草なぎ剛が主演を務めるカンテレ・フジテレビ系ドラマ『罠の戦争』(毎週月曜22:00~)は、愛する家族を傷つけられた議員秘書が知略を尽くして鮮やかな“罠”を仕掛け、悪しき政治家を失脚させる痛快エンターテインメント。女優の小野花梨は、草なぎ演じる主人公・鷲津亨から信頼され、仕事ができて気の利く後輩秘書の蛍原梨恵を演じている。

パワハラで悩んでいたときには「鷲津さんだけが気付いてくれた」と感謝し、鷲津を尊敬してやまない梨恵。そんな鷲津を演じる座長の草なぎは、小野から見てどんな存在なのか。話を聞くと「人間よりも神に近い存在」との言葉が飛び出した。

  • 女優の小野花梨 撮影:泉山美代子

    女優の小野花梨 撮影:泉山美代子

――今作で演じている蛍原梨恵は、小野さんから見てどんなキャラクターですか。

強くて優しくてクレバーな女性です。上司にも「それはパワハラですよ」「これは経費で落ちませんよ」と言えちゃう強さがかっこよくて大好きです。

――小野さん自身は理不尽なことをズバッと指摘できるタイプですか。

言えるタイプではあるのですが、その結果自分の立場が良くない方向に行くかもしれないと想像できるときは言わないです。だから梨恵のズバッと言えるところは、強さでもある一方弱さでもあるなと。その個性を大切に、梨恵という役を作っていきたいと思いました。

  • 小野演じる蛍原梨恵=カンテレ提供

――梨恵の強さは、不器用さでもあるということなんですね。小野さんは草なぎさん、杉野遥亮さんとのシーンが多いと思いますが、お2人の印象をお伺いできますでしょうか。まずは、鷲津亨を演じる座長・草なぎさんの印象を教えてください。

もう人間よりも神に近い存在といいますか、とても同じ人間だと思えないお方です。圧倒的な経験値がそうさせるのか、そもそもの考え方が人と違っているのか、到底敵わないものを感じます。

――どんなところが“神”と感じる所以なのでしょうか。

信じられないくらい視野が広いところ、そして自分の機嫌を自分で取れることについて天下一品なところです! きっともともとそういう方というより、ご自身でコントロールされているのではないかと想像しているのですが、あまりにも完璧で隙がなさすぎて。自分がどれだけ疲れていても、「草なぎさんに会えるなら現場に行きたい」と思わせてくれるすごい方です。並行していろいろなお仕事をされていて、お休みの日もほとんどないであろう中で、草なぎさんはいつも穏やか。ずっと穏やかで居続けるってこんな至難なことはないと思うんです。毎日すごみを感じています。

――草なぎさんにかけられた言葉で、印象的だった言葉はありますか。

草なぎさんが朝一番に現場入りして遅くまで撮影されている中、私は先に失礼することが多いのですが、そのたびに「すみません、お先に失礼します」と言っていたら、ある日「花梨ちゃんは、どうして僕より先に現場を出るときに申し訳なさそうな顔をするの? 僕は皆が休んでくれるのがすごくうれしいんだよ。だから『じゃあ帰りまーす!』って元気に帰ってよ、頼むよ~」と言われて……、もう、とんでもない方だ! と(笑)。そう思ってくださっていることもですが、丁寧に言葉にして相手に伝えるエネルギーや愛情に衝撃を受けました。

――素晴らしい視野の広さとお気遣いですね。

あと、草なぎさんが夕食にうなぎのお弁当を差し入れしてくれた日のことなのですが、その日はたまたま貝沼永太役の坂口涼太郎さんが六本木で違うお仕事をされていてその場にいなかったんです。そしたら草なぎさんがどうしても食べて欲しいということで、坂口さんのもとにうなぎのお弁当を届けてもらうようお願いしたと伺って……。「食べられなくて残念だね」が普通の会話だと思うのですが、「持って行ってあげて」だなんて、私は思いつきもしなかった発想だったので、最早常軌を逸する“神”だ! と(笑)。

――神の発想ですね(笑)。

神ですよね!? 草なぎさんからは「1人残らず愛してやるぞ!」という途方もない愛情を感じられるんです。皆草なぎさんに会いに行ってるし、皆草なぎさんが笑ってくれるのが一番うれしい。愛情って連鎖していくものなんだなと、この現場にいてすごく感じています。

――続いて、杉野さんの印象もお伺いできますでしょうか。

自分のペースを大事にしながら、監督にたくさんお芝居について相談して、悩みながら役を作り上げられている方。見ていて勉強になりますし、尊敬しています。現場では皆とべったり馴れ合うわけではなく、自分のリズムをしっかりと保ち続けていて、意志の強さが素敵だなと感じます。

  • (左)杉野遥亮演じる蛯沢眞人=カンテレ提供

――では最後に『罠の戦争』後半戦の見どころを教えてください。

1つ解決するとまた新たな問題が出てきて、目まぐるしい展開が続くのが『罠の戦争』の魅力。ストーリーにあわせて登場人物の気持ちが大きく動いていくので、いろいろな立場の人間の心情が移り変わっていくさまを楽しんでいただけたらうれしいです。特に第10話と最終話の第11話は、私も台本を読んで衝撃を受けたので、そこまでどうかご覧いただけたらと思います。よろしくお願いします。

第2話ラストの雨の中のシーンの演技プランや、役作りに対する葛藤、「第46回 日本アカデミー賞 新人俳優賞」受賞など、“芝居”を中心に話を聞いたインタビュー後編は3月5日公開予定。
■小野花梨
東京都出身。2006年にTBS系ドラマ『嫌われ松子の一生』で女優デビュー、2008年、『チーム・バチスタの栄光』で映画初出演、フジテレビ系ドラマ『CHANGE』で初の連ドラレギュラー出演を果たす。2021年にはNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で朝ドラ初出演、2022年はカンテレ・フジテレビ系ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』、MBS・TBSドラマ『ロマンス暴風域』などにレギュラー出演。2022年に出演した映画『ハケンアニメ!』で、「第46回日本アカデミー賞」新人俳優賞受賞。