米労働省が2023年3月10日に発表した2月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数31.1万人増、【2】失業率3.6%、【3】平均時給33.09ドル(前月比+0.2%、前年比+4.6%)という内容であった。
(1)2月の非農業部門雇用者数は前月比31.1万人増と市場予想の22.5万人増を上回った。前月分は51.7万人増から50.4万人増へと下方修正された。基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は35.1万人となり、2022年9月以来の水準に上昇した。米国の雇用市場の底堅さがあらためて確認された。
(2)2月の失業率は54年ぶりの低水準を記録した前月から0.2ポイント上昇して3.6%となった。市場は前月から横ばいの3.4%を予想していた。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も、前月の6.6%から6.8%へと上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が62.5%に上昇(予想および前月=62.4%)したことが失業率を押し上げたと見られる。
(3)2月の平均時給は33.09ドルと前月の修正値33.01ドルから0.08ドル増加した。伸び率は前月比+0.2%、前年比+4.6%であった。前年比の伸び率は3カ月ぶりに前月を上回ったが、市場予想(+4.6%)には届かなかった。インフレの先行指標とされる賃金の伸び率が予想を下回ったことで、過度なインフレ懸念はいくぶん和らいだ。
米2月雇用統計は、【1】非農業部門雇用者数が予想を上回るなど、全体的に良好な結果であったが、平均時給が予想を下回る伸びにとどまったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月21-22日の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ幅を再び拡大させずに済むとの観測が広がった。シリコンバレー銀行(SVB)の破綻による米金融システムを巡る不透明感も重なり、市場では50bp(0.50%ポイント)利上げの織り込みが急低下。ドル/円相場は、米長期金利の低下を受けて2週間ぶりに一時134円台へと下落した。なお、全米16位の資産規模を持つSVBの破綻を受けて米当局は、SVB顧客の預金全額保護や金融機関に対する1年物の資金供給制度の導入などを決めた。こうした迅速な対応で金融システム不安を抑え込めるかどうかが、FRBが利上げを続けるか否かを判断する上でも焦点となりそうだ。