本発表では同社営業・マーケティング本部長の池田未央氏が、新・事業戦略『ぜんぶとうふ化作戦』と2023年春夏の新商品について説明。ゲストを招いてのトークセッションも行われた。
「豆腐バー」などの進化系豆腐の商品を展開する老舗豆腐メーカー・アサヒコは、「2023年 プラントフォワード発表会」を3月1日に開催した。本発表では同社 営業・マーケティング本部長の池田未央氏が、新・事業戦略「ぜんぶとうふ化作戦」と2023年春夏の新商品について説明。ゲストを招いてのトークセッションも行われた。
畜肉の値上がりも影響、大豆ミートの市場が活況
昨年創業50周年を迎えたアサヒコ。池田氏はまず同社が2020年にプラントフォワード事業を立ち上げた背景について語った。
「昨年来、さまざまなものが値上がりしていますが、お肉に関しては一時的な値上げではなく、今後も中長期的にミートショックと言われる価格上昇が続いていくと言われています。2050年、世界の人口は100億人近くまで増加。新興国でもお肉がたくさん食べられるようになるなか、動物性のたんぱく源だけに頼っていると、たんぱく質を摂れる人と摂れない人が出てきてしまう"たんぱく質格差社会"が到来すると考えられています」
健康リスク低減やたんぱく質格差社会という課題解決に向けて、同社は持続可能なたんぱく源として大豆に着目。たんぱく質のダイバーシティ化を事業方針のひとつに掲げながら、植物性たんぱく質が手軽に摂れるラインナップを取り揃えてきた。
「豆腐バー」は累計3200万本の出荷本数を記録。昨年は定食を提供するチェーン・やよい軒で「大豆のお肉」を使ったメニューの提供も開始した。
「当社の大豆ミートを使ったやよい軒の『野菜炒め定食』は、去年6月の発売当時は豚肉を使った野菜炒め定食と同じ730円でした。しかし現在は豚肉を使ったメニューが1食あたり800円。大豆ミートのメニューは770円で、すでに30円の差が出てきています。すでに身近な食生活にも影を落とし始めているのがミートショックの現状です」
日本のプラントベースフード市場は昨年400億円に迫る規模まで拡大。2020年以降、参入企業が増えて投資も活発化し、小売りの取り組み強化も進んでいるという。
「昨年の数字では、プラントベースフード全体の6〜7%にあたる約25億円が大豆ミートとも言われていますが、日本のプラントベースフードは初期市場で、まだまだその規模は小さいと私たちは考えています。手前味噌ですが、去年のアサヒコの実績は『豆腐バー』が前年比250%、豆腐のお肉・大豆のお肉を簡単に食べられるお惣菜商品の『TOFFU PROTEIN』シリーズは前年比185%で伸長しています。BtoB販路も拡大し、当社の商品はやよい軒やプロントなど大手外食チェーンでも採用が進むなど、市場よりも高い伸び率で成長しました」
究極の“タイパ飯”「豆腐バー」の新商品
豆腐こそ日本の元祖プラントベースフードにして、国内市場を牽引していく存在との思いから、同社は今年「『豆腐バー』の惣菜化」「『豆腐バー』の七変化」「動物性たんぱくの『ぜんぶとうふ化』」「調味料の『ぜんぶとうふ化』」「主食の『ぜんぶとうふ化』」の5つを指針とする「ぜんぶとうふ化作戦」を始動する。
「まずは『豆腐バー』の中でも具材入りのものが非常に好調に推移していることを受け、『豆腐バー』の惣菜化を進めます。調理済み惣菜は今や10兆円を超える市場規模となっており、まさに今の時代にフィットした、健康的で究極の“タイパ飯”として、調理&食事時間を削減する『豆腐バー』をさらに進化させます」
今月13日に発売する「豆腐バー 蓮根と枝豆」は、筑前煮をイメージして開発された新商品。食感が楽しめる蓮根と枝豆をメインの具材使い、風味豊かなしいたけ、人参の彩りを加えた。
「『豆腐バー』の総菜化にあたって新たな設備投資を行い、製造ラインを今月からもう1ライン増やしたことで、『豆腐バー』の生産キャパは2倍となりました。ふたつ目の指針『豆腐バー』の七変化では、通常のお豆腐より水分が少ない商品特徴を活かし、外食・中食メニューの原料としての活用を推進したいと考えています。『豆腐バー』は通常のお豆腐では難しいナゲット、天ぷらやフライも可能で、噛み応え・食べ応えもありますので、サラダチキンなどの代わりにも使いやすいです」
時間が経っても水分が染み出てこないため、豆腐サラダなどにも適しているらしく、すでにいくつかの企業と商談が進んでいるという。
続いて、池田氏は「動物性タンパク質の『ぜんぶとうふ化』」と「調味料の『ぜんぶとうふ化」」についても説明。豚のロース肉を再現した「大豆のお肉 生姜焼き」と「豆腐のお肉 坦々肉味噌」を3月6日から発売すると発表した。
「今後は豆腐原料を使った国民的人気の惣菜である唐揚げを開発していきます。また、水産資源も世界的な争奪戦が今後起きると言われており、畜肉の次は魚肉ということで、ツナフレークの開発にも着手しています。『坦々肉味噌」は豆腐を細かくひき肉状にし、ラー油と山椒を入れた刺激的な味わいで、簡単に坦々麺や麻婆豆腐がつくれる商品です」
最後の「主食の『ぜんぶとうふ化』」では、豆腐を細長く切って麺状に食べられるようにした商品が昨年11月よりテスト販売中だ。
「たんぱく質と同様に糖質オフの市場も日本では非常に伸びており、こちらのテスト販売では既存の糖質オフを謳った商品と遜色なく動いています。植物性のお肉を使ったソースを付けた汁なし坦々麺と台湾まぜそばがあり、お豆腐を麺として食べていただけるように硬さや長さを調整したもので、設備投資や量産化を今後検討していきます」
意外にカロリー高いと言われる「豆腐バー」だけど…
池田氏のプレゼン後、同社の商品監修や会員制レストラン・ホテルで腕を振るうフレンチシェフ・高橋和好氏が登場。
会場では「豆腐バー」をチーズに見立てたマリネ、パスタに豆腐を使ったラザニア、豆腐バーのナゲットなど、高橋シェフが手掛けたアサヒコ新商品を使った「ぜんぶとうふ化弁当」が提供された。
「ブランドベーストフードって、構えてしまう方も多いと思うんですが、本当に普通の美味しい食事として自然に召し上がっていただけます。まさしくアサヒコの目指す『ぜんぶとうふ作戦』を体現したようなお弁当です」(池田氏)
さらに、本発表会では埼玉西武ライオンズ・レディースの數田彩乃選手と投手の里綾美選手によるトークセッションも実施され、里選手は日々のトレーニングについて紹介した後、食生活で意識していることを語った。
「好きなものをたくさん食べたい気持ちがあるんですが、練習で体を動かしていると知らず知らず腸も疲れるので、なるべく軽めの体にいい食事を心がけています。体に良いものを摂ると、少ない量でもすごく満足感があるなと感じるようになってから、軽めだけど栄養価の高いものを意識的に摂るようにしていますね」(里選手)
こうした話を受けて池田氏は、「『豆腐バー』は意外にカロリーが高いと思われる方もいますが、豆腐に入っている脂は不飽和脂肪酸という体にいい脂。植物性たんぱく質と血液がサラサラになる脂を摂っていただけるので、負担をかけずに体力をつけられると思います」とコメント。
2人も弁当を完食したそうで、お気に入りのメニューを聞かれた數田選手は、「どれも本当に美味しかったんですが、一番はデザートの豆腐のチョコレートムースでした。豆腐なのに本当に生クリームのような味わいで。先ほど簡単に作れるとお聞きしたので、自分でも作ってみたいです」とトークした。
「ぜんぶとうふ化弁当」のメニューやレシピ情報は公式サイトなどで紹介していく予定とのことだ。