酸化イリジウムガリウムのデバイス適用にあたっては、トレンチ構造への埋め込みを前提とするJBS構造への適用を目指し、酸化ガリウムn-層の一部にトレンチ構造を作製した後、新規P型半導体である酸化イリジウムガリウムを埋め込むことで結晶成長が行われた。
この時、結晶成長にはFLOSFIA独自のミストドライ法が用いられたが、溶液にイリジウム源として今回共同開発された新しいイリジウム系成膜材料が使用された。この新材料を用いることで、成長レートは従来比10倍以上であることが確認されたという。走査型電子顕微鏡を用いて、このトレンチ構造部分の断面観察を行ったところ、酸化イリジウムガリウムの膜厚分布が均一でカバレッジ良く成膜されたことが確認されたとする。
今回の研究成果を用いたJBS構造は、FLOSFIAのα-Ga2O3パワーデバイス「GaO」シリーズの第2世代ダイオードから適用される予定としている。100kHz以下の周波数領域で用いるインバーターそのほかの幅広い電力変換器のほか、MOSFETやIGBTなどのトランジスタにも新規P型半導体「酸化イリジウムガリウム」の適用を目指すとする。
電力変換器の例としては、ACアダプタなどの商用電源、ロボットの駆動回路、電気自動車、エアコンや冷蔵庫などの白物家電、太陽電池のパワーコンディショナなどが挙げられる。これらへのGaOパワーデバイスの採用により、「電力変換器全体の小型化や低コスト化の限界」に挑戦するとしている。また機器の種類にもよるが、たとえば電力変換器の小型化の程度は、FLOSFIAの試算によれば数十分の一に及ぶことがあり、コスト低減効果は電力変換器全体の50%に及ぶことが期待されるとした。