このような大型アンテナを、折り紙のように折り畳める平面形状で構成するため、リフレクトアレーアンテナ方式が採用される。同アンテナの構造には次のような独自性があるという。
- 高い平面度を要求しない展開膜を用いて、アンテナ構造を軽量化する
- 膜材として平織布の伸縮性を活用し、低容量収納を実現する
- 折り線をまたがない反射素子構造を採用する
- 「飛び出す絵本」のように展開後に5mm間隔で離れる2層構造にすることで、誘電体層の厚さを確保する
研究チームは、これら独自の設計アプローチにより収納面積から25倍規模に拡大する衛星搭載アンテナ技術を、世界に先駆けて軌道上で実証するとした。
なお、今回の折り紙構造による展開リフレクトアレーアンテナ技術については、これまでの東工大で培われた技術が活かされているという。その1つは、革新的衛星技術実証1号機の実証テーマの1つとして選定され、2019年1月に打ち上げに成功した3Uキューブサット「OrigamiSat-1」に搭載された膜展開技術だ。
2つ目が、もともとは革新的衛星技術実証3号機で採択され、同4号機にて再チャレンジが実施される実証テーマ「Society5.0に向けた発電・アンテナ機能を有する軽量膜展開構造物の実証」(提案代表者:サカセ・アドテック)のミッションの1つである、「第5世代通信ミリ波アンテナ」ミッション機器だ(3号機の11テーマは、イプシロン6号機の軌道投入失敗により4号機と5号機で再チャレンジが実施される)。
研究チームは、東工大の機械系と電気電子系の技術を融合させたこれら2つの開発の経験を活かし、膜面展開式リフレクトアレーアンテナ新技術を搭載したOrigamiSat-2を開発するとしている。また今後、東工大とJAXAの間で打ち上げに必要な取り決めの締結、技術調整、各種試験、安全審査などを進め、2024年度の打ち上げに向けた衛星の開発を行うとのことだ。