザインの変更をお願いできますでしょうか。」
「こちらの都合で恐れ入りますが、添付いただいたファイル形式だと開けないため、PDFにしたものをお送りいただけますでしょうか。」
相手に質問をしたいときの例文
質問をする際にも、クッション言葉でこちらの気遣いが伝わるようにしましょう。
「差し支えなければ、今回の選定結果に至った理由を伺うことはできますでしょうか。」
「恐れ入りますが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」
多忙な相手に質問をしたい場合には、相手の時間をもらうことに配慮した言い方がいいでしょう。
「御多忙のところ恐縮なのですが、先ほどお伝えいただいた件で質問があります。」
「お忙しいところ恐れ入ります。歓迎会の件で伺いたいのですが…。」
依頼・招待などを断るときの例文
依頼や要望を断る際には、断ること自体が心苦しいというニュアンスをクッション言葉で伝えます。
「ご期待に添えず恐れ入りますが、今期の契約は見送らせていただければと存じます。」
「あいにくですが、明日の11時は別件で会議が入っております。」
「心苦しいのですが、家庭の事情により飲み会への参加が難しい状況です。」
反論をしたいときの例文
反論をしたい場合には「あなたを批判したり責めたりするつもりはない」という気持ちをクッション言葉で伝えた上で、意見を述べましょう。
「申し上げにくいのですが、認識に齟齬(そご)があるようです。」
「大変失礼とは存じますが、提示いただいたスケジュールでの実現は難しいと感じます。」
援助を申し出たいときの例文
援助を申し出たい場合には、クッション言葉を用いて相手に選択を委ねる言い方にしましょう。
「私でお力になれることがあれば、いつでもご連絡ください。」
「もしも差し支えなければ、私から先方にお伝えしておきます。」
クッション言葉の利用時の注意点
クッション言葉には、使用することで会話がスムーズになる利点があることを説明してきました。
しかし多用しすぎると、「結局何が言いたいんだ?」となり、逆に意図が伝わらないケースもあります。特に対面や電話の際は、文字で再度の確認ができないため、クッション言葉を並べるうちに一番伝えたい本題がかすんでしまう、という可能性が高まります。
また前述のように、必ず答えが必要になる質問なのに「よろしければ」「もし可能でしたら」などの言葉を入れると、回答を断られる恐れがあります。その際は、「恐れ入りますが」や「恐縮ですが」などのクッション言葉を使用しましょう。
なお依頼や質問などをしたいときは、相手の手が空いていそう、余裕がありそうなタイミングにすることが望ましいでしょう。いくらクッション言葉を入れたとしても、明らかに忙しそうなときに、緊急の要件以外で話しかけるのは避けた方が無難です。
シーンごとに適したクッション言葉を活用しよう
ここまで見てきたように、クッション言葉とは、相手の状態や気持ちをおもんぱかるだけでなく、こちらの意見をより言いやすくする効果もあることがわかりました。クッション言葉を用いた表現をすることにより、その後の関係性がより円滑に、良好に続いていく一助となります。
プライベートでもこれらのクッション言葉を使うことで、提案や意見をしやすくなるかもしれません。
ただしクッション言葉を正しく使えていなかったり、多用しすぎたりすると、かえって話をややこしくしてしまうこともあります。使い方を覚えて、適切に活用しましょう。