第49期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、予選の増田康宏七段―岡部怜央四段戦が2月27日に東京・将棋会館にて行われました。対局の結果、112手で勝利した増田七段が次回戦進出を決めました。

岡部四段の相掛かり積極策

振り駒が行われた本局、先手となった岡部四段は相掛かりの戦型に誘導しました。後手の増田七段が飛車先の歩を交換してきたタイミングで角交換を挑んだのが岡部四段の用意で、このあとひねり飛車の要領で飛車を左辺に転戦しての8筋逆襲を狙っています。これを受けて増田七段はすぐさま先手陣に角を打ち込んで対抗しました。

盤面右方に馬を作り攻めの拠点とした後手の増田六段は、さらに自陣の左桂も援軍に送って香得の実利を果たしました。受けていてもきりがないと見た岡部四段は盤面左方からの香交換でポイントを稼ぎますが、いかんせん1筋での香損が響き苦戦の感は否めません。局面は増田七段のペースで中盤の山場を迎えました。

増田七段リードも長引く中盤戦

首尾よく香得を果たした増田七段は、敵陣に作った馬を自陣に引き付けて自玉を鉄壁にします。「駒得のときはゆっくりと」の原則通りのこの指し回しは好着想に思われましたが、このあとの具体的な攻め方が難しかったのが増田七段にとっての誤算でした。実戦は、この直後に3筋からの反撃を見せた先手の岡部四段が猛追して局面は終盤戦に突入します。

盤面全体を使った攻め合いが続くなか、増田七段が馬を9筋に入って銀取りをかけた局面が本局の勝負所となりました。これに対し攻めを続ける先手の岡部四段は勢いのままに桂打ちの王手を決め、直後の角打ちと合わせて手順に増田七段の馬を消す構想を採りますが、結果的にはこの応酬で増田七段の玉が安定したのが本局の趨勢を左右しました。

増田七段が胆力示し勝利

一足早く一分将棋に突入した岡部四段を尻目に、持ち時間を3分残す増田七段は落ち着いた決め手を用意していました。五段目に誘い出された先手の銀をめがけて自陣の右桂を跳ねたのがそれで、手順に遊び駒の飛車がさばけたところで増田七段の優勢が確立されました。終局時刻は18時47分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた岡部四段が投了を告げて増田七段の勝利が決まりました。

勝った増田七段は次局で八代弥七段と対戦します。

  • 増田七段はこれで公式戦5連勝と好調だ(未放映のテレビ対局を除く)

    増田七段はこれで公式戦5連勝と好調だ(未放映のテレビ対局を除く)

水留 啓(将棋情報局)