女優の芳根京子が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、26日、3月5日に前・後編で放送される『たどりついた家族2』。昨年5月放送、戦火のウクライナから日本にやってきた避難民家族を追った作品の続編となる。(※TVer・FODで見逃し配信あり)

日本へ避難してきた一家は、全く言葉の分からない異国の地で、その後どんな暮らしを送ってきたのか。停戦の目処がついていない中、制作された続編に芳根は「皆さんの今の姿を見られたのはうれしいですが、続編があるのは良いことなのか悪いことなのか」と複雑な思いを吐露する。ナレーションを通して戦争というものが一気に“現実味”を帯び、「早く終わってほしい」と心から願うようになったと話す芳根が、家族を見て感じたこと、子どもたちの成長に救われた思いなど胸の内を語った。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した芳根京子

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した芳根京子

■続編があるのは良いことなのか、悪いことなのか

東京・新宿区に住む和真さん(35)・アナスタシアさん(22)夫妻。アナスタシアさんの母国・ウクライナには、母・マーヤさん(44)と年の離れた妹・レギナちゃん(6)、弟・マトヴェイくん(4)が暮らしていた(年齢は昨年放送当時)。2022年3月上旬、ロシアの侵攻を受け、1万kmにおよぶ2週間の脱出行でアナスタシアさんの暮らす日本へ避難してきたマーヤさん一家。昨年5月の放送では、和真さん夫妻の自宅に身を寄せながら、全く言葉の分からない異国の地で新生活を始めた家族の2カ月間に密着したが、その後3人は都営住宅に引っ越し、レギナちゃんが小学校、マトヴェイくんが幼稚園へ通い始めるなど思いもよらず日本滞在が長期化することに。そんな中、障害のある兄・ジェニャさんを亡き夫の母・サーシャさんに預けたままのマーヤさんは、戦火の故郷へ戻ることを決意する。

スタジオ入りするなり「ちゃんと読める自信がない、泣いてしまうかもしれない」と話した芳根。「心が引っ張られないよう、いつもの収録より“一歩引く”ことを意識しました。でも皆さんが喜んでいると一緒にうれしくなったし、つらいことが起こると一緒に悲しくなりました」と葛藤を明かしながらも、無事にナレーション収録を終えた。8カ月経っての続編には、「皆さんの今の姿を見られたのはうれしいですが、続編があるのは良いことなのか悪いことなのか」と複雑な思いが。ウクライナで暮らしていたマーヤさん、レギナちゃん、マトヴェイくんが、日本でアナスタシアさん、和真さんと一緒にいる姿は一見幸せそうに見えるが、「世界が平和ではないから日本で一緒にいるということに、すごく考えさせられます」と芳根は冷静に語る。

  • 母・マーヤさん(左)と息子・マトヴェイくん(C)フジテレビ

■常に幸せなことの裏で大変なことが起きている

続編では、子どもの成長や笑顔が救いのように感じられる場面も。レギナちゃんは友達もでき、マトヴェイくんも少しずつではあるが日本語を覚え始める。芳根も「日本での生活に対して前向きな気持ちが芽生えていることが唯一の救いで、希望を感じられました。 国際情勢はなかなか変わらないけれど、家族が前向きに進もうとしている姿が見られて良かったです」と安堵の表情を浮かべた。特に子どもたちの成長には「日本語を話せるようになっていてうれしい気持ちになりました。現実を理解して、前に進もうとしている」と目を細める。幸せなシーンも紹介されるものの、すべてが「戦争が続いている」がゆえに紡がれていく家族のストーリーに、「常に幸せなことの裏で大変なことが起きているから、笑顔になれる場面があっても100%喜べないのがつらいです。笑顔が素敵なご家族だから、100%の笑顔を早く見たい」と思いを寄せた。

  • 小学校へ通うレギナちゃん(C)フジテレビ

■不運続くも約束守る母の姿に「かっこいい」

後編では、マーヤさんが信じられないような不運や危機に襲われる。芳根は「どうして不運って重なってしまうんだろう」と胸を痛めながらも、やがて子どもたちとの“約束”を叶えることになるマーヤさんに「約束を守ってくれて私もうれしかった。どんなことが起きても笑顔を絶やさないお母さん。かっこいいですよね」と改めて“母”の偉大さを思い知ったよう。

また、ウクライナから避難してきた3人を迎え入れることになった和真さんとアナスタシアさんにもフォーカスが当てられる。もともと日本のアニメや文化が好きだったアナスタシアさんは、ボクシングのプロライセンスを持っていた和真さんにマッチングアプリで出会い一目惚れ。日本でデートを重ね、5年前に結婚した。和真さんは、在宅ワークで自分の仕事をこなしながらマトヴェイくんのお弁当作りや幼稚園への送り迎えを担当し、時にはレギナちゃんの宿題を見ることも。アナスタシアさんは日本語学校に通い、大学受験のための勉強に励んでいるが、2人の面倒を見ることに追われ、自分の時間がなかなか取れない中、試験の日を迎えてしまう。

和真さんは、レギナちゃんやマトヴェイくんにも礼儀正しい日本語で語りかける性格だ。芳根も「和真さんが幼い2人に時折敬語を使っているのが印象的で」と微笑み、「和真さんがいてくれて良かったとすごく感じました。迎え入れる側も本当に大変だと思うのですが、素敵な2人ですよね」と称えた。

■心の底から「戦争が早く終わってほしい」と願うように

家族以外からも思わぬ助けやぬくもりを感じられるシーンに芳根は「自分が見ている世界はちっぽけだなと思わされました」としみじみ。「できることは少ないけれど、探せばある」と意識を新たにし、「ウクライナ侵攻のニュースを見ていて、『戦争が早く終わってほしい』と、もちろん思っていました。でもこの家族の姿から人々が実際にどんな影響を受けているのかを知って、戦争というものが一気に“現実味”を帯びて……心の底からそう願うようになりました」と語る。そして「続編ですと聞いたとき、『そうか、制作できてしまうのか』と。状況は変わっていないけれど、前回から8カ月経ち、その間ウクライナの方々がどう過ごしてきたのかを知ってほしい」と視聴者へ呼びかけた。マーヤさん一家は今もまだ日本で暮らしている。芳根は願う。「今度こそ続編がないといいなと思いますが、皆さんが笑顔でウクライナに帰る姿は見たいです」。


■芳根京子
1997年生まれ、東京都出身。13年に『ラスト・シンデレラ』で女優デビュー。14年にNHK連続テレビ小説『花子とアン』で注目を集め、15年『表参道高校合唱部!』でドラマ初主演。16年にはNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインを務め、以降もドラマ『海月姫』『チャンネルはそのまま!』『コタキ兄弟と四苦八苦』『君と世界が終わる日に』『コントが始まる』『半径5メートル』『真犯人フラグ』『オールドルーキー』、映画『累 -かさね-』『居眠り磐音』『記憶屋 あなたを忘れない』『Arc アーク』などに出演する。