現在放送中のTBS系火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』(毎週火曜22:00~)。広瀬すず演じる浅葱空豆はファッションデザイナーへ、永瀬廉(King & Prince)扮する海野音は音楽家へと進む道を歩き始めた2人だが、お互い恋心を抱いているにも関わらず、その思いはなかなか相手に届かない。もどかしさ、切なさ、そしてやるせなさ――なんとも言えない2人の距離感が視聴者の心を揺さぶる。そんな空気感を作り出している本作の金井紘監督に広瀬すずと永瀬廉の魅力を聞いた。
空豆と音が住む下宿先の縁側に当たる柔らかい夕日など、作品全体に広がる温かい色味の映像は、どこかノスタルジックさと切なさを感じる本作。ロケーションを含め、細部にまでこだわりを感じる。
「今回の僕に与えられた使命は、(脚本担当の)北川悦吏子さんの世界観をどこまで表現できるか。タイトルの『夕暮れ』を意識して、1日に数十分しかなく、それでいて儚くも美しい瞬間を、どう映像として見せていくかという部分はかなりこだわっています。話によってですが、夕暮れ時に時間帯に絞って撮影したり、その自然光にあったメイクや衣装にしたり……。とにかく映像全体に“夕暮れ”という空気感をイメージできるような撮り方をしています」
雪平響子(夏木マリ)が営む下宿先のロケーションにもこだわった。
「都心にある古い日本家屋。しかも縁側があるというロケーションで夕日が狙える……という場所を探すのは、相当苦労しました。でも大切なシーンはあの縁側で展開することが多いので、そこは本当にこだわりました」
徹底した絵作りのなか、物語の世界観を生きる広瀬と永瀬の空気感というものも、作品作りには大きな要素を占めるが、金井氏は、現場ではまったく違ったアプローチ方法をしているという。
「お互いのキャラクターが違うからという部分はあるかもしれませんが、広瀬さんは本当に動物的。同じ脚本でも状況が変わるとガラリと違う表現になる。例えば相手の反応はもちろんなのですが、天気や光の当たり方、太陽の向きなどによっても表現が違う。本人に聞いても『全然意識していない』と言うんです。まさに天才的だなと感じます。こちらとしては、その動物的な感性を邪魔しないように、瞬間的に出るものを大事に切り取ることを心掛けています」
金井氏は、広瀬が15歳のとき『ビター・ブラッド-最悪で最強の親子刑事-』という作品で現場を共にしたことがあったという。
「まだ彼女は中学生だったと思いますが、その時から瞬発力みたいなものはすごかった。当時はまだお芝居の経験もそこまでなかったと思うのですが、もの怖じしない感じは際立っていて、共演していた佐藤健さんや渡部篤郎とも『あの子すごいね』と話をしていたんです。そこから8年ぐらいたって、よりすごい俳優さんになったなと思いました」