日本が直面している少子高齢化社会。これからの未来へ向け、さまざまな課題がある中、それらを解決しながらさらに魅力ある街づくりを実現しようという試みが始まった。2月4日開催された「市民共創実証プロジェクトアイディア発表会」はまさにその一歩を踏み出すべく、大阪府立泉北高等学校、大阪府堺市、NTT西日本、NTTマーケティング アクトProCXらが協力しておこなわれた取り組みだ。これは、次世代を担う若者のアイディアを、企業と自治体が具体化し、社会実装をめざすという壮大な試みの一環となる。この日は、泉北高校軽音楽部の学生6組がそれぞれの分野で仲間と共に考えた課題解決案を発表した。さっそくその中身を見ていこう。

  • 大阪市にある「QUINTBRIDGE」へ緊張気味の学生、先生が記念撮影後に入場

■学生たちの挑戦! 街づくりための本格アイディアに大人たちも驚き

  • 開会を待つ学生らと、関係者。当日はマスコミや企業広報も入り、会場は大いににぎわっていた

  • 会場へ来られない人向けにオンライン配信も実施。大勢が注目する中、学生たちのアイディアが次々と発表された

  • テーマ【1】リモートワーク 発表名「じゅぎょろく」

リモートワークをテーマに発表。コロナ禍の中、オンライン授業を体験したことにより、発想を得たという先生方の授業を録画保存し、学生の予習復習や受験に役立てようという「授業アーカイブ」について語った。

  • テーマ【2】ヘルスケア 発表名「フォルティッシモパーク」

ヘルスケアをテーマに発表。市民の健康維持に音楽を役立てようと、軽音楽部らしい発想で、楽器を公園に設置し、「音」に触れ合う機会を増やし、幅広い世代を巻き込んで大勢がコミュニケーションと健康を高めるというアイディアを発表した。

  • テーマ【3】コミュニティ 発表名「Semboku Small Town」

コミュニティをテーマに発表。地域に関するあらゆる情報が増える中、情報取得の格差や拡散しにくい情報などを一元的にスマートフォンアプリで受付して、電車の車内アナウンスやデジタル掲示板などを使って配信しようという試みについて語った。

  • テーマ【4】スマートタウン 発表名「ヘルパー・D・サイネージ」

スマートタウンをテーマに発表。駅やバス停での待ち時間が長いという課題を見つけ、そういった場所にデジタルサイネージを設置、そこで生活情報を流すことで、街の活性化と情報共有を実現しようというアイディアを語った。

  • テーマ【5】エネルギー 発表名「ライトる。」

エネルギーをテーマに発表。道が多い割に街灯が少なく、夜の安全が保てていないという点に注目。個人による節電や簡易発電をスマートフォンで管理・可視化し、アプリを通じて企業がそれを買い取り、街灯など公共のための電力消費を負担するという仕組みを発表した。

  • テーマ【6】モビリティ 発表名「ショップ×モビリティー」

モビリティをテーマに発表をおこなったのはこちらの7名。自ら都市へ出かけて買い物や趣味を楽しみにいかなくてはならないという郊外型都市の課題に着目。キッチンカーなどのセールスカーによるさまざまなサービス提供を活発化、さらにはそれらの位置情報を共有することで活力のある街づくりの創出を提案した。

■発表を終えて

まず、学生を代表して、栗本さんと北原さんに発表を終えた感想を聞いた。

  • 北原さん(左)と栗本さん(右)

「企画が大きかったので自分たちに務まるかと不安でした。けれどもみんなで協力することでこうして発表することができて、やってよかったと感じています」と栗本さん。

北原さんは「発表したアプリは学生だけで考えていたものなので欠点もあると思います。企業や大人の方々の知識をプラスして、実際に使えるアプリにしてもらって本当に活用できるようにしてもらえたらうれしいです」と話してくれた。

  • 池ノ上先生

続いて、泉北高校の池ノ上先生は「今日、壇上に上がっている学生は、世代と国境を越えて音楽でつながることをテーマに自分だけでなく、他の誰かにも伝わる音楽をテーマに活動してきた若者たちです。自分たちが生活しているホームタウンをさらに持続可能にするために力を貸してほしいと言っていただき、学生達も市民代表として参加したいという返事だったので参加を決意しました。未来を創っていく若者達には、自己中心的にならず、お互いに支え合うことを知り、勉強だけでなく、社会貢献や地域再生についても思いを巡らせることができる広い視野を持つ人間に育って欲しいですね」とコメントした。

  • 石﨑氏(左)、手取氏(右)

堺市の手取氏は「泉北ニュータウン地域は豊かで暮らしやすく、多くの人々が好きだといってくれるエリアです。それをこの後にどうやって引き継いでいくか、さらに付加価値をつけて魅力的な街にしていくにはどうすればよいかを考えていくことが大切だと思っています。ICTを活用して、それを実現していける街づくりや若い世代が伝えてくれた声を反映していける仕組みづくりについて、今後も考えていきたいと思っています」とコメント。

同じく堺市の石﨑氏は「行政の使命は、住民ニーズや意見などを踏まえ、どのように施策に反映させ地域課題などの解決をしていくかにあります。今回はNTT西日本グループの皆さまと連携し、高校生が考える街づくりのアイディアや発想をICTなどの技術を活用して、収集分析するというチャレンジングな企画です。発表会をお聞きし、若者ならではのとても良い意見やアイディアが聞けたと思っています。今後の街づくりに役立てていきたい」と力を込めた。

  • 米林氏(左)、岩下氏(右)

「日本全国でスマートシティは進められていますが、なかなか前に進んでいないところが多いのではないでしょうか。その原因を突き詰めていくと、この取り組みの主役は市民であり、その人たちの声を取り入れながら進める『VOC(Voice of Citizen)』という考え方に繋がります。今回の発表会も『市民共創』が大きなテーマになっています。この考えを前面に施策を考え、実現していける街づくりを、堺市だけでなく、日本全国に広げていきたいと考えています。今回舞台となった堺市泉北ニュータウン地域は少子高齢化が進むエリアですが、素晴らしい発表をしてくれた学生たちはここで育ち、学んだことを記憶に残して、たとえ街から離れても慣れ親しんだ泉北ニュータウン地域のことを思い、クリエイティブに社会貢献や課題解決について考えていける人材に育って欲しいと思っています」とNTT西日本の岩下氏。

最後に、NTTマーケティングアクトProCXの米林氏は「VOCについて実践していく初の取り組みとなりましたが、スマートシティを実現するにはさまざまな世代、立場、地域の人々が意見を交わすことが大切だと考えています。今回は若い世代の代表として泉北高校のみなさんに課題について議論していただき、アイディアをいただきましたが、しっかりとした意見を出していただいたので私たちとしても高く評価できる分析に繋がると考えています。これからもこうした取り組みの幅を広げ、意見を出せないでいる市民の方々とも一緒になって活動し、より良い街づくりに繋げていきたいと思います。今回発表してくれた学生たちはプレゼンも素晴らしかったですし、世の中の動向もきちんと捉えて的確な意見を出すことができるのに驚きました。Z世代ということでデジタルにも強かったですし、軽音楽部ということで対話のための空気づくりも上手だったと思います。彼らにはこれを地域の人たち、あるいは世界の人たちとも対話できるようになってもらい、この強みを活かしていける人材に成長して欲しいと思います」と話してくれた。

全チームの発表を終えて、参加した全員でSENBOKUの頭文字「S」を掲げて記念写真。大人たち、あるいは参画してくれたすべての企業にさまざまなアイディアと驚きをプレゼントした学生たちに大きな拍手が送られた。

開催後に参加学生およびオンライン配信を観た方へアンケートを実施。学生からは「普段経験できないことが経験出来た」「泉北ニュータウン地域を改めて知る機会となった」「友達にも参加して欲しい」といった声、家族からは「学生たちには貴重な経験」、関連企業からは「市民共創が実現できた企画であった」といった称賛の声が寄せられたという。NTT西日本グループは今後も、『市民共創』の取り組みを続けていく。