ビジネスシーンでよく使われる「ご期待に添えず」という言葉について、意味や正しい使い方を解説します。

シーンごとの例文や、「ご期待に添えず」と「ご期待に沿えず」の違い、類義語や英語表現もまとめました。

  • ご期待に添えずとは

    「ご期待に添えず」の意味や正しい使い方、類語などを解説します

「ご期待に添えず」という言葉の意味とは?

「期待」はご存じのように、物事が実現すると望みをかけて、心待ちにすることです。

尊敬を表す接頭語「ご」を「期待」につけて「ご期待」とすることで、相手に敬意を示す言い回しとなります。

「添う」は、そばを離れずにいる、親しく交際するなどの他、目的や要望がかなうようにするという意味があり、「添えず」の「ず」は否定を表す助動詞です。

つまり「ご期待に添えず」とは、「期待されていたことをかなえられなくて」という意味の敬語です。

「ご期待に添えず」? 「ご期待に沿えず」?

「添う」と「沿う」の意味合いは近く、「ご期待に添えず」も「ご期待に沿えず」も、どちらも正しいと言えるでしょう。

ただし厳密に言うと、漢字によって少しニュアンスが異なります。「添う」は前項で述べた通り「目的や要望がかなうようにする」などの意味を持ちます。

「沿う」は「長く続くものから離れないように付き従う」などの他、「方針や基準に従うようにする」という意味を持ちます。

よって、「ご期待に沿えず」と書くと「あなたの方針から遠ざけてしまって」というニュアンスが含まれるでしょう。

「ご期待に添えず」の正しい使い方

  • 「ご期待に添えず」の正しい使い方

    「ご期待に添えず」の正しい使い方を見てみましょう

「ご期待に添えず」は、相手へ断りを入れる際に使用する丁寧な表現です。かしこまった言い方なので、日常会話よりもビジネスシーンで使われることが多いです。

「お断りします」ではきつい印象を与えてしまいますが、「ご期待に添えず」を用いれば、非はこちらにあると謝罪しながら相手を立てた上で断れます。

顧客からクレームや要望を受けた際も、相手に不快感を極力与えずに対応ができる、クッション言葉の一つです。

基本的には「ご期待に添えず、申し訳ございません」というように、謝罪する意味の言葉とセットで使います。

「ご期待に添えず」の例文

「ご期待に添えず」の例文を参考に、使い方のイメージを捉えましょう。ここからはシーンごとに、具体的なフレーズを紹介します。

交渉事で相手に断りを入れる場合

交渉の場面では、断り方次第で今後の関係性や信頼度などに影響が出る可能性があります。「お断りします」と直接的な言い方をするのではなく、「ご期待に添えず」を用いることで、断ることが心苦しいという気持ちを含ませ、相手へ敬意を表した断り方ができます。

  • ご期待に添えず申し訳ございませんが、今期の契約は見送らせていただければと存じます。

今後も関係性を築きたいという意思を表す、「また機会がございましたらよろしくお願いいたします」「またの機会を楽しみにしております」などの一文を付け加えることもおすすめです。

また、理不尽な交渉をされた際にも、相手の怒りや不快感を抑えながら断りを入れられます。

  • ご期待に添えず恐縮ではございますが、金額面に関するご要望にはお応えいたしかねます。

この場合は「ご容赦のほどお願いいたします」「ご了承いただけますと幸いです」など、許しを願う一文が続くとさらに丁寧な印象を与えられます。

ビジネスシーンにおいて相手に謝罪する場合

相手にとって残念な結果になってしまったことを謝罪したいときにも「ご期待に添えず」を用いることができます。

  • ご期待に添えずこのような結果になってしまい、大変申し訳なく思っております
  • この度はご期待に添えず申し訳ございません。頂いたご意見を基に、改善案を思案いたします。

相手からの要望(商品の予約など)を実現できない場合

相手の要望に応えられない場合にも「ご期待に添えず」は有効的です。この一フレーズを入れるだけで丁重さが増し、相手の不満や不快感を和らげる効果が期待できます。

  • ご希望の商品の入荷にはまだ時間がかかる模様です。ご期待に添えず申し訳ございません。
  • ご期待に添えず申し訳ございません。こちらの部屋は一カ月ほど予約で埋まっております。

例文のように「現状」と「お詫びの気持ち」を伝えた後、代替案を出せればより配慮ある対応となるでしょう。

クレーム対応や、面接の選考にて断りを入れる場合

クレームを受けた際、対応できない要望に対してははっきり断ることが重要です。その上で、相手の怒りや不満をむやみに増長させないよう、クッション言葉をうまく活用することも必要となります。

  • 不良品以外の返品は対応しかねます。ご期待に添えず大変申し訳ありません。

また書類選考や面接などに落ちたという結果や、不採用の通知をする際には、「受かりたいという願いをかなえられない」ことと「入社や入学などを断る」という意味を伝えるために「ご期待に添えず」を使います。

  • ご期待に添えず恐縮ではございますが、書類審査の結果、採用を見送らせていただくことになりました。
  • 残念ではございますが、今回はご期待に添えない結果となりました。誠に申し訳ございません。

不採用になった人はこの先、自社のサービスの利用者になったり、取引先企業に就職したりする可能性があります。相手に不満や不服などネガティブな感情を極力抱かせないよう、心掛けることも重要です。

メールでお客さまに断りの連絡をする場合

メールの場合でも、これまでお伝えしてきた使い方と同じです。しかし、電話や直接会って伝えるよりも誤解されやすい懸念があるため、このメールは断りの連絡であると明確に伝わる言葉を使う必要があります。

しかし断定的な言い方は活字になるとより冷たい印象になるため、クッション言葉を上手に使うことで冷たさが和らぎます。

  • せっかくご要望を頂いたにも関わらず、この度はご期待に添えず、誠に申し訳ございません。
  • ご希望のお日にちはあいにく満席となっており、予約ができかねます。ご期待に添えず申し訳ございません。

クッション言葉は「ご期待に添えず」の他にも「あいにく」「残念ではありますが」「せっかくですが」「心苦しいのですが」などがあります。文面に合わせて使い分けるようにしましょう。

「ご期待に添えず」の類義語・言い換え表現

  • 「ご期待に添えず」の類語

    「ご期待に添えず」の類義語も併せて覚えておきましょう

ここからは「ご期待に添えず」の類義語をご紹介します。適宜言い換えて活用しましょう。

お力になれず

「お力になれず」はこちらの無力さを詫びる際に使います。あなたの要望に応えられるほどの能力や経済的余裕などが自分には無いため断る、という表現です。

「お力になれず申し訳ございません」「お力になれず残念です」といった形で使用します。さらにやんわり断りたい場合は「お力になれず、心苦しい限りです」「不本意ながら、お力になれそうにありません」などと表現します。

お役に立てず

「お役に立てず」は、「お力になれず」と同じくこちらの無力さを詫びながら断る言い回しです。

「お役に立てず申し訳ございません」「お役に立てず恐縮です」などと使用します。

申し訳ございませんが

「申し訳ございませんが」は、言いにくいことを伝える際の冒頭に、クッション言葉として入れられる言葉です。

「申し訳ございませんが、ご要望にはお応えできません」「申し訳ございませんが、あいにくその日は満席でございます」といった形で用います。

幅広いシチュエーションで使える便利な言葉ですが、乱用すると重みが無くなってしまう可能性もあります。本当に必要な際にのみ使うよう心掛けましょう。

不本意ではございますが

「不本意ではございますが」も、申し出や誘いを断る際によく使われるクッション言葉です。「不本意」は自分の望みとは異なることを意味する言葉なので、「不本意ではございますが」には、断らざるを得なく残念に思っている、というニュアンスが含まれます。

「不本意ではございますが、今回は見送らせていただきます」「審議の結果、不本意ではございますが他社へ依頼することとなりました」など、相手が悪いわけではないと気遣いながら断れる表現です。

「また機会がございましたらよろしくお願いいたします」など、今後につながる言葉を付け加えるとより丁寧です。

ご要望にお応えできず

「ご要望にお応えできず」は、「ご期待に添えず」と同じ意味合いで、相手から期待されていた物事が実現できなかった際に使います。

「できません」「無理です」など直接的な言い方では相手を不快にさせてしまうでしょう。「ご要望にお応えできず、申し訳ございません」といった形で謝罪すると、やんわりと断りを入れられます。

「ご期待に添えず」の英語表現

  • 「ご期待に添えず」の英語表現

    「ご期待に添えず」の英語での言い方をご紹介します

ここからは「ご期待に添えず」の英語表現をご紹介します。

「expectation」は期待や予想という意味の言葉です。「meet one's expectations」で、期待に添うという意味になります。要望や依頼という意味の「request」を用いてもいいでしょう。

  • We are sorry we couldn't meet your expectations.
    (あなたのご期待に添えず、私共は申し訳なく思っています)
  • We are sorry for not being able to meet your expectations.
    (あなたのご期待に添えず、私共は申し訳なく思っています)
  • We are afraid we can't meet your request.
    (残念ですが、あなたのご期待に添うことができません)

良好な関係性を保てるよう、お詫びや残念な気持ちが伝わるような言い回しとともに用いましょう。

「ご期待に添えず」を適切に活用しよう

断らざるを得ないシビアな状況において「ご期待に添えず」というフレーズがいかに活用できるかをお伝えしました。

状況に合わせ適切にクッション言葉を用いることで、相手との関係性を良好に保てます。「ご期待に添えず」の正しい意味や使い方をマスターして、ぜひ利用してみてください。