東武鉄道は、東武アーバンパークライン(野田線)に2024年度導入予定の新型車両において、消費電力量を低減する車両推進システム「SynTRACS」を導入するなど、鉄道における電力使用量の計画的な削減を図り、2030年度のCO2排出量を約50%削減(2013年度比)する見込みと発表した。
同社の電力使用量削減に向けた取組みとして、列車の回生エネルギーを駅の照明等の電力に変換する電力回生インバータ装置を導入。いままで消費できなかった回生エネルギーを有効活用することで、使用電力量の削減を図るという。運転履歴ビッグデータの解析によって抽出された、定時性と省エネ性を両立した目標走行パターンに沿った省エネ運転も試行する。
東武アーバンパークライン(野田線)に2024年度導入予定の新型車両に関して、同期リラクタンスモータを採用した車両推進システム「SynTRACS」の本格搭載は民鉄初とのこと。リチウムイオン二次電池SCiBとSIV装置を組合わせた車上バッテリシステムも搭載するなど、さまざまな取組みを進め、政府目標の達成とさらなる削減を進めるとしている。
車両推進システム「SynTRACS」は、同期リラクタンスモータ(SynRM)とフルSiC素子を採用する駆動用インバータで構成される。同期リラクタンスモータは、従来車両で用いる誘導モータと比較して発熱損失が少なく高効率であり、電動機出力を増やして回生ブレーキ領域を拡大することで消費電力量を低減。駆動用インバータはフルSiC素子を採用することで、電流容量の増加による同期リラクタンスモータの高出力化と電力損失の大幅な低減を実現する。
リチウムイオン二次電池SCiBは、一般的な同型電池と比べて異常発熱や発火を起こしにくいという高い安全性、2万回以上の充放電が可能な長寿命、急速充電性能、低温性能といった特徴を持ち、列車の回生ブレーキによって発生する短時間の大電力を効率よく充電する。これに二次電池とSIV装置(補助電源装置)を組み合わせることにより、列車の回生ブレーキで得られる電力を架線に戻すことなく、自車のSIV装置を介して少ない損失で二次電池に充電。蓄えた電力は列車の制御や空調などに使用する電力の一部として再生し供給することで、省エネに貢献する。