1月5日にHTCが発表した次期XRデバイス「VIVE XR Elite」。ざっくり説明するとHTCが投入しているメガネ型VRデバイスの「HTC VIVE Flow」と、単体VRデバイス「HTC VIVE Focus」の間の子のようなスタイルの製品です。すでに日本国内向けの投入も予定されており、現在事前予約も受付中。価格は179,000円です。

今回、この製品を発売に先駆けてHTC NIPPONオフィスで体験する機会に恵まれました。忙しい方向けにまとめておくと、飛躍的に進歩したパススルー機能を搭載するFocus 3のような製品。VR性能もかなり高く、“どっちつかず”にはなっていないXRデバイスに仕上がっていました。

  • HTC次期“XRグラス”「VIVE XR Elite」を体験!

バッテリーはリムーバブル、視力・IPDは調節可能

VIVE XR Eliteは、ヘッドセット本体とコントローラー(両手分)がセットになった製品です。解像度は片目1,920×1,920ドット(両目3,840×1,920ドット)で、リフレッシュレートは90Hzと高速。視野角は最大110度です。SoCにQualcomm Snapdragon XR2を搭載して単体で動作可能で、128GBストレージと12GBメモリを組み合わせます。4つのカメラを内蔵している点も大きな特徴。6DoFや高度なハンドトラッキング、パススルー映像の表示も行えます。

  • 4K解像度と書いてありますが、縦は1,920ドットです

  • パッケージは環境にも配慮

Focus 3と比べて表現するなら、若干低解像度ながらリフレッシュレートや処理性能はほぼ同等。カメラの搭載でデバイス外側の映像表示にも対応するほか、高度なXRデバイスとしても扱える点が特徴です。もちろん6DoFやハンドトラッキング機能も搭載しており、VRデバイスとしての機能がしっかりと充実しています。

加えてVIVE Flowと比べて表現するなら、VIVE Flowが採用するメガネ形状にインスパイアされた折りたたみ式(ダブルヒンジ機構のツル)で、気軽な装着と高い可搬性を実現している点がポイント。電源はモバイルバッテリーに加えて後頭部に接続できる専用バッテリーも使用でき、視力・IPD(瞳孔間距離)の調節にも対応しています。

つまり、Focus 3なみの高いVR性能を備えつつ、高い機動力も実現。それでいてFlowより電源の自由度が高められ、本格的に単体VRデバイスとして使えるようになっています。要は、それぞれの製品が備える長所をまとめ上げたようなスタイルになっているというわけ。

  • セット内容。デバイス本体とコントローラー、取外し可能な後頭部用バッテリーパックです

  • 本体レンズには視力調整機能を備えているので、コンタクトレンズが不要(メガネは併用不可)。極めて高い使い勝手を実現してます

  • アイクッションを外してダイヤルを回して強度を調節。ド近眼の筆者でも十分に補正してくれました

  • 上部にはファンのエアフローがあります

  • 拡張用のUSB-C端子も搭載。表情を検出するためのフェイシャルトラッカーにも後日対応予定とのこと

  • メガネ内部と側面にカメラを搭載。デバイスを装着したまま外の風景を視認できます

  • 中央にもカメラを備え、さらに距離センサーも搭載しています。今回試用したサンプルではまだ有効化されていませんでした

  • 後頭部に接続して単体での駆動を行うためのバッテリーパック。上部に充電用のUSB-C端子を備えます

  • 給電はツルの接続部で行うわけではなく、普通にケーブルをつなぐシンプルな仕様

  • ツル側の給電端子。モバイルバッテリーやスマートフォン用の充電器でも利用できます

ちなみに、コントローラーはVIVE Focus 3同梱品と同等。バッテリーパックをツルにつなぐと前後のバランスを取りやすくなり、ほとんど重さが増えたことを感じませんでした。横になって使いたい場合はバッテリーを外して使うことを想定しており、仰向けで快適に利用できるとしています。

Qualcomm Snapdragon XR2はすごい、据え置き級VR体験

製品を眺め回したところで、実際に装着して試すことができました。日本にはほんの数台しかないサンプルらしく、体験会は1人ずつ行われるという異例の形式。HTC NIPPONの担当者に見守られ、デバイスを装着して操作することになりました。スクリーンショット等を撮影して持ち出す方法がなかったので、前回のHTC VIVE Flowと同様(関連記事)、以下では文章での表現になることをご了承下さい。

今回VIVE XR Eliteを装着してとにかく驚いたのは、VIVE Flowよりも格段に描写性能が引き上げられていた点です。内蔵するSoCは素晴らしく強力で、パネルも高解像度。視力調節機能も強化されたのか、もはや近眼な筆者の裸眼で外界を眺めたときより断然キレイに感じられるレベルです。ユーザーインタフェースはくっきりと見やすく、快適な操作が行えました。

さらに感動したのは、極めて高いハンドトラッキングの精度です。本体に内蔵する4つのカメラが手の動きを的確に認識し、指を一本ずつ的確に動かすことができました。視界に表示される仮想の手が自分の動きをトレースして動く様子はかなりSFっぽく、未知の体験に感じられました。人差し指と親指を触れるピンチ操作も快適で、ちょっとした操作ならコントローラーは必要ないと思います。

  • ピンチインで「決定」している様子

また、外部の映像を内部パネルに投影するパススルー機能のクオリティにも驚きました。VIVE Flowでは白黒のガビガビな映像だったことを思うと、周囲の環境をくっきり認識できるレベルにまで改善されていてビックリ。デバイスに搭載されているボタンで素早くVR / MRモードを切り替えられ、着脱しなくても飲み物を取りに行ったりできそうです(設定したプレイエリアから出るときは外しましょう!) 。

試遊では外部の空間をパネルに投影しつつお絵かきをしたり、女の子の3Dモデルが目の前でライブを歌ってくれるコンテンツも体験。特にVRライブは思ってたより臨場感があり、“かなりの至近距離”で歌ってくれる迫力や、視界いっぱいに広がる特殊演出がとても印象的でした。

また、ハンドトラッキング機能を生かして遊ぶゲーム『Maestro: The Masterclass』も素晴らしく楽しめました。指揮者になってオーケストラに指示を出すというもので、右手のコントローラーで指揮棒を振りつつ、左手はフリーハンドで指示を出して指揮者になりきります。自分の身振り手振りで演奏が進む様子は想像よりかなり楽しく、インタラクティブ感が従来のゲームとは段違いです。

Maestro: The Masterclass Trailer

  • 指揮者になっている筆者。オフィスではこの様子を3人から凝視されており、開放的な気分を味わいました

大好評予約受付中、価格は179,000円

この記事で紹介した最新XRデバイス「VIVE XR Elite」は、現在事前予約を受付中。あまりレビューが出回っているわけでもないのに前評判でかなりの予約があったらしく、HTC NIPPONはデリバリーについて日々ヒヤヒヤしているそう。もし少しでも関心があるようなら、早めの行動がオススメかもしれません。