スバル車といえば「雪に強い」イメージがある。スキーが流行ったころ、ワゴンブームの火付け役だった「レガシィ」をスキー場でよく見かけたからかもしれないし、水平対向エンジン×シンメトリカルAWDという技術的な特性がそう感じさせるのかもしれない。スバルも「総合雪国性能」という言葉で自社製品の性能をアピールしている。では、実際のところスバル車は雪に強いのか。「フォレスターSTI Sport」で冬の奥会津に出かけてみた。
「フォレスターSTI Sport」ってどんなクルマ?
スバルのミドルサイズSUVといえば「フォレスター」だ。1997年に産声を上げた初代から数えて5代目となる現行モデルは、2018年にデビューした「A型」から数度の改良を重ね、今や「E型」まで進化している。2022年8月にはスポーティーグレードの「フォレスターSTI Sport」が登場した。
「STI」の名を冠し、足回りに専用チューンが施されたフォレスターSTI Sportの冬場の走りはいかに。ロングドライブと雪道を体験するため、猪苗代湖と奥会津の温泉宿を目指して2月末の都内を出発した。
まずはフォレスターSTI Sportのスペックをおさらいする。同グレードはスバリストたちの憧れである「STI」(スバル・テクニカ・インターナショナル)がチューニングした足回りと質感がアップした内外装を組み合わせたフォレスターの最上級モデル(363万円)だ。
搭載するパワートレインは最高出力130kW(177PS)/5,200~5,600rpm、最大トルク300Nm/1,600~3,600rpmを発生するスバルお得意の1.8L水平対向4気筒直噴ターボエンジン。トランスミッションはリニアトロニックCVTを組み合わせる。駆動方式は当然ながらフルタイム4WD。燃費は13.6km/L(WLTCモード)だ。
エクステリアは「BOLDER」と呼ぶスバル最新のデザインコンセプトを採用。C字型ヘッドライトを備えるフロントグリルとリアには、レッドのSTIオーナメントを装着する。STI Sportの特徴としてはこのほか、サイドグラッディング、フロントフォグランプカバー、前後バンパーガードなどがブラック塗装の加飾付きに。ホイールは専用の18インチタイプ(ブラックハイラスター塗装)になっている。
インテリアはブラック&ボルドーのシックな2トーン。シートは標準モデルがアウトドアに適した撥水性ポリウレタン仕様であるのに対し、こちらは滑らかな感触のナッパレザーを使用していて、腰を落とした瞬間にいいもの感が伝わってくる。
ダッシュボードの造形はデビュー以来、基本的に変わっていない。上下2段のモニター配列などを見ると、ひと世代前のレイアウトであることを感じる。物理スイッチが多いのはわかりやすく、使い勝手はいい。
リアラゲッジにはSTIのパーツボックスに入った布製チェーンのスノーソックス、スノーブーツ、アイススレーパーなどを搭載。雪への準備は万端だ。
雪の会津でスバルの実力を知る
午前10時にスバルビルのある恵比寿をスタートすると、天現寺から上がった首都高は朝のラッシュが尾を引いていて20~30km/hのノロノロ状態だ。すぐに「アイサイト」を起動し、追従クルーズコントロール(0~120km/hの全車速対応)を開始。東北道に入ると一気に交通量が減り、120km/h区間では文字通り制限速度ジャストのアイサイトで快調に北上を開始してくれた。
フォレスターは背が高いので、北関東の平野部を抜ける際にはこの時期の強烈な横風の影響を受けやすいのだが、とにかくアイサイトを起動させておけば、ほとんどの区間を安定して巡航してくれる。まったく楽ちんだ。
あっという間に白河スマートインターチェンジに到着して、今回の本来の目的である雪道を探して一般道へ降り、山岳路のR294に入って猪苗代湖を目指していく。通過点の天栄村付近で、桜並木をバックに雪上のフォレスターを撮影する予定にしていたのだが、残念ながら今年は雪がなく、単なる冬枯れの景色になっていた。
うーん残念と落胆したのだが、しかし天は我に味方した。山道を抜けて猪苗代湖に到着すると、あたりはしっかりと雪景色。人が踏み込んでいない雪化粧の田んぼの景色に見惚れてしまう。
スバル自慢の「Xモード」(今回はSNOW/DIRTのみを使用、DEEP SNOW/MUDを使うシチュエーションは訪れなかった)やシメントリカルAWD、220mmの車高のおかげで、5~10cm程度の雪が積もった道路でも全く不安なく走破できる。
湖畔の青松浜を訪れてみると、数台の4WDが止まっていて、あたりには数名のカメラマンが。聞くと越冬のため湖に飛来している白鳥の撮影なのだそうだ。「クォー、クォー」という鳴き声が聞こえたので空を見上げると、快晴の青空と磐梯山をバックに白鳥が隊列を組みつつ飛んでいるではないか。積もった雪とホワイトのフォレスターSTI Sportとともに、ベストアングルで撮影できたこの写真、読んでおられる方だけでなく、スバルの方も満足いく出来栄えなのでは。
地元のカメラマンさんに話を聞くと、2月はじめごろ、このあたりは全くのホワイトアウト状態で、この日のように晴天で磐梯山の頂上までくっきり見えることは稀だったらしい。しかも白鳥の編隊飛行まで見ることができて、「あんたたち、相当にラッキーだねー」とのお言葉だ。まあ、ツイていたのもあるけれど、なんといってもこんな場所までスイスイと我々を連れて来てくれたフォレスターには大感謝。スバルの総合雪国性能はダテじゃないのだ。
猪苗代湖からは、白河街道で山越えして会津若松の市内へ。閉館間際の鶴ヶ城は、夕陽に染まってオレンジ色に。これをバックにしたフォレスターを撮影して、本日のお宿である奥会津・東山温泉の「今昔亭」に向かった。
翌日は全く雪のない会津若松市内へ。一方通行が多く、直角に交差する狭い道路が多い街中でも、フォレスターのドライバーズシートはアイポイントが高く、車幅もそこそこなので運転しやすい。
早めの昼食は、江戸末期に味噌専門店として創業した「満田屋」で、会津の郷土料理である「みそ田楽」をいただく。目の前の囲炉裏で1本ずつ焼いてくれる「しんごろう餅」をはじめ、どれも絶品だ。さらに最高だったのは、それを焼いてくれる3人のお姉さんたちとのおしゃべり。「標準語を喋っているつもりなんだけど」とおっしゃるけれども、カーリング娘の「そだねー」に似たイントネーションで、とてもほんわかした雰囲気だ。というわけで、ここでの座席は入り口に近いカウンター席をオススメしたい。
食後は近くにある「末廣酒造」(江戸時代の寛永3年に創業)を訪れ、蔵カフェ「杏」でコーヒーを。お土産には辛口の「さっぱり すえひろ」をゲットした。白壁の巨大な蔵の前でフォレスターを撮影した後は、300km先の恵比寿を目指す帰り道だ。
312kmを走ったこの時点で、残りの燃料は半分とひとメモリ(満タンで62L)くらいに。平均燃費を割り出すと約12.1km/Lだ。10Lだけ補給して、会津若松ICへ。磐越道、東北道はやはりアイサイトの追従運転を使って一気に走り抜け、返却時間の17時少し前に到着。充実のロングドライブを終了した。