既報の通り、Raptor Lakeの最速モデルとしてCore i9-13900KSが発表され、既に秋葉原などで発売が開始されている。P-Core/E-Coreともに1~2binほど動作周波数を高め、ピークで6GHzに到達した製品であり、PL2こそCore i9-13900Kと変わらない253Wだが、PL1は125W→150Wに引きあがっている。実売価格は11万円~12万円ほど。Core i9-13900Kの実売価格がAmazon.co.jpで\89,000ほど、GPUなしのCore i9-13900KFが\85,000ほどであることを考えると、スペシャル版とは言えやや高めではある。ということで、早速その性能を比較してみたい。
評価機材
まずパッケージだが、公開された写真と比較すると、青というよりかなり濃いめの紺といった感じで、ちょっと見かけが異なる(Photo01)が、ウェハを模した金色のプラスチックケースに収まるあたりは変化なし。CPU自身も刻印以外は特に差はない(Photo02,03)。CPU-Zでも問題なく認識された(Photo04)し、Windowsからも問題なく認識された(Photo05)。
ちなみにテスト環境は表1の通り。Core i9-13900Kの速報版では都合上ROG Maximus Z790 Heroを使ったが、速報版冒頭で述べた様にPrime Z690-Aでも問題なく動作する事もあり、今回はZ690ベースに切り替えた。また速報版ではGeForce RTX 3080 Tiで比較を行ったが、今更GeForce RTX 3080 Tiというのもアレなので、今回はASUSよりTUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBを借用して比較に利用した(Photo06~14)。
■表1 | ||
CPU | Core i9-13900K Core i9-13900KS |
Ryzen 9 7950X |
---|---|---|
M/B | ASUS Prime Z690-A | ASUS TUF Gaming X670E-PLUS |
BIOS | Version 2204 | Version 0821 |
Memory | Corsair emgeance CMK32GX5M2D6000Z36 DDR5-5600 CL48 |
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Video | ASUS TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GB Radeon Software Adrenalin Edition 23.1.1 |
|
Storage | Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 11 Pro 日本語版 22H2 Build 22621.1194 |
今回は比較対象として、Core i9-13900K及びRyzen 9 7950Xを用意した。グラフ中の表記は
13900K :Core i9-13900K
13900KS:Core i9-13900KS
7950X :Ryzen 9 7950X
となっている。また解像度表記も何時もの通り
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただく。
◆CineBench R23(グラフ1)
CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
まずは小手調べにCineBenchの結果だが、流石に定格ではギリギリ40000には届かなかったようだ。Singleの性能向上率も3%程度で、P-CoreのBase Frequencyの差(3.2GHz vs 3GHz)にも及ばない。むしろTurbo Boostの最大値(6GHz vs 5.8GHz)に近い程度の差である。要するにBoostで動作しており、そのBoostの掛かり方がちょっとCore i9-13900KSの方が上、といったあたりか。Multiの方だと性能向上率は更に低い1.7%ほどで、まぁ予想通りではあるが、定格状態で使う限りは余り性能向上は見込めないということになる。
◆PCMark 10 v2.1.2574(グラフ2~7)
PCMark 10 v2.1.2574
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
まずOverall(グラフ2)を見ると、Applicationsだけは多少差があるが、基本的なテストでの差は非常に少ない。実際Essential~Digital Contents Creation(グラフ3~6)で性能差はあると言えばあるけれど、誤差の範囲と言っても良い程度の差でしかない。唯一差が大きいのはApplications(グラフ7)におけるExcelだろうか。もっとも実際のスコアを見ると
Core i9-13900K | Core i9-13900KS | |
---|---|---|
Edit | 0.5720 | 0.5689 |
BuildingDesignRecalculate | 0.1579 | 0.1636 |
StockHistoryRecalculate | 0.2247 | 0.2188 |
Start | 0.2641 | 0.2573 |
Load | 0.7240 | 0.7088 |
Save | 0.5081 | 0.4917 |
Close | 0.0798 | 0.0810 |
CopyFormulas | 0.0713 | 0.0626 |
CopyData | 0.0848 | 0.0856 |
CopyCompute1 | 0.1292 | 0.1232 |
CopyCompute2 | 0.1480 | 0.1077 |
Resize | 0.2500 | 0.2485 |
(数字はいずれも所要時間(秒)) |
であって、何かが飛びぬけて高速というよりも、全項目じわっと高速という程度で、その差はそれほど大きくない。トータルとしてはそれなりの性能差になった、ということは評価しても良いかと思う。
◆Procyon v2.1.657(グラフ8~11)
Procyon v2.1.657
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
もう少し実アプリケーションに近いところでProcyonだが、意外にもPhoto Editingでむしろスコアが落ちているのはちょっと興味深い。Detail(グラフ9)を見ると、Batch Processing(つまりLightroom Classic)は問題ないのだが、Image Retouching(つまりPhotoshop)のスコアが芳しくない。見ると、Export Imageの処理がCore i9-13900Kで3.05secなのがCore i9-13900KSではなぜか4.41sec(ちなみにRyzen 9 7950Xは4.78sec)になっており、これが足を引っ張っていた模様だ。逆にそれ以外の処理はほぼ同等か、むしろ僅かながらCore i9-13900KSが高速である。もっと細かく見ると、複数回ベンチを回した結果、たまたまCore i9-13900Kが1.5secでこれを完了したケースがあり(それ以外は4.5sec程度)、平均を取ったら妙に高速化したというのが実情で、なので今回は無視して良いかと思う。Video Digital Editing(グラフ10)はまぁほぼセオリー通り。Office Productivity(グラフ11)では逆にPowerPointだけ妙にCore i9-13900KSのスコアが良いが、こちらも
Core i9-13900K | Core i9-13900KS | |
---|---|---|
ExportToPdf | 1.4528 | 1.4052 |
ExportVideo | 8.8107 | 8.7773 |
Load | 0.1330 | 0.1319 |
CopyFromWord | 0.0641 | 0.0581 |
AddImage | 0.2825 | 0.2752 |
AddVideo | 0.6249 | 0.6011 |
AddAnimation | 0.1629 | 0.1514 |
Save | 0.0808 | 0.0810 |
Merge | 0.3018 | 0.2843 |
(数字はいずれも所要時間(秒)) |
と、Core i9-13900KSの方が全体的に少し高速で、それの積み重ねという感じである。なので性能が上がっているのは間違いない。まぁそれがコストとか消費電力の差に見合う物か? というのはまた別の問題だが。
◆POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ12)
POV-Ray V3.8.2 Beta2
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
一応POV-Rayの結果も実施してみたが、予想通りCineBenchと同じ傾向である。
◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.26.29(グラフ13)
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.26.29
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
久々にバージョンアップが行われたTMPGEnc Video Mastering Worksだが、大きな変更点は無し。そろそろAV1なりH.266(←最近Open Sourceの実装も出て来たが、ちょっと普及する気配がさっぱり見えないのが残念)なりの対応が欲しいところ。ただおそらくはメジャーバージョンが変わるんじゃないかと思う。
それはともかくとして何時ものHEVCでのトランスコード性能で、ここまで殆ど良いところが無かったRyzen 9 7950Xが圧勝しているのが印象的ではある。それはともかくとしてCore i9-13900KSの性能は、確かに若干Core i9-13900Kよりも上がっているのだが、フレームレート換算で0.1~0.3fpsと、ほんの僅かに過ぎないのは動作周波数の差を考えれば致し方ないところか。
◆Intel oneAPI Math Kernel Library Benchmarks Suite 2022.0.2_92(グラフ14)
Intel oneAPI Math Kernel Library Benchmarks Suite 2022.0.2_92(グラフ14)
Intel
https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/onemkl-benchmarks-suite.html
一応こちらもやってみた。ここではRyzen 9 7950Xは比較から外している(動作しないため)。
結果は中々面白く、ピーク性能そのものは僅かな差(887.2GFlops vs 902.8GFlops)であるが、Core i9-13900Kが割と変動が大きいのに、Core i9-13900KSはそこまで変動が無いのが興味深いところである。
◆3DMark v2.25.8056(グラフ15~18)
3DMark v2.25.8056
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
次は定番3DMarkの結果を。Overall(グラフ15)を見ると、比較的GPU負荷が軽いWildLifeやNightRaid、FIreStrikeなどではそれでも性能差が見られるが、それより負荷が上がるともう性能差は殆ど無い、という結果はある意味当然である。これはGraphics(グラフ16)もそうで、WildLife ExtremeとかFireStrike Extreme以上では、そもそもRyzen 9 7950Xも含めてほぼ同等の性能と考えて良い程度の差しかない。CPU/Physics Test(グラフ17)も予想通りCore i9-13900KとCore i9-13900Kの間に性能差は無し。それはともかくとしてCombined Test、GraphicsやPhysicsではそこまで性能が出ていない筈のRyzen 9 7950Xが異様に成績が良いのがちょっと不思議である。まぁそれはともかくとして3DMarkの結果を見る限り、Gamingの方もそれほど高い性能が望めそうには思えない。プレスリリースによれば"to power world-class gaming and creating experiences for desktop enthusiasts."とされるが、さてどこまで性能差が発揮できるだろうか?