レクサス初となるBEV(バッテリーEV=電気自動車)専用車「RZ」の詳細が判明した。フル充電での航続距離や純粋なクルマの速さで比べるとライバル達に数値上はおよばないRZだが、レクサスは何で勝負するつもりなのか。RZに実際に乗り、開発陣に話を聞いてきた。
走りのコンセプトは「ザ・ナチュラル」
RZのデザインコンセプトは「シームレス イーモーション」(SEAMLESS E-MOTION)。イーモーションは「エモーション」との掛詞になっている。フロントはボンネットまで一体で紡錘のモチーフを表現した「スピンドルボディ」が印象的だ。
駆動用バッテリーの容量は71.4kWh。前に聞いた話だとフル充電での航続可能距離は450kmとのことだったが、今回のプロトタイプ試乗会では「500+km」という開発目標値が示された。モーターは2基でフロントが最高出力150kW、リアが同80kW。高トルク、高レスポンスのe-Axle(駆動ユニット)をいかしたAWD「DIRECT4」の走りは「チーター」から着想を得て開発したそうだ。
世界初! 不思議な形のハンドルが登場
新規の取り組みとしては「ステア・バイ・ワイヤ」(Steer by Wire)に注目したい。タイヤとステアリングを電気信号でつなぐ(メカニカルにはつながない)技術で、量産車への搭載は今回が世界初となる。
ステア・バイ・ワイヤを搭載するクルマでは、ステアリングの操作に対してタイヤがどのくらい切れるかを大幅にコントロールできる。具体的には、ゆっくり走っている時には少しの操作で大きく曲がるようにして、高速走行時には逆にするといった制御が可能だ。
RZプロトタイプの異形ステアリングはロックトゥロックで150度までしか切れない設定となっていた。どんなに切ってもハンドルが一回転しないので、大きく曲がる場合でも持ち替える必要がなく、腕が楽だった。操作に最初はとまどったが、ほんの数分でバックでの駐車をクリアできるくらいまで上達できたので、ほとんどの人はすぐに慣れるはずだ。
このハンドルのいいところは、水平の状態だとタイヤが必ずまっすぐ前を向くこと。駐車の際、右に左にぐるぐるとハンドルを回した結果、タイヤがどちらを向いているのかわからなくなるという現象は起こりえない。慣れれば便利さを実感できそうな発明だ。
スペック上はトップじゃないけど…
RZ開発陣の1人に商品概要をいろいろと説明してもらったのだが、面白かったのは同氏が「RZはスペックで見ると、悔しいけれどトップではない」と率直に認めたことだ。確かに、競合になりそうな輸入車ブランドのクルマに比べると、数値上はRZが負けている。RZより長く走れるBEVもあれば、速く走れるBEVもある。「ただ……」と同氏は続けた。
「お客様が本当に求めていることは何か、このクルマで何を提供したいのかを考えましたし、お客様のニーズにはなるべくお答えしたいと思っています。RZは毎日500kmを走る人のためのクルマではありませんが、日常的に、身近に使ってもらえるクルマとして真剣に開発しました。触感も音も、侃々諤々でやりました。実際に乗って感じていただきたいのは、気持ちがよくて安心できる走りです。毎日乗っても疲れませんし、酔いにくいですし、運転がうまくなったような感じがするクルマに仕上がっていると思います」