こくみん共済 coop(全労済)は3月15日、2023年4月からヘルメット着用ルールが変更されることに合わせ、「正しく安全に自転車に乗るために知っておきたいポイント」を公開した。

交通事故のうち46%に自転車が関与

  • 新車平均販売台数の推移

自転車産業振興協会「自転車国内販売動向調査」によると、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年、初の緊急事態宣言が解除された5月以降には、自転車の販売台数が前年を超えた。同時に自転車事故も増加し、警視庁「交通事故全体に占める自転車関与事故の推移」によると、都内の交通事故全体に占める自転車関与事故の割合を示す「自転車関与率」は、2022年に46.0%となっている。

  • 交通事故全体に占める自転車関与事故の推移

死亡事故では68%が頭部に致命傷

都内の自転車の事故傾向を詳しく見ると、自転車乗用中の交通事故で亡くなった人は、68.3%が頭部に致命傷を負っていることがわかった。自転車乗用中の交通事故において、ヘルメットを着用していなかった人の致死率は、着用していた人に比べて、約2.3倍も高くなっている(平成29年から令和3年までの5年間の合計)。

  • 図1 自転車乗用中死者の損傷主部位比較

2023年4月1日から、自転車を運転する人は、自転車用ヘルメットの着用が努力義務となった。同時に、同乗者にもヘルメットをかぶらせるように努めること、保護者などは、児童や幼児が自転車を運転する際は、ヘルメットをかぶらせるよう努めることが求められる。「多くの人々の生活に欠かせないアイテムである自転車を安全に乗るためには、ルールをしっかり理解し守ることが大切です。2023年4月1日から改定されるルールは、自分だけでなく、すべての人を守るために確認しましょう」と同調査。

自転車事故が増加する中、ヘルメット着用の努力義務のほか、さまざまな対策の強化が進められている。特に重大な事故につながりかねない信号無視や一時不停止などの悪質な違反については、罰則を伴わない「警告」にとどめていたケースでも刑事罰の対象となる交通切符、いわゆる「赤切符」を交付して検挙することもあるとのこと。

加害者になった場合の損害賠償責任は?

また、自転車を運転中、自身がケガを負うだけでなく、歩行者や車などにぶつかるなど加害者になる可能性もある。万一加害者になった場合には、損害賠償責任を負うリスクもあり、運転者が子どもの場合には、保護者がその責任を負うことになる。

2013年の小学5年の男児が散歩中の女性と衝突し、障がいが残るケガを負わせた事故では、賠償額は約9,500万円だった。男子高校生が歩道から車道を斜めに横断し、男性と衝突して障害を負わせた事故では、賠償額は約9,300万円(2008年)。いずれも1億円に近い賠償額が請求されている。

  • 実際の事故と高額賠償例

高額な損害賠償責任を負う事故が発生している現在、自転車事故における被害者救済の観点から、条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化する動きが広がっている。

自転車損害賠償責任保険などへの加入義務化の条例改正は平成27年10月に初めて兵庫県で導入され、その後も多くの地方自治体で義務化や努力義務とする条例が制定されている。

  • 地方公共団体の条例の制定状況(令和4年4月1日現在)