福岡市交通局は4日、七隈線延伸区間において博多駅の主要な駅設備が完成したことを受け、報道機関向け内覧会・延伸区間試乗会を実施した。開業間近となった七隈線博多駅のホーム・コンコース・乗換通路などが公開され、試乗会の列車が博多~天神南間を走った。

  • 博多駅の七隈線ホームに停車中の3000A系。報道機関向け内覧会・延伸区間試乗会が行われた

七隈線は鉄輪式リニアモーターシステムを採用した地下鉄路線として、2005(平成17)年に天神南~橋本間が開業。福岡市西南部地域の慢性的な交通渋滞の緩和、沿線地域の活性化等を目的に計画されたが、都心部区間が未整備で残され、鉄道ネットワークが不十分だったことから、博多~天神南間を建設する七隈線延伸事業が進められてきた。延伸区間は建設キロ約1.4km、営業キロ約1.6kmとされ、博多駅で空港線やJR線と接続。博多~天神南間の中間駅として櫛田神社前駅も開業する。

博多駅の七隈線ホームは地下5階にあり、ホームの長さは約105m(6両対応)とのこと。1面2線でホームドアを設置し、安全性向上のため、電車とホームドアの間にある物などを3次元のセンサーで検知する装置を導入した。ホームと車両の段差も軽減されている。

コンコースと改札口、トイレは地下4階に設けた。空港線ホーム(地下3階)と七隈線のコンコース・ホームを結ぶ乗換通路も地下4階にあり、案内サイン等の情報が目立つシンプルで明るい空間に。福岡市地下鉄で初の設備として、「動く歩道」(長さ約55m、幅約1.4m)が設置された。乗換通路を利用した場合、「乗換距離(ホーム~ホーム)約150m」とされ、改札を通らずに約3分で空港線から七隈線へ乗換え可能。JR線との乗換えも、七隈線の改札口から駅前広場下の地下街を経由して直線的に上がる経路を予定しており、「乗換距離(改札口~改札口)約180m」とされている。

  • ホームドアに3000A系の優先スペースに関する案内も。ホームと車両の段差が軽減されている

  • ホームからコンコースへエレベーターやエスカレーターを整備。木をイメージさせるベンチも設けられた

  • 形状の異なるトンネル天井部をホームからも確認できる

  • 七隈線ホーム先端部の階段・エスカレーターから空港線ホームへ

  • 七隈線ホームと空港線ホームを結ぶ乗換通路に「動く歩道」も

  • 乗換通路の「動く歩道」は長さ約55m。案内サインを大きくし、七隈線ホーム・空港線ホームへの行先をわかりやすくした

改札口を抜け、エスカレーターで地下2階に上がると、明るく開放的な吹抜け空間(高さ約8m、幅約7m、奥行約13m)が広がる。七隈線延伸区間の開業をPRする懸垂幕(高さ約5.4m、幅約3.6m)が掲げられ、福岡市長による完成披露会見もこの場所で行われた。

新駅整備にあたって環境技術も導入。博多駅・櫛田神社前駅ともに駅内の照明をLED化し、コンコース等で時間帯に応じた明るさの制御を行う。ホーム・コンコースの空調に関して、利用者の滞留する箇所をピンポイントで空調する「スポット空調」を採用しており、人感センサーによるON/OFF制御や時間帯に応じた台数制御により、さらなる省エネを図る。博多駅の空調に下水熱、櫛田神社前駅の空調に地中熱を活用するなど、再生可能エネルギーも導入しているとのことだった。

  • 改札口に隣接する駅務室や、トイレの出入口付近に七隈線の路線カラーと同じ緑色を採用

  • 男性トイレの内部。一部個室におむつ交換台も設けられている

  • 地下1~2階に設けられた吹抜け空間

  • 七隈線延伸区間の開業をPRする懸垂幕が掲げられた

  • 七隈線博多駅の完成披露会見もこの場所で行われた

七隈線の車両は既存の3000系に加え、延伸区間の開業に向けて3000A系を増備し、2022年2月から運行開始。合計の編成数は21編成(計84両)となった。報道機関向けの試乗会では、3000A系を使用し、博多駅から天神南駅へ5本、天神南駅から博多駅へ3本の列車を運転。往復で乗車することも可能で、シールド工法により建設された真新しいトンネルを走る様子や、博多駅よりひと足早く駅設備が完成し、開業を待つ櫛田神社前駅のホームなども見ることができた。

櫛田神社前駅での停車時間が短かったこともあり、試乗会での博多~天神南間の乗車時間は約3分だった。開業後の同区間の所要時間は3~4分程度とされている。延伸区間の開業により、七隈線各駅から博多駅まで直結し、所要時間も最大14分短縮。JR線や福岡空港方面の乗換えが便利になるなど、さまざまな効果が期待されている。開業後の乗車人員は約8.2万人(うち新規利用者数は約2.3万人)を見込んでいるという。

  • 博多~天神南間の試乗会は3000A系を使用。インテリアは博多織の五色献上色「紫」「青」「赤」「黄」「紺」をイメージしたという

  • 3000A系の運転台

  • 天神南駅に停車中の3000A系

  • シールドトンネルを走行

  • 中間駅の櫛田神社前駅を通過し、博多駅へ。乗車時間は約3分だった

博多~天神南間は3月27日に開業予定。博多駅では平日朝に1時間あたり最大16本、日中時間帯(11~15時台)に1時間あたり8本の列車が天神南・橋本方面へ運転される。七隈線延伸区間の開業に合わせ、空港線・箱崎線との乗換駅を現在の天神駅(空港線)・天神南駅(七隈線)から博多駅に変更。天神駅・天神南駅間の改札外乗継制度は廃止される。なお、乗換駅の変更にともない、一部駅間で乗車距離が増加し、乗車料金が増額となる場合もあるため、特別な定期券・ポイント制度を一定期間設定し、負担の軽減を図るとしている。