ヤマハ発動機は2023年2月より、二輪車用アルミ部品の原材料として「グリーンアルミニウム」の採用を開始した。
二輪車製品におけるグリーンアルミニウムの採用は国内初。大型二輪車製品や競技用モデルの部品の一部を皮切りに、順次、適用モデルを拡大するという。
カーボンニュートラルに向けたアルミニウム製造時のCO2削減
ヤマハ発動機は「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」の中で、2050年までに事業活動を含むサプライチェーン全体のカーボンニュートラル達成を目指している。
その一環として今回、原材料製造時のCO2排出量低減のため、アルミニウム地金の調達先と「グリーンアルミニウム原材料の調達に関する契約」に合意。2023年2月より、二輪車用アルミ部品の原材料として、グリーンアルミニウムの採用を開始した。
「グリーンアルミニウム」とは、CO2の排出量が少ない再生可能エネルギーを用いて製錬されたアルミ材を指す。アルミ部品は同社二輪車製品の車両重量の約12~31%を占めており、特に競技用モデルをはじめとする大型のスポーツモデルでその比率が高い。
そのため、アルミニウム製造時のCO2排出量削減は、同社製品のカーボンニュートラル達成に向けた有効なアプローチのひとつとなっている。
グリーン材への転換で高い強度と低CO2化を両立
同社はこれまでも、環境に配慮した取り組みとして、リサイクルアルミ材の活用を推進してきた。その結果、現在、リサイクルアルミ材の比率が国内外主要工場向けの調達量の約8割を占めるまでになっている。
そして、残りの約2割を占めているのが、採掘された原料をもとに精錬されたバージン材だ。バージン材の使用量は約2割と少ない一方、CO2排出係数で換算するとバージン材の排出量が約8割弱にのぼっており、バージン材は使用量が少なくても環境への負荷が大きい。
したがって、バージン材による製造時CO2排出量をいかに低減させるかが、アルミニウム材のカーボンニュートラル戦略のカギとなっていた。
バージン材使用によるCO2排出量を削減する方法として、「リサイクル材に置き換える」「グリーン材を調達する」の2つがあるが、高い強度が求められる部品はリサイクル材に置き換えることができない。
そこで、リサイクル材への置き換えができないアルミニウム部品については、高い強度と低CO2化を両立するべく、グリーン材が採用されることになった。
具体的なCO2削減量は今後精査が必要だというが、グリーンアルミニウムは、精錬時の電力を再生可能エネルギーに限定することによって、従来のバージン材に比べ低CO2化を実現できる。
あくまでもアルミを精錬する際の電力を再生可能エネルギーに代替するだけで、原材料や製造工程そのものにはまったく変化がないため、グリーンアルミニウムは従来のバージン材同様の品質や強度が担保できるという。
2050年までに原材料の100%をサステナブル材に
今後は、2024年モデル以降の大型二輪車製品や競技用モデルの一部にグリーンアルミニウムの採用を開始し、グリーンアルミニウムの供給量に応じて、適用モデルを順次拡大していく予定だ。
加えて、今後は樹脂の植物由来材の採用および低CO2材料への切り替え、鉄鋼材のリサイクル材拡大ならびにグリーン材の調達にも取り組んでいく。それによって、2050年までに同社が調達する原材料の100%をサステナブル材に切り替えることを目指す。
グリーンアルミニウムは従来のバージン材に比べ、調達コストは上がるものの、今のところグリーン材への転換に伴う価格転嫁は考えておらず、企業努力でアップを吸収する方針だという。
私たち消費者としても、商品を選ぶ際は、デザインやスペックといったわかりやすい魅力だけでなく、素材や製造方法、その背後にある企業の姿勢にも目を向けるようにしたいものだ。