ビジネスシーンで使用されることが多い「参ります」。目上の人に対して使うイメージの強い言葉ですが、詳しい意味や正しい使い方をご存じでしょうか。

本記事では「参ります」について、複数の意味ごとに使い方を解説。注意点や類語、英語表現もまとめました。

  • 参りますとは

    「参ります」の意味や使い方、「伺います」との違いなどを解説します

「参ります」の意味とは?

「参ります」の言葉を分解すると「参る」と「ます」の2つになります。

「参る」には神社や寺に参拝することなど複数の意味がありますが、よく使われるのは下記の3つです。

  • 「行く」「来る」の謙譲語
  • 補助動詞「~ていく」「~てくる」の謙譲表現
  • 降参する、困惑する

謙譲語とは、相手よりも自分を下げることで、相手に対して敬意を表す言葉です。また「ます」は丁寧語として、相手への敬意を表します。

1つ目の意味では、「私が御社まで参ります」のように使います。「私が御社まで行きます」と言うよりも、相手への敬意が伝わる表現です。

2つ目の意味では、「御社まで歩いてまいります」「今後、より一層精進してまいります」「電話を掛けてまいります」のように使います。

3つ目の意味では、「彼の押しの強さには参ります」のように使います。

「参ります」の使い方における注意点

「参ります」の使い方について、注意すべきポイントを見ていきましょう。

謙譲語のため、目上の人に話すときに、自分や身内側の行動に対して使う

「参ります」を「行く」「来る」の意味で使用する場合は、謙譲語となるため、自分や身内側の行動にのみ使います。

例えば「昼過ぎに(私が)御社へ参ります」や「昼過ぎに弊社の◯◯がそちらへ参ります」などです。自分の行動に対してだけではなく、社外の人に対して自分の会社の上司や同僚などの行動について言うとき、また他者に自分の家族の行動について言うときなど、身内側の人間の行動に対しても使用可能です。

相手が来ることを示すときは「いらっしゃる」などを用いる

自分や身内側ではなく、先方がこちらへ来る場合には「いらっしゃる」などを使用します。

前述したように「参る」は「行く」「来る」の謙譲語です。謙譲語は、行動する人物を下げることで相手を立てる特性があります。そのため、先方に対して「何時ごろに参りますか」と言ってしまうと、逆に相手を下げる表現になってしまい失礼です。

「参る」を「敬語」としてだけ捉えている場合に起こりやすい間違いのため、気をつけましょう。

相手が「行く」「来る」場合には、「いらっしゃる」「おいでになる」「お越しになる」などの尊敬語を用います。

補助動詞として使うときは「まいります」とひらがなにする

「参ります」は動詞の後ろに付けることで、謙譲の意味を含んだ補助動詞としても使用可能です。

例えば「考える」に付けて「考えてまいります」、「持つ」に付けて「持ってまいります」、「聞く」に付けて「聞いてまいります」のように、「参ります」を付けることで謙譲の意味を加えることができるのです。

補助動詞として使用する際には、漢字ではなく、ひらがなで表記するのが一般的です。

「参ります」の使い方と例文

  • 「参ります」の正しい使い方と例文

    「参ります」の正しい使い方や例文を見ていきましょう

ここからは「参ります」の意味ごとに例文を紹介します。使い方のイメージを捉えましょう。

相手の元に向かう場合(「行く」「来る」の謙譲語)

自分や身内側の人間が、先方の元へ出向く場合の例文を紹介します。

  • 承りました。それでは明日の14時に御社へ参ります
  • 担当の者がもうすぐそちらへ参ります
  • 上長の○○ももうすぐ参りますので、少々お待ちいただけますでしょうか

上記のように、社外の人に対して、自分の上司の行動を「参ります」と表現することは間違いではありません。自社内の上下関係は先方にとっては関係がないため、自分にとって身内側のことを先方へ話す場合は使用可能です。

あくまで、自分たち対先方という位置関係で伝えることが重要です。もちろん、自分対上司の会話の場合は、上司の行動に「参ります」を使うと失礼になってしまいます。

補助動詞「~ていく」「~てくる」の謙譲表現の場合

「参ります」を、補助動詞として使用する場合の例文を紹介します。

  • 集合場所へは歩いてまいります
  • 懇親会用に飲み物を買ってまいります
  • プロジェクターを持ってまいりますので、少々お待ちください
  • 新しいプロジェクトについて準備を進めてまいります
  • 以後このようなことがないよう、気をつけてまいります
  • 今後このようなことが起こらぬよう、注意を徹底してまいります
  • さらなる拡大に向けて、店舗開発に取り組んでまいります

「降参する、困惑する」の意味で使用する場合

「降参する、困惑する」の意味で「参ります」を使用する場合についても、例文を見ていきましょう。

  • 〇〇さんの見識の広さには参りました
  • この冬の寒さには本当に参ります

1つ目の例文のように、相手にかなわないことを認め屈服した際も「参ります」を使用できます。将棋などの対局で、負けを認める際に「参りました」と宣言するシーンを思い浮かべると、イメージしやすいのではないでしょうか。

また、2つ目の例文では「降参」の意味合いよりも、冬の寒さに「困ってしまう、心身が弱る」といった意味合いの方が強いでしょう。

「参ります」と「伺います」の違い

  • 「参ります」と「伺います」の違い

    「参ります」と「伺います」の違いは何なのでしょう?

「参ります」と似た意味を持つ言葉に「伺います」があります。

どちらも「行く」「来る」の謙譲語ですが、敬意の対象が「聞き手」なのか、それとも「行動・話題の対象」なのかが大きな相違点です。

・参ります:聞き手への敬意を表す

・伺います:行動・話題の対象への敬意を表す

例えば、目上の人・Aさんと話す際に、Aさんの元へ行くことを表したい場合は、「参ります」でも「伺います」でもどちらでも大丈夫です。

  • ○:明日、Aさんの会社まで参ります(聞き手であるAさんへの敬意なのでOK)
  • ○:明日、Aさんの会社まで伺います(行動・話題の対象であるAさんへの敬意なのでOK)

自分の行き先に聞き手がいる際は、どちらを使用してもいいのです。

しかし、目上の人・Aさんと話す際に、自分の身内である弟の元へ行くことを表したい場合は、「参ります」は使用できますが、「伺います」は使用できません。

  • ○:明日、弟の会社まで参ります(聞き手であるAさんへの敬意なのでOK)
  • ×:明日、弟の会社まで伺います(行動・話題の対象である弟へ敬意が向いているためNG)

敬意を払う相手が誰なのかを思い浮かべて、「参ります」と「伺います」を使い分けましょう。

【「伺います」についてより詳しくはこちら】
「伺います」の敬語としての正しい使い方は? 意味や類語も確認

「参ります」の類語・言い換え表現

ここからは「参ります」の類語について解説します。

参上します、参上いたします

「参上(さんじょう)」とは、目上の人間や敬意を払うべき人間の元へ行くことをへりくだって言う言葉です。

「明日の14時に、御社に参上いたします」などのように使います。このように「いつ、どこへ」を付け加えることで、伝わりやすい文章になるでしょう。

ギブアップします、弱ります

「降参する、困惑する」の意味の類語としては、「ギブアップ」や「弱る」が挙げられるでしょう。

「ギブアップ」はあきらめてやめることを意味する言葉です。「力尽きたので、もうギブアップします」などの形で使います。

「弱る」は気力・体力が衰えることや、勢いがなくなることの他に、困るという意味があります。「寒がりなもので、この冬の寒さには本当に弱ります」などの形で使用します。

「参ります」の英語表現

  • 「参ります」の英語表現

    「参ります」は英語ではどう表現できるのでしょうか?

「参ります」を、英語ではどのように表現するのかを解説します。

「行く」「来る」という意味の「参ります」は、「go」「come」などで表現することができます。

  • I'll go there.(そちらに参ります)
  • I'm coming.(すぐ参ります)

また、「あなたのそばにいる」を意味する「be with you」に、「すぐに」や未来を指す助動詞「will」をつけて表すこともできます。

  • I will be with you right away.(ただいま参ります)

「参ります」の意味や、敬語としての正しい使い方を理解しよう

「参ります」が持つ、さまざまな意味や正しい使い方などを解説しました。

敬語は、相手を立てたつもりでも、間違えると失礼に当たってしまうことがあります。「参ります」の意味をしっかりと理解し、適切な形で活用しましょう。