フランス生まれの人気車、ルノー「カングー」が新型に生まれ変わる。商用車由来の道具っぽさや脱力感が魅力のカングーだが、新型には「少し真面目になりすぎ?」といったような意見もあるようだ。実際のところ、どう変わったのか。ルノー・ジャポンの商品担当に話を聞いて、新旧モデルを比較してみた。

  • ルノーの新型「カングー」

    ルノー・ジャポンが3月2日に発売する新型「カングー」

大きくりりしく質感高く!

今度のカングーは14年ぶりの「完全新開発」(ルノー・ジャポンの商品担当)。見た目も中身も価格も大きく変わっている。日本仕様は「クレアティフ」「インテンス」「ゼン(受注生産)」の3グレード。クレアティフはブラックバンパーやダブルバックドアなどを装着した日本専用の特別な仕様だ。

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  • ルノーの旧型「カングー」
  • 左が新型「カングー」の「クレアティフ」、中央が同「インテンス」、右が旧型「カングー」。クレアティフはブラックのバンパー、サイドモール、スライドレールにスチールホイール、ダブルバックドアを組み合わせ、従来のカングーのイメージを踏襲した日本専用モデル。インテンスはバンパーがボディ同色となるが、これだけで随分と印象が変わる

まずはボディサイズ。全高は1,810mmで変化なしだが、新型は全長が先代比210mm増の4,490mm、横幅が同30mm増と大型化している。全長が210㎜も伸びたのに、ホイールベースは15mm増の2,715mmとそんなに変わっていない。前後に伸びた分は荷室容量の拡大に充当し、使い勝手を向上させたそうだ。

  • ルノーの旧型「カングー」
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  • 左が旧型、右が新型。新型はガラスエリアが上下に薄くなっている。ガラスの間にある柱(ピラー)は旧型がボディ同色で商用車っぽいが、新型はブラックになって質感が高まった

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  • 新型「カングー」の荷室。荷室容量は通常時で775リッター(旧型比115リッター増)、後席を折りたたむと2,800リッター(同132リッター増)となる。タイヤハウスなどの出っ張りがないスクエアな荷室はモノが積みやすそう。トノカバーが後席の背面に収納できる仕組みは便利だ

顔つき、目つきもけっこう変わったが、このあたりは好みの問題か。ヘッドライトは全グレードでフルLEDに。最新のルノー車に共通する「C」シェイプのデイタイムランプも相まって、新型はきりっとした印象だ。

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  • 左が旧型、中央が新型の「クレアティフ」、右が新型の「インテンス」。ここは好みがわかれそう

これまでは「LCV(小型商用車)に乗用車の要素を少し足した」クルマだったカングーだが、新型ではLCVの要素と乗用車の要素の両方をレベルアップさせつつも、乗用車としての快適さ、上質さをより大幅に強化しているというのがルノー・ジャポンの解説。新デザインを「質感が向上した」と取るか、「道具っぽさ、商用車っぽさ、いい意味でのチープさが減った」と取るかで、見る人の評価は変わってきそうだ。

  • ルノーの旧型「カングー」
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  • 左が旧型、右が新型

中身の変化で「革命的進歩」(ルノー・ジャポンの商品担当)をとげているのが先進の安全装備(ADAS)まわりだ。先代はほとんど何も付いていないような状態だったのが、新型は「アダプティブクルーズコントロール」(ACC)など「求められるものは付いている」という。

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    新型「カングー」のADAS

プラットフォームは日産自動車、三菱自動車工業とのアライアンスで開発した「CMF-C/D プラットフォーム」を採用。パワートレイン、つまりエンジンの選択肢も広がっている。

新型はガソリンエンジンに加え、先代では限定モデルしか搭載していなかったディーゼルエンジンも選べるようになった。長距離を頻繁に乗るなら迷わずディーゼル、短距離、中距離の運転が多いならガソリン、そんな感じで選ぶのが吉とのことだ。ちなみに、本国にはカングーの電気自動車(EV)タイプもあるのだが、日本への導入は今のところ検討していないという。マニュアルシフト(MT)車については今後の導入を検討しているそうだ。

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    新型「カングー」は1.3Lガソリンターボエンジン(ルノー/日産/三菱アライアンスとダイムラーの共同開発、「ルーテシア」など複数の車種で採用実績あり)と1.5Lディーゼルターボエンジンを搭載する

最後に触れざるを得ないのだが、価格も100万円単位で変わっている。旧型が260~280万円あたりだったのに対し、新型は「ゼン」(ガソリンエンジンのみ)が384万円、「クレアティフ」と「インテンス」がガソリンエンジン395万円、ディーゼルエンジン419万円、特別仕様車の「プルミエール エディション」がガソリン400.5万円、ディーゼル424.5万円という設定だ。旧型はトヨタ自動車「シエンタ」やホンダ「フリード」などの小さなミニバンと比較できるレベルの値段だったわけだが、新型は別の価格帯に位置するクルマとなる。

乗用車としての快適さ、質感を高めたことで、カングーを「検討してもらえるお客様の間口が広がる」というのがルノー・ジャポン担当者の見方だが、いろいろ変わった新型が日本でどう受け止められるのか、興味が尽きない。