中国のSNSで情報発信しているカンテレでは、アナウンサーが出演する映像コンテンツの配信を、ショート動画投稿サイト「Douyin」(中国版TikTok)と「Weibo」(中国版Twitter)で、1月からスタートした。
これまでは、中国で配信中のカンテレ制作のドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』(22年)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年)、『結婚できない男』シリーズ(06年・19年)、『僕らは奇跡でできている』(18年)といった番組情報を中心に展開してきたが、中国の春節(旧正月)向けに新しい動画を制作。今回はアナウンサーたちが自らの個性や関西という土地柄を生かしたユーモアあふれる内容で、最初に投稿した春節の挨拶動画は、Douyinの同局アカウントで断トツとなる9,000いいねを突破、再生数は33.8万回に達した。
マイナビニュースでは、昨年12月にカンテレ本社(大阪市)で行われた撮影に密着。機材はスマホ、そして中国の人々に向けての撮影という今までにない経験をした入社35年目のベテラン・関純子アナに、収録の感想なども聞いた――。
■「chauchau」が氾濫するカオス会話
アナウンス部のフロアでは、アナウンサーと言えばの企画「早口言葉」を敢行。初級は中国でもよく使う言葉だという「青は藍より出でて藍より青し」、中級は「鹿もカモシカも鹿の仲間しかしアシカは鹿ではない仕方ないが叱ってやった」、上級は「東京特許許可局局長今日急遽休暇許可却下」とレベルアップしていくが、難所でつまずいた吉原功兼アナはデスクでもん絶してしまった。
一方、中島めぐみアナは「八百●兵奔北坡(バァバイビォウビンベンベイポウ)」という中国語の早口言葉にも挑み、慣れない発音というハンデ要素がプラスされた中で奮闘を見せている。
●=木偏に示
また、カンテレならではの「関西弁講座」も開講。飲食店やショッピングなど様々なシチュエーションで、「大阪1日」「大阪1カ月」「大阪1年」と在阪歴を重ねるにつれて発せられる言葉やイントネーションの違いを、コント形式で伝えていく。
ここでは、大阪出身のネイティブ・高橋真理恵アナが台本にはないセリフをどんどん盛り込んだり、富山出身の豊田康雄アナも入社31年のキャリアで培った関西弁を見事に繰り出したりと、みなノリノリで本領発揮といったところだ。
さらに、中島アナ、高橋アナ、堀田篤アナの3人が、犬のイラストを見て「チャウチャウ」かを論議も。「チャウチャウ」と違う犬種には「ちゃうちゃう」と否定するため、会話の中に「chauchau」が氾濫するカオスな構図が生まれている。3人はきちんと意味を聞き分けて会話しているようだが、東京出身の筆者でも判別するのが困難だっただけに、中国の人は混乱を極めるに違いない。
アナウンス部での撮影では、関アナがどんどん声をかけて、多くのアナウンサーが参加する剛腕ぶりを披露。「みんな出身地はバラバラなんですけど、長い間一緒にいるので仲が良いんです。それぞれノリや得意分野があるんですけど、それを上手く生かして撮影できたかなと思います」と手応えを話し、「今回みたいなコント形式のものをみんなで一緒にやるのは久しぶりだったので、うれしいですね。これからもどんどんやりたいです」と意欲を示した。
■「会社でたこ焼き作るとは思わんかったわ(笑)」
最後の撮影は、大阪出身の関アナが名物・たこ焼き作りを披露。「会社でたこ焼き作るとは思わんかったわ(笑)」と言いながら、さすがの慣れた手付きで段取りよくまんまるのたこ焼きが次々にでき上がっていく。完成後、試食したスタッフたちは皆「おいしい!」と連呼して、あっという間に完食となった。
編集後はわずか1分前後というショート尺で、生地の作り方から焼き方までポイントを解説しながら教えてくれるので、日本の人たちにも参考になる動画だ。
すべての収録を終えた関アナは「私たちは全国ネットの番組もたまにありますけど、ほとんどが関西ローカルに届けられる番組なので、海を越えて中国の人、あるいは世界の人に見てもらえるというのは、すごく夢がありますね。30年以上、関西テレビで仕事してきましたけど、すごい時代になりました」と改めて驚き、「日本の中の大阪のローカルのテレビ局をどういうふうに見てくれるのか、不思議な感じですよね」と心境を吐露。
そして、コロナ規制の緩和が進み、2025年には大阪・関西万博の開催も控え、これからますますインバウンドが予想される中で、「この動画を見て、たくさんの中国の方が大阪を好きになって来てくれたらうれしいですよね」と期待を語った。