AIを用いた自動翻訳機や翻訳アプリを展開するポケトークは3月14日に発表会を開催し、「ポケトーク for BUSINESS」として、3つのビジネス向け新サービスを発表しました。
「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」は、2022年10月に発表され、提供開始が待たれていたもの。PC向けのソフトウェアで、Window版は3月14日から、Mac版も近日提供開始予定です。
オンライン会議や動画再生時に音声を認識して文字起こしし、それを翻訳して読み上げるというもので、その名の通りまるで同時通訳がされているかのような体験ができます。PCの内蔵マイクなどで音声が取り込めれば、対面の会議でも利用可能とのこと。
10月の発表から、音声認識のエンジンのひとつにOPEN AIの「Whisper」を採用するなどブラッシュアップされていて、翻訳精度やスピードも上がっているようです。月額2,200円のサブスクリプションサービスですが、毎月30分までであれば無料。4月16日まではお試し期間として、時間制限なく無料で利用できます。
「ポケトーク for BUSINESS カンファレンス」と「ポケトーク for BUSINESS ムービー翻訳」は、2023年の夏頃に提供開始予定のサービスです。
「ポケトーク for BUSINESS カンファレンス」はカンファレンスの主催者向けで、カンファレンスの参加者が自身のスマホを使ってQRコードから専用サイトにアクセスすると、自動同時通訳が聞けるというもの。
同時通訳者だけでなくレシーバーの準備も不用のため、コストが大幅に抑えられるといいます。利用料は未発表ですが、従来の同時通訳のコストと比較すると1/20以下になるとのことです。
「ポケトーク for BUSINESS ムービー翻訳」は、動画素材をアップロードすると、自動的に字幕と通訳音声が追加されるというサービス。企業が自社の製品やサービスをグローバル展開する際のプロモーションビデオや、外国人スタッフ向けの研修用ビデオなどでの利用を想定したサービスになっています。こちらも利用料は未発表ですが、動画に翻訳した字幕と音声をつける従来のコストと比較すると1/30以下になるとしています。
発表会の会場で、実際に手持ちのスマホでQRコードを読み込み、「ポケトーク for BUSINESS カンファレンス」を体験しました。専用のサイトにアクセスするだけなので準備が実にカンタンで、スマホにヘッドフォンをつなぐだけで利用できます。
音声を聞くだけのレシーバーと違って、スマホでは認識されたテキストも見ることができ、原文と翻訳された日本語を並べて表示することも可能。文字の大きさを変えたり、テキストをCSVファイルに書き出すこともできるようになっていました。
無線を使うレシーバーではノイズが入ることも多いですが、カンファレンスの登壇者のマイクからの音声をクラウドに送り、スマホでアクセスして聞くしくみなので、音声がクリアです。聞き逃した内容をあとから確認できたり、テキスト出力できる点も魅力だと感じました。一方で通信が混み合ったときにどうなるのかは気になるところですが、これは夏のリリースを待ちたいと思います。
発表会に登壇したポケトーク代表取締役社長兼CEOの松田憲幸氏は、企業の経営層へ実施したアンケートを取り上げ、「60%の人が、言葉の壁がビジネス機会の損失になっていると回答している」と紹介。通訳・翻訳にかかるコストと工数が、大きな足かせになっていると話しました。
「日本がグローバルなプレゼンスを高めていくためには、企業の競争力、都市の競争力を上げていかなければならない。日本の国際的な競争力の向上に貢献していきたい」と松田氏。「通訳・翻訳にかかるコストが劇的に下がれば、あらゆる産業においてグローバル化が加速していくと思っている」と話し、「ビジネス市場を拡大して、2027年までに200億円規模を目指す」という目標を語りました。
またあわせて、経済産業省が展開する、スタートアップ支援プロジェクト「Jスタートアップ」と提携し、サポートしていくことも発表されました。
これを受けて、経済産業省から経済産業政策局 新規事業創造推進室長の石井芳明氏がゲストとして登壇。石井氏は、スタートアップ企業の海外進出やイベント等への出展、海外からの資金調達の機会、海外からのゲストの招いてのカンファレンスなど、「日本企業の経済活動において言葉の壁を破ることは非常に重要なこと」と話し、ポケトークのサポートに期待を寄せました。
発表会ではこのほか、ChatGPTで知られるOpenAIの日本市場担当であるシェイン・グウ氏からのビデオメッセージも紹介されました。なお「Whisper」は、松田氏が会長兼CEOを務めるソースネクストが販売する、文字起こし機能付きAIボイスレコーダー「AutoMemo(オートメモ)」にも採用されたことが、同日発表されています。
質疑応答でポケトークCTOの川竹一氏は、「Whisper」採用の理由について、距離が離れていても声がしっかり認識できる点や、音声認識の精度の高さをあげ、「製品を作る上で重要なパートになっている」と説明していました。