■勝野美江さんプロフィール

徳島県副知事
徳島県藍住町(あいずみちょう)出身。1991年に農水省に入省し、和食室長などを歴任。2016年からは内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局にて参事官(2019年から企画・推進統括官)を務めた。2021年11月より現職。

■池本博則プロフィール

株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長
2003年に株式会社マイナビへ入社し、国内外大手企業の採用活動の支援を担当。2017年8月、農業情報総合サイト『マイナビ農業』を立ち上げ、農業分野に参入した。農業、地域の活性化を実現するため、土いじりから講演活動まで日本全国を奔走中!

県外に、県内に。あまたある魅力を届ける

池本:世界的に注目を集めている2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)ですが、開催までいよいよ800日を切りました。改めて、徳島県における万博の取り組みと、開催に当たっての狙いについて教えてください。

勝野さん:万博でのアプローチは大きく三つあります。まずは、関西広域連合のメンバーとして出展する「関西パビリオン」。建物内に約130平米の「徳島パビリオン」を設け、観光などへの入り口として徳島の魅力を発信していこうと考えています。現在の計画としては、VR映像を用いたコーナーで阿波踊りなどのお祭りや、かずら橋、山犬嶽(だけ)などの観光名所を体験してもらいたいと思っています。

関西パビリオンの外観イメージ(出典:関西広域連合)

2つ目がメタバースの「とくしまバーチャルパビリオン」、アバターで阿波踊りを踊るなどの体験ができるもので、昨年も、本場阿波踊りとアニメのコラボイベントを開催して多くの方々が参加くださいました。
3つ目が、県全域をパビリオンに見立てた「徳島まるごとパビリオン」。“県民が参画し、県民が創る万博”をコンセプトに、人や物などさまざまな資源や自然、歴史、文化、生産物、工芸品、お料理、お祭りなどの魅力を体験していただく構想です。例えば、県内で取り組まれているスマート農林水産業や、徳島大学発ベンチャーが手掛ける昆虫食、植物工場で藍栽培など、農林水産業の最先端を体験いただくイベントなどもできればと考えています。

こうした中で、万博と県内巡りを絡めた修学旅行の誘致にも力を入れています。特に県西部では傾斜地農耕をしている世界農業遺産に登録されたエリアに多くの修学旅行生が訪れており、ファームステイなどが特に都会の子供たちにウケています。地域に継承された伝統を守る生産者やモノづくりマイスター、伝統工芸の方々。こうした方々に着目して、実際に会いに行って話を聞けるツアーを組むなど、誘致の方法を模索しているところです。

自分たちの地域に誇りを持つきっかけに

池本:2年後に迫る万博を起点に、徳島にたくさんある魅力を県外へ広く伝える。それだけでなく、県内の皆さんでもう一度、地域の資源や魅力を見直して、どういう形で県外の方々との接点を作るか、という議論もなされているのですね。

勝野さん:その通りです。私自身、数十年ぶりに徳島に住んでみて改めて、地域に住む人の素晴らしさ、食材のおいしさ、素晴らしい自然などの魅力に気付きました。当たり前過ぎてその価値に気付いていない県民の方々は少なくないですが、これは本当にもったいないことです。徳島にはI、Uターンで多くの人が根付いています。素晴らしい価値があるからこそ、多くの人々を引き寄せていると思うんです。現に、外から来た方には徳島のいいことを褒めていただく場面も多いですが、それでも県民の方々は「いやいや、何もない」と謙遜気味。地域の魅力を県内に住む方々にも再認識していただくことが、新しい人を迎え入れるに当たってより重要になってくるでしょう。万博が契機となり、多くの県民の方々に自分たちの住んでいる地域に誇りを持ってもらえるとうれしいですね。

池本:今回の万博への取り組みは、県外の方のみならず、県内に住む人々の意識も変えるという狙いもあるのですね。
勝野さん:まさに、それが一番の狙いです。特に、子供たちから自分の住む地域の自慢の声が出てくるようになるとうれしいですね。

池本:地域を活性化していく手段として、万博を契機に取り組みを進める自治体は多いと思いますが、徳島県では県民の方々も加わりながら、内側から地域活性化を図っていくイメージですね。地域活性の本質はまさに、こうした地域のコミュニティをより良くしていくことにあると思っています。そうした意味でも、県内の方々が意識改革していける取り組みが何よりも大事だということを、今回お話を聞いて再認識しました。

勝野さん:そうなんです。県民自身に「この地域が好きで何とかしたい」という思いがなければ、いくら県外へ向けて魅力を発信したところで何も変わりません。万博をいいきっかけにしながら、今後さまざまな仕掛けが出来るといいなとワクワクしています。

池本:今後の取り組みにも注視しております。今回は貴重なお話をありがとうございました。