アルマ望遠鏡は3月16日、米国国立電波天文台(NRAO)による同望遠鏡を用いた観測により、地球からおよそ1305光年にある原始星「オリオン座V883星」の原始惑星系円盤において水(水蒸気)から放射される電波を検出し、円盤に取り込まれた水の同位体比組成に関して、星間雲時代のものと比べてもそれほど変化していないことを確認。太陽系を構成する水についても、太陽誕生よりも数十億年も前に形成されていたことが示唆されたと発表した。
同成果は、NRAOのジョン・トービン氏、米・ミシガン大学のメレル・ヴァンティーホフ氏、オランダ・ライデン大学のマーゴット・レームカー氏らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
水は、少なくとも地球型生命の誕生や生存には必須であり、灼熱地獄でカラカラに乾いていたはずの誕生当初の地球に、いつ・どこから・どのようにもたらされたのかなどが、重要な研究対象となっている。これまでの研究から、地球の水と彗星の水の関係性、原始星の水と星間物質に含まれる水の関係性などは解明されたが、原始星と彗星の関連性を明らかにすることはできていなかったという。
ほとんどの原始星系では、中心星からのエネルギーが弱まるスノーラインの外側の寒冷な領域において、水は氷として存在している。そのため、原始星の円盤に含まれる水を電波で観測することは困難だ。ただし、スノーラインの内側は水が気体の水蒸気として存在するため、条件次第では水蒸気から放出される電波を用いた詳細な観測も可能となる。
その条件とは、スノーラインと中心星の距離と、星周円盤に含まれるダストの量だ。スノーラインの位置が中心の原始星に近すぎると、十分な水蒸気が無いため、電波を検出することは困難となる。また、星周円盤にダストが多く含まれている場合は、水蒸気から電波が放出されていたとしてもダストが遮ってしまうため、やはり電波を検出するのが困難だ。よって、スノーラインが中心星から遠い場所に存在すれば、十分な水蒸気が星周円盤内に存在することになり、また星周円盤内のダストが多すぎなければ、水蒸気から放出される電波を比較的検出しやすいということになる。そして、そのような状況が実現されている原始星の1つが、オリオン座V883星だ。