ここ数年で一気に私たちの生活に身近になったのが、スマホひとつで支払いができるQRコード決済だ。
コード決済サービスの筆頭が、Zホールディングスの一角を占める「PayPay」。Zホールディングスは、PayPayの5,500万人の顧客基盤を武器に、クレジットカードや銀行など、コード決済以外の金融事業を加速させている。
Zホールディングスは2023年2月17日、「ZフィナンシャルとPayPayブランド金融事業」についてのメディア関係者向け説明会を開催した。その内容をもとに、PayPayおよびZフィナンシャル下の金融事業の全体像と、それぞれの現状をお伝えする。
■PayPayを中心とした新しい市場の創出へ
まず、Zホールディングス全体としての戦略は以下の2つ。
1.「LINE」「Yahoo! JAPAN」「PayPay」のID連携等を通じたさらなるユーザー基盤の強化
2. 圧倒的なユーザー基盤を生かして、to C・to B両面でのグループ経済圏の拡大
その中で、決済からスタートしたPayPayブランドは、現在3階建てのビジネスモデルを展開している。
1階がPayPayの決済手数料、2階がPayPayの加盟店サービス、3階がPayPayカード・PayPay銀行・PayPay証券などのPayPayブランドを冠した金融サービスだ。今後は、2階・3階のマネタイズをいっそう加速させる方針だという。
QRコード決済「PayPay」の登録ユーザー数は5,500万人。圧倒的なユーザー数を誇るPayPayアプリに、ミニアプリとして「カード」「銀行」「証券」「ほけん」のサービスを追加することで、クロスユースを促し、PayPayを中心とした新しい市場の創出に取り組んでいる。
■データ・AIの活用で金融をもっと「自由」に
Zホールディングスの金融事業の中核を担っているのが、PayPayとZフィナンシャルという2つの事業会社だ。
PayPay社の傘下には、2022年10月に完全子会社化したPayPayカードがあり、Zフィナンシャル傘下には、PayPay銀行、PayPay保険、PayPayアセットマネジメント、ブレインセルの4社が連なっている。
金融持株会社であるZフィナンシャルの役割は、傘下にある金融会社のガバナンス機能およびグループ間の横串機能だ。データ・AIを活用してさまざまな制約を取り払うことにより、金融をもっと「自由」にすることを目指している。
■PayPayブランド統一でシナジー創出を強化
Zホールディングスの金融事業における直近の大きな動きとして、2021年2月以降、順次「One Tap BUY」を「PayPay証券」に、「ジャパンネット銀行」を「PayPay銀行」に、「Yahoo! JAPANカード」を「PayPayカード」にと、サービス名や会社名をPayPayブランドに統一してきたことが挙げられる。
そこには、圧倒的なユーザー数を誇るPayPayアプリを起点に、サービス間のシームレスな連携を目指す意図がある。
実際に、「ジャパンネット銀行」を「PayPay銀行」に変更したところ、個人口座申し込み数は約6.5倍、個人ローン申し込み数は約3.0倍に伸びたという(社名変更前後1週間の比較)。
PayPayカードの申込者にPayPay銀行の口座開設を促すなど、事業会社間でシナジーを創出する取り組みを強化しており、銀行口座数は2年で約1.3倍となった(2019年度と2021年度の比較)。
さらに、PayPayブランド間のみにとどまらず、Yahoo!ショッピングで家電等を購入したユーザーに、保険申し込みを促すなどの「シナリオ保険(商品購入、旅行予約など、ユーザーのアクションに合わせてレコメンドする保険)」の展開にも注力。保険契約数は2年で約10倍に急伸している(2019年度と2021年度の比較)。
続いて、PayPay金融事業各社の現状と取り組みを見てみよう。
■ユーザーに寄り添った保険を展開:PayPay保険サービス
PayPay保険サービスでは、PayPayアプリ上で加入できる「PayPayほけん(1dayほけん)」および、Yahoo!JAPANのサービス上での商品購入・旅行予約時に加入できる「シナリオ保険」を提供している。
PayPayアプリ上で加入できる「PayPayほけん(1dayほけん)」は現在10種類を展開。加入手続きや保険金請求がスマホで完結し、PayPay残高で決済ができる、PayPayポイントがt貯まるなど、ユーザーフレンドリーな設計になっている。
期間限定の保険商品も好評で、2022年4月に提供を開始した保険業界初の「熱中症お見舞い金」は、提供開始から約3カ月で申し込みが5万件を突破した。
■ストレスのない銀行サービスを推進:PayPay銀行
PayPay銀行は、2021年に「ジャパンネット銀行」から商号を変更した。順調に口座数を伸ばし、2021年度中に600万口座を突破。決済件数も2年で1.6倍に成長した(2019年度と2021年度の比較)。
PayPay銀行が目指すのは、「PayPayユーザーにとって、個人も法人も1番便利でお得な銀行」。PayPayアプリ上にある「PayPay銀行」ミニアプリを利用することで、PayPayからワンストップで明細確認や振込手続きができる。
「PayPay銀行」ミニアプリからQRコードを読み込むだけでATMが利用できる「カードレスATM」を推進するなど、これまでの銀行サービスのボトルネックの解消に取り組んでいる。
■資産運用をもっと身近に:PayPay証券
PayPay証券は、資産運用のハードルを下げ、資産運用をもっと身近にすることを目指すスマホ専業の証券会社。
「ポイント運用」「PayPay資産運用」「PayPay証券アプリ」の3つのプロダクトがあり、ポイントで資産運用を体験してみたい資産運用初心者から、個別株に投資したい中上級者まで幅広いニーズをカバー。PayPayポイントで疑似運用が体験できる「ポイント運用」は、すでに800万運用者を達成している。
■おカネに働いてもらう楽しさを:PayPayアセットマネジメント
PayPayアセットマネジメントは、ZフィナンシャルとアセットマネジメントOneが出資する資産運用会社。「おカネに働いてもらう楽しさをすべての人に」を合言葉に、コストを業界最低水準に抑え、PayPay投信インデックスファンドシリーズを4商品展開している。
NISAの制度改正を2024年に控える中、ユーザーニーズに対応した商品を提供し、PayPayを起点とした資産運用を推進していく。
■PayPayとのシナジーで決済シェア拡大:PayPayカード
2022年10月、PayPayがヤフーからクレジットカード事業を取得し、PayPayカード株式会社が誕生した。PayPayカードは、PayPayと協働し、あらゆるシチュエーションにおいてPayPayブランドで支払いができるプラットフォームを目指している。
2022年2月には、PayPayカードと紐づけることで、事前にPayPay残高にチャージすることなく利用できる「PayPayあと払い」もローンチ。2022年11月には「PayPayカード ゴールド」の提供を開始し、ポイントの貯まりやすさが加速している。
圧倒的な顧客基盤を抱えるPayPayを軸に、金融にまつわるあらゆる場面でのシェア拡大を図るZホールディングス。これまでポイント還元を武器にした「経済圏」の構築では楽天が一歩先を行っていたが、ここにきてPayPayが猛追を見せている。
ポイント経済圏をめぐる争いが激しさを増す中、Zホールディングスとヤフー、LINEの3社が2023年度中をめどに合併する方針も発表されている。今後はPayPayとLINEの連携強化にも注目したいところだ。