今回の研究では、欧州宇宙機関(ESA)が運用中の地球観測衛星「Sentinel-1」が、CバンドSARを用いて2017年8月~2022年3月に取得した画像データが用いられた。そしてDInSARを実装したソフトウェアで解析が行われ、GNSSおよび観測井戸のデータを用いた検証が行われた。
解析の結果、Consecutive DInSARで得られたデータは、観測井戸やGNSSのデータと整合していることが判明。また同解析技術とGNSSデータ間の速度誤差は1cm未満~数cmであり、また平均二乗平均誤差(RMSE)も1cm未満~数cmであることが明らかにされた。さらに、同解析技術による平均沈下速度は1.58cm/年であり、観測井戸とGNSSデータの速度誤差はそれぞれ0.02cm/年、0.90cm/年の範囲内だったという。また、RMSEはそれぞれ0.39cm/年、0.46cm/年の範囲内であり、誤差が非常に少ないことが示されたとした。
さらに、地表面における気圧の値を用いて、地下水位や地盤沈下の量と原因を計算する新しい計算モデルの定式化も行われた。その結果、対象地域の地盤沈下が地質構造に応じて変化することを明らかにした。
それに加え、Consecutive DInSARと観測井戸の相関性は観測地点の地質構造に影響される可能性があり、かつ浅い井戸の地層収縮は同解析技術の地表面変化と一致していることも確認され、地盤沈下のメカニズムも把握できたとする。
研究チームによると、Consecutive DInSARは今後、観測井戸の代替技術となる可能性があるという。同解析技術と衛星データを活用することで、政府や自治体は地盤沈下に対し、効果的かつタイムリーな対策を講じることができるようになるだけでなく、コストの削減につながる可能性もあるとした。また、地盤沈下の度合いや原因がわかれば、その基準値を設定したり、地下水の使用量を制限することなども可能となるというメリットもあるとしている。
研究チームは、同解析技術を活用することで、今後沿岸地域や過去に地盤沈下した地域など、洪水や浸水の危険性がある地域でも、人々が安全かつ安心に生活ができるようになることが期待されるとした。