フランス生まれの人気車、ルノー「カングー」が新型に生まれ変わる。商用車由来の道具っぽさや脱力感が魅力のカングーだが、新型には「少し真面目になりすぎ?」といったような意見もあるようだ。実際のところ、どう変わったのか。ルノー・ジャポンの商品担当に話を聞いて、新旧モデルを比較してみた。
大きくりりしく質感高く!
今度のカングーは14年ぶりの「完全新開発」(ルノー・ジャポンの商品担当)。見た目も中身も価格も大きく変わっている。日本仕様は「クレアティフ」「インテンス」「ゼン(受注生産)」の3グレード。クレアティフはブラックバンパーやダブルバックドアなどを装着した日本専用の特別な仕様だ。
まずはボディサイズ。全高は1,810mmで変化なしだが、新型は全長が先代比210mm増の4,490mm、横幅が同30mm増と大型化している。全長が210㎜も伸びたのに、ホイールベースは15mm増の2,715mmとそんなに変わっていない。前後に伸びた分は荷室容量の拡大に充当し、使い勝手を向上させたそうだ。
顔つき、目つきもけっこう変わったが、このあたりは好みの問題か。ヘッドライトは全グレードでフルLEDに。最新のルノー車に共通する「C」シェイプのデイタイムランプも相まって、新型はきりっとした印象だ。
これまでは「LCV(小型商用車)に乗用車の要素を少し足した」クルマだったカングーだが、新型ではLCVの要素と乗用車の要素の両方をレベルアップさせつつも、乗用車としての快適さ、上質さをより大幅に強化しているというのがルノー・ジャポンの解説。新デザインを「質感が向上した」と取るか、「道具っぽさ、商用車っぽさ、いい意味でのチープさが減った」と取るかで、見る人の評価は変わってきそうだ。
中身の変化で「革命的進歩」(ルノー・ジャポンの商品担当)をとげているのが先進の安全装備(ADAS)まわりだ。先代はほとんど何も付いていないような状態だったのが、新型は「アダプティブクルーズコントロール」(ACC)など「求められるものは付いている」という。
プラットフォームは日産自動車、三菱自動車工業とのアライアンスで開発した「CMF-C/D プラットフォーム」を採用。パワートレイン、つまりエンジンの選択肢も広がっている。
新型はガソリンエンジンに加え、先代では限定モデルしか搭載していなかったディーゼルエンジンも選べるようになった。長距離を頻繁に乗るなら迷わずディーゼル、短距離、中距離の運転が多いならガソリン、そんな感じで選ぶのが吉とのことだ。ちなみに、本国にはカングーの電気自動車(EV)タイプもあるのだが、日本への導入は今のところ検討していないという。マニュアルシフト(MT)車については今後の導入を検討しているそうだ。
最後に触れざるを得ないのだが、価格も100万円単位で変わっている。旧型が260~280万円あたりだったのに対し、新型は「ゼン」(ガソリンエンジンのみ)が384万円、「クレアティフ」と「インテンス」がガソリンエンジン395万円、ディーゼルエンジン419万円、特別仕様車の「プルミエール エディション」がガソリン400.5万円、ディーゼル424.5万円という設定だ。旧型はトヨタ自動車「シエンタ」やホンダ「フリード」などの小さなミニバンと比較できるレベルの値段だったわけだが、新型は別の価格帯に位置するクルマとなる。
乗用車としての快適さ、質感を高めたことで、カングーを「検討してもらえるお客様の間口が広がる」というのがルノー・ジャポン担当者の見方だが、いろいろ変わった新型が日本でどう受け止められるのか、興味が尽きない。