明治安田厚生事業団は2月22日、高齢者の24時間の行動と、認知機能の関連性に関する研究結果を発表した。
同研究は、健常高齢者76名を対象にした横断研究で、参加者の24時間の行動を評価するために、活動量計を用いて身体活動と座位行動の時間を測定し、調査票を用いて睡眠時間を評価した。
今回は、目的に向かって自分の行動や思考を制御する能力「実行機能」評価のため、参加者はパソコンでストループ課題、Nバック課題、タスクスイッチング課題を行った。これらの課題により、抑制機能 、ワーキングメモリ、認知的柔軟性といった実行機能の要素を評価した。組成データ解析と呼ばれる統計手法により、1日の行動時間が持つ相互依存性を考慮したうえで、身体活動と各課題成績の関連性を調べた。
その結果、1日に占める身体活動の中で、ゆっくりした歩行や家事などの低強度の活動時間が多い高齢者ほど、目的に向かって自分の行動や思考を制御する「実行機能」を評価する課題のスコアが高いことがわかった。
さらに統計学的予測により、1日あたり30分の座位行動や睡眠時間を低強度身体活動に置き換えることで、スコアが5~10%程度向上すると試算された。
一方、運動やスポーツといった比較的強度が高い活動(中高強度の身体活動)と実行機能の間に、統計的に有意な関連性は確認されなかった。ワーキングメモリや認知的柔軟性を評価する課題の成績も、強度の身体活動とも明確な関連性は確認できなかった。
今回の研究により、高齢者の抑制機能の維持・向上には、座位行動や睡眠の時間を見直し、低強度の身体活動をたくさん行うことが効果的である可能性が確認できた。低強度の身体活動は運動やスポーツよりも体への負担や心理的な負担感も少なく、日常のさまざまな場面で実践可能だという。
同研究の成果は、神経科学系の国際学術雑誌「Frontiers in Human Neuroscience」で公開されている。