第36期竜王戦1組出場者決定戦(主催:読売新聞社)は、5位を決めるトーナメントの渡辺明名人―三枚堂達也七段戦が2月28日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、63手で勝利した渡辺名人が次回戦進出を決めました。
渡辺名人の横歩取り勇気流
出場者決定戦の5位トーナメントは8人で争われ、優勝した1名が本戦トーナメント出場の権利を得るもの。同時に、1回戦である本局で敗れると2組への降級が決まります。振り駒で先手となった渡辺名人は横歩取りの戦型を選択しました。横歩を取った直後に玉を6筋に上がったのが勇気流と呼ばれる戦法で、高い位置に陣取る飛車を中心とした右辺からの速攻を狙っています。
開始23手目にしてすべての実戦例を離れた本局は、後手の三枚堂七段が先手の渡辺名人の飛車を盤上中央で追いかけ回して中盤戦のピークを迎えます。手順に金銀を盛り上げて雁木囲いを作ったのは三枚堂七段の主張ですが、これに対して渡辺名人も飛車・角・桂という飛び道具を戦闘配置につけて準備万端。三枚堂七段が角道を開けたのを合図に、渡辺名人が角交換から一気呵成の攻めを開始しました。
一気の攻めで渡辺名人が快勝
3筋で角交換が行われた直後、雁木囲いの銀に向けてたたきの歩を放ったのが先手の渡辺名人が用意していた攻め筋。立て続けに飛車香両取りの角打ちを実現したところで形勢の針が渡辺名人に傾き始めました。この直後、5筋で行われた飛車交換によって局面は一気に終盤戦になだれ込みますが、この直後に控える先手からの飛車打ちが厳しく、これ以降は三枚堂七段にとって勝ち味の薄い展開となりました。
終局時刻は17時30分、最後は防戦一方となった三枚堂七段が投了。夕食休憩前の短期決着によって渡辺名人が2回戦進出を決めました。敗れた三枚堂七段は局後、「悪手こそないもののバランスの取り方がぎこちなくまとめづらい将棋になってしまったかなと思います」と振り返りました。渡辺名人も「(飛車の打ち込みとその後の垂れ歩が)間に合って勝ちになりました」と総括しています。
勝った渡辺名人は次局で広瀬章人八段―八代弥七段戦の勝者と対戦します。
水留 啓(将棋情報局)