ショッキングな強盗事件が続いたこともあってか、防犯ライトや防犯カメラ、録画機能搭載インターフォンが売れています。春は就職・入学・転勤などで引っ越す人が増えますが、カメラ付きインターフォンやオートロックなどセキュリティが優れた賃貸住宅に誰もが住めるわけではありません。各戸の玄関先まで誰でも行けてしまう賃貸住宅を選ぶ(選ばざるをえない)人もいるでしょう。

最近では個人で後付けできる防犯設備が増えてきました。そこで、録画機能付きドアカメラを1機種と、ドアフォンを2機種、実際に自宅で使ってみました。賃貸住宅に後付けで設置するために、どんな製品がよいのか検証していきます。

  • 左からパナソニックの「VS-HC400K-W」、Googleの「Google Nest Doorbell (Battery Type)」、Amazonの「Amazon Ring Video Doorbell 4」

試した製品は、パナソニック製のモニター付きドアカメラキット「VS-HC400K-W」、Googleのドアフォン「Google Nest Doorbell(Battery Type)」(以下、Nest Doorbell)、Amazonのドアフォン「Amazon Ring Video Doorbell 4」(以下、Ring Video Doorbell 4)の3機種です。

ヨドバシ・ドット・コム価格は、VS-HC400K-Wが27,400円、Nest Doorbellが21,900円。Ring Video Doorbell 4のAmazon.co.jp価格は23,980円です。なお、筆者の自宅は一戸建てのため、賃貸住宅とは環境が異なる点があることをあらかじめお断りしておきます。

とにかく設置がラクなパナソニック製、動体センサーはなし

まずはパナソニックのVS-HC400K-Wから。VS-HC400K-Wのワイヤレスドアカメラは、ドアの上部に引っかけて付属の六角レンチで固定するため、設置に5分とかかりません。ただ、ドアが内開きだったり、上面にガードプレートのような突起があったりすると、取り付けられない場合があるので注意が必要です。IPX3相当の防雨構造となっています。

  • 左から、ホームユニット(後述)、モニター親機、ワイヤレスドアカメラ。ワイヤレスドアカメラは単三電池×4本で駆動し、パナソニック製のエネループ(充電池)ハイエンドモデルが推奨されています。電池寿命の目安は6カ月

  • カメラが外側に出るように、ドアの上部へ引っかけて固定します

モニター親機とドアカメラは出荷時にペアリングされており、特別な設定なしで電源を入れてすぐ使い始められます。玄関チャイムをモニター部に登録すると、来訪者が鳴らしたチャイムと連動してドアカメラがオンになり、モニター親機にリアルタイム映像が映し出され、録画がスタートします。

チャイムが鳴ったことで録画が始まるため、モニター親機は玄関チャイムが聞こえる範囲に設置します。モニター親機に保存できる録画時間は約10秒間。ドアカメラにはマイクとスピーカーが搭載されており、モニター親機を通じて来訪者と会話もできます。

  • ドアチャイムが鳴るとモニター親機で応答対応したり、モニター親機からの操作でカメラを通じてドア外を確認したりできます

VS-HC400K-Wは、玄関のドアや壁に穴を開けたり接着したりできない物件に適した設置方法です。ただ、ドア上部から見下ろすような撮影となるため、つば付きの帽子をかぶっている来訪者だと顔が映らない欠点も。来訪者に対応するとき、カメラを向いてもらうよう声をかける必要があります。

  • ドアの上から見下ろす角度で撮影するため、来訪者に上を向いてもらわないと顔が分かりません(スマホ画面)。なお、戸建てのドアはアパートのドアよりも40~50cmほど高いことが多く、アパートの場合はもう少し低い位置からの撮影になります

ドアカメラはライトや赤外線カメラは持たず、外側に明かりがない環境だと夜の映像は真っ暗になってしまいます。人感センサーなども搭載されていないため、不審者が外をうろうろしているだけの場合、自動録画は行われません。ただしモニター親機を操作して、外の様子を見たり録画したりは可能。このあたりはほかのパナソニック製ドアフォン製品と同じです。

  • ドア外に明かりがない場合、モニター状態にしても何も映りません(スマホ画面)

セットのホームユニットを利用するとスマホ連携に対応。スマホと連携すると、外出先からの来訪者の確認・応答、ドア外の確認・録画、録画履歴の閲覧、各種設定の変更など、モニター親機とほぼ同等の機能をスマホから使えます。

セットモデルの場合、あらかじめホームユニットもドアカメラおよびモニター親機と連動しているため面倒な設定は不要です。今回試したのはセットモデルではなく、ホームユニットを増設するタイプだったので、スマホ連動を含めてセッティングにかなり手間取りました……。スマホ連動が欲しい場合は、最初からセットモデルを購入することをオススメします。

  • ホームユニットと接続した場合、録画映像はモニター親機とホームユニット側(microSD)の両方に記録され、スマホからはホームユニット(microSD)を読みに行くようです

少し残念だった点は、スマホアプリ「ホームネットワーク」の動作が重かったこと。1つのメニューを実行するたびにローディングのマークが出て、短くて3秒、長いと20秒ほど待たされることがありました。ドアチャイムが鳴ってからスマホへの通知、スマホで応答する場合のタイムラグはそれほどないため、実用にそこまで大きな影響はありません。

ホームユニットには、パナソニック製の屋外カメラ、屋内カメラ、ドア窓開閉センサー、人感センサーなどの登録も可能。センサー付きの屋外カメラを追加購入すれば、ドアカメラの弱点である「不審者がうろつくだけでは録画されない」も解決できます。

ドア窓開閉センサーと連動させれば、不審者が家屋に侵入したときに、スマホに通知を送ることも。しかも、ホームユニットにはmicroSDスロットを搭載しているので、屋内外機器を購入するだけで月額課金なしに録画履歴の保存と閲覧が可能というメリットも大きいですね。

  • アプリにはセンサーカメラ、窓センサーなどパナソニックの防犯製品を統合できます

センサーは優秀だがネジ止め必須のNest Doorbell、賃貸設置には若干難あり?

次にGoogle製のNest Doorbell。本体は付属の金属プレートを木ネジで壁に固定するタイプで、金属プレートにNestDoorbell本体を差し込んで使います。試用したのはバッテリータイプだったので本体を外してUSB充電する必要がありますが、付属のピンでプレートから簡単に取り外せます。なお、金属プレートに差し込まないと本体の電源がオンにならないため、プレートは必須です。

  • Nest Doorbellの製品構成。固定用の木ネジとアンカーが付属します

賃貸住宅への設置を考えると、やはり両面テープで取り付けたいところ(キレイにはがせるタイプ)。プレートの裏を見ると、木ネジを差し込む部分が凸状になっていて面積が小さく、粘着シートで玄関ドアやドア横の壁に取り付けるのは困難です。検証のため、強力な両面テープでドアに貼り付けてみましたが、数時間ではがれて落ちてしまいました。

Nest Doorbellは、壁に木ネジを打ち込んでもよい物件が前提です。または、玄関横に格子が付いた窓がある物件なら、格子に針金などでくくり付けた木材に木ネジを打ち込むといった工夫の余地はあります。

  • 本体裏に金属プレートを装着しないと本体の電源が入りません。金属プレートは木ネジを差し込む部分が凸状になっており、両面テープだと接着面が小さすぎて、壁などに接着するのは難しいです

  • 縦長の形状は、上がカメラ部、下の丸がチャイムボタン。初見ではどこを押せばいいのか分かりづらいかもしれません。宅配業者などが戸惑う可能性も……

アプリ連携のセットアップは簡単でした。「Google Home」アプリのメニューで「デバイスのセットアップ」を選び、Doorbell本体裏の二次元バーコードを読み込むだけで完了。注意点としては、最新状態のアプリでないとセットアップできないケースがあること。筆者はこれに引っかかり、何が問題か分からず2時間ほどムダに費やしてしまいました。

最大の特徴は、1台でドアフォンと防犯カメラの二役をこなすこと。搭載するセンサーが動体を検知すると自動的に録画がスタートしますが、このセンサーが優秀です。

Nest Doorbellは、日本では2021年から、海外ではさらに前から発売されており、世界中から膨大なデータがクラウドに集まっていて、動体検知の精度が高まっています。風にたなびく植栽やバイクのカバーを誤検知することがあったものの、動く物体を検知すると瞬時に録画が開始されます。録画が始まるとカメラ横に赤いランプが点灯し、チャイムボタンもリング状に光るので、不審者がいた場合は「録画していますよ」という警告にもなりそうです。

  • 上がNest Doorbell。動体を検知すると下部のチャイムボタン周りがリング状に光り、録画していることをアピール

ドアフォンとしては、チャイムボタンが押されるとスマホに通知が来て、スマホを通じて応答できます。スマホがモニター代わりになるので、トイレの中や外出先でも応答できる点が便利でした。

撮影した映像はアスペクト比3:4の縦長画面。上下に画角が広くカメラの手前まで映せ、人物の足元や、不審者がドア付近で何をしているかが分かりやすい映像です。また、ナイトビジョン機能を搭載しているので、暗い夜でも、来訪者や不審者がはっきり映る点も好印象。このほかAIによって、人物・荷物・動物・車両を見分けてスマホアプリに通知する機能もあります。

  • 動体の種類を見分けて検知

  • 荷物を見分けてスマホに通知。注文していた通販が置き配されたことが分かります

  • ナイトビジョン機能によって、夜間に不審者がうろついてもくっきりと録画してくれました。念のため、画面の「不審者」は筆者の自演です

なお、無料プランでは録画は3時間までしか保存できませんが、サブスクサービス「Google Nest Aware」(月額630円)を契約すると30日間の履歴保存、上位の「Google Nest Aware Plus」(月額1,260円)なら60日間の履歴保存が可能です。加えて、家族や知人など、認証済みの人物が検知された場合に通知する機能もあります。

設置が多彩なRing Video Doorbell 4、動体センサーやスマホ連動で使い勝手良好!

最後にAmazonのRing Video Doorbell 4。設置性は3機種の中で最も高く、本体を直接木ネジで固定する方法のほか、粘着テープも付属しています。標準の粘着テープでは不安というユーザー向けに超強力テープも用意していますが、はがすときに壁やドアの塗装を傷付ける恐れもあるとのことで、使用には注意が必要です。また、別売りの既設ドアフォン取替カバーを利用すれば、現在のドアフォンを外して付け替えることも可能。

  • 中央がRing本体。その左が標準の粘着テープ付きマウント。本体をネジでマウントに固定し、標準テープで壁に貼り付けます。左の「B」と書いてあるものが超強力テープ

設定も簡単でした。「Ring」アプリをスマホにインストールし、手順に沿って本体背面の二次元バーコードを読み取るだけ。Ring専用アカウントを作る必要はありますが、それほど手間ではありません。

Ring Video Doorbell 4もNest Doorbell同様、1台でドアフォンと防犯カメラの二役をこなします。Nest Doorbellと異なる点は、区別する対象が人物と荷物のみで、動物と車両は区別できないこと。本体が光って録画していることを知らしめる機能もありません。

  • インターフォンのような形状は、初見でもどこを押せばよいか分かりやすいでしょう

  • モーション検知は人物とそのほかの2種類。Nest Doorbellに比べると大雑把ですが、荷物を検知するゾーンを設定することで宅配荷物も区別します

  • 荷物もしっかり検知

ナイトビジョン機能もあり、周囲が暗くても人物の顔をくっきり撮影可能。チャイムを押した場合と、防犯カメラとして動体を検知した場合とも、はっきりした映像を残せます。映像は横長の画面となるため、広範囲で検知できるメリットはありますが、上下の画角が狭く、来訪者の足元までは映りません。

気になったのは一点だけ、モーションセンサーの感度が若干甘いように感じました。筆者宅の設置環境が影響している可能性はありますが、人物が横切ったり近づいたりしても反応しない場合がありました。

  • 足元は映らないですが、横に画角が広く、かなり手前から人物を検知。ナイトビジョンで真っ暗な中でも人物をしっかり確認できます

Ring Video Doorbell 4は、無料で利用できる機能はリアルタイムの通知と応答だけ。月額350円の「Ringプロテクトプラン」に加入することで、クラウドへの録画履歴保存(180日間)、ユーザーのスマホおよびパソコンへのデータダウンロード、スナップショット(指定した間隔で定期的に写真を撮る機能)の撮影が可能となります。人物の動きを検知して自動録画する機能も、Ringプロテクトプラン加入後の機能です。

小さなことですが、Ring Video Doorbell 4の大きなアドバンテージと感じたのは、「録音・録画中」のステッカーが付属していること。犯罪者は顔を見られ、録画されることを嫌うので、ドアフォンが録画対応であることを知らしめるのは犯罪抑止につながります。パナソニックのVS-HC400K-WとNest Doorbellには付属していないので、新しい出荷分からでも同梱してほしいくらいです。

賃貸住宅向けの最有力はRing Video Doorbell 4か?

まとめると、パナソニックのドアカメラはとにかく簡単に導入したい人向け。窓センサーの追加導入を考えている場合にも、月額課金なくフル活用できます。オートロック付きマンションでも自宅の玄関ドアにはカメラがなく、念のためドアカメラを付けたいと考えている人にはぴったりです。

Nest Doorbellは持ち家の人か、何らかの方法でネジ止め・設置に対応できる人向き。Google Nest Hubと連動してディスプレイにDoorbellの映像も映せるので、Google製品がそろっている人にも適しています。

Ring Video Doorbell 4の設置方法の多彩さを考えると、アパート住まいには最有力候補。Amazon Echo Show(スマートディスプレイ)と連携して、映像を見たり音声操作したりもできます。サブスクの価格も月額350円と比較的安く、導入のハードルは低いのではないでしょうか。

アパートやマンションといった集合住宅の場合、空き巣の侵入経路で圧倒的に多いのは玄関。宅配便やガス・電気の点検を装って強盗に入るケースも多発しています。近所で起きた事件や事故の証拠としても、防犯カメラの映像が役立つケースは多いほか、カメラが付いているだけで威嚇となって犯罪をあきらめさせる効果も期待できるでしょう。春からの新生活を安全に過ごすため、ドアカメラ・ドアフォンの導入を積極的に検討してみてはいかがでしょうか?