スマートフォンの画面は硬いガラスで覆われていますが、最近はその画面を曲げることのできる「折りたたみスマホ」が出てきています。でもモトローラはもっとすごいスマートフォンの開発を進めています。それは画面が伸びたり縮んだりする「ローラブルスマホ」。いったいどんなスマートフォンなのか、2023年2月末にスペイン・バルセロナで開催されたMWC 2023の会場で実物を見てきました。

  • 画面が収縮する「ローラブルスマホ」を見てきた

モトローラが試作したローラブルスマートフォンは、普段は5インチ画面のちょっとコンパクトな大きさ。見た目は普通のスマートフォンと変わりません。本体の下部がカーブ形状になっており、画面もそこに同じ曲面でフィットして貼り付いているように見えます。なおこの写真は本体に専用のケースが取り付けられた状態です。

  • 5インチ画面のコンパクトなスマホだ

そして側面のボタンを押すと画面が上に伸びていき、6.5インチサイズになります。本体ではなく画面そのものが上にスライドする構造になっているのがちょっと面白いところ。

  • 普段は5インチの状態(左)。ボタンを押すと6.5インチに伸びる(右)

これはロールカーテンのように、画面を本体の下部側から裏側に巻きつけておき、ボタンを押すことで前後にスライドさせて画面の大きさが変わるようにしているのです。この構造から「ローラブル(巻き取り式)スマートフォン」という通称で呼ばれてていました。

  • 下部から見ると、画面が巻きついていることがわかる

5インチと6.5インチの差は結構大きく、比べてみると1.5倍くらい広がっているように感じます。詳細なスペックは公開されていませんが、5インチの時は画面縦横比は4:3、6.5インチの時は21:9くらいではないでしょうか。

  • 5インチと6.5インチの差は大きい

背面を見るとどのように画面が伸びるかがわかります。画面を収縮した5インチサイズで使っているときに背面を見ると、下部側には表側から巻き取られた画面が見えます。

  • 普段は背面にサブ画面があるように見える

ボタンを押すとこの背面の画面が下に押し出され、下部のカーブ部分を通過して前面に伸びていくわけです。

  • 画面が押されていき(左)、完全に前面に押し出される(右)

今回、この試作モデルはモトローラの担当者が操作を行うだけで、実際に触らせてもらうことはできませんでした。この伸びた画面部分を見るととても薄く、細心の注意をもって扱わないと破損してしまう恐れがあるからでしょう。なお画面の収縮の動きはモーターを使ってスムーズでした。

  • 6.5インチにしたときは本体上部から画面だけが出てくる

さてこのローラブルスマートフォンにはどんなメリットがあるのでしょうか? 最大の利点はやはり普段はポケットにすっぽり収まる小型サイズということ。最近のスマートフォンはもはや首から下げなくてはならないほど大きくなってしまいましたが、ローラブルスマートフォンなら小さいボディーながらもボタン一つで大画面スマートフォンに変身させられるのです。なお横向きで使っているとき、YouTubeの動画サイズに合わせて画面を自動収縮させることもできます。

  • 動画を見るときだけ21:9の大画面にする、といったことも可能

またメールやメッセージで文字入力するとき、5インチ画面ではソフトキーボードが現われ画面の半分以上の場所を覆ってしまいますが、自動的に縦に伸びて本文入力エリアを広く見せる、といった機能も搭載されています。小さいサイズで使いながら、時には自動で大きくなってくれるのです。

  • メールを打つときは自動的に縦に伸びる

ところで画面をよく見ると、フロントカメラが見えません。画面表示を邪魔するフロントカメラのパンチホールやノッチが無いのです。ではどうやってフロントカメラを使うのでしょうか? 構造としてはこうなっています。カメラを起動してフロントに切り替えると、画面が数ミリ下に動き、画面の裏側に隠れているフロントカメラが現われるのです。これで自撮りが出来るようになります。

  • メインカメラ画面(左)。フロントカメラにすると画面が下がってカメラが現れる(右)

スライドするディスプレイの下にフロントカメラを隠すというアイディアも面白いですね。この機能は通話の時にも使えるようになっており、電話の着信を受信すると、すぐさま画面がスライドしてフロントカメラが出てきます。

  • 裏返しで着信があると、巻き取られた画面に表示される。タッチ操作でこのまま受信もできる

  • 本体を手に取って表側に向けて着信を受ける

  • 続いて画面が下にスライドしてフロントカメラが出てくる

「画面を巻き取る」ハードウェアを実現するだけでもかなりの技術力が必要ですが、画面表示をアプリに応じてフィットさせるなどソフトウェアでも様々な工夫が見えるモトローラのローラブルスマートフォン。数年もすれば当たり前のように日本でも販売される日がくるかもしれませんね。

  • ぜひ製品化してほしいスマートフォンだ