UCC上島珈琲はこのほど、「ホットコーヒーをマイボトルに入れておいしく持ち歩くコツ」を発表した。
今回、同社がコーヒーの専門知識や技術を集約し、体系的かつ段階的に学べる教育機関として設立した「UCC コーヒーアカデミー」の村田果穂講師が、持ち歩きホットコーヒーのおいしさを持続させるために検証を実施した。
使用したのは、焙煎方法などが異なる4種類のコーヒー豆(「ブレンド/ブラジル・ベトナム産 中炒り」「ブラジル産中炒」「ブラジル産深炒り」「ホンジュラス産スペシャルティ中炒り」)。
コーヒーフィルターは、ステンレスフィルターとペーパーフィルターの2つを使用した。合計8つのマイボトルに入ったホットコーヒーを、1時間、4時間、8時間経過時点で試飲し、それぞれの温度と風味、味わいや全体のバランスの変化を調べた。
最初に、マイボトルに入れたステンレスフィルターとペーパーフィルターの味の違いを調べたところ、ステンレスフィルターよりもペーパーフィルターの方がおいしさを保てることがわかった。
この理由について村田講師は、「ステンレスフィルターは目が粗く、コーヒー豆に含まれる油分が多く抽出されること、抽出時に一緒にコーヒーの微粉が混ざることが特徴。マイボトルにステンレスフィルターで抽出したコーヒーを入れると、コーヒーに含まれる油分と微粉が時間の経過とともに雑味として目立ってしまうことが考えられる」とコメントしている。
次に、コーヒー豆の種類について調べた。4つのコーヒー豆の中で、時間が経過しても酸化したような香りを感じづらかったのはスペシャルティコーヒーだった。「品質の高いスペシャルティコーヒーならではの雑味の少なさが、時間が経過したとしても風味や味わいの変化が少なく感じた要因ではないかと考えられます」と村田講師は分析している。
続いて、焙煎の深さによって味わいが変わるか検証した。その結果、焙煎は深炒りよりも中炒りの方が味わいの変化を感じにくいことがわかった。
村田講師によると、焙煎の深さによって味わいや風味、抽出したときに出る油分の量が変わってくるという。一般的には浅炒りの方が油分は少なく、比較的酸味が強く感じられ、深炒りは油分を含んだコクや苦みを感じられるのが特徴。「深炒りは、時間が経過とともにロースト感が強まったのが影響しているのか、酸化した風味や苦み・渋みが目立つ印象がありました」とコメントしている。
最後に、1時間、4時間、8時間経過後のコーヒーについてそれぞれ試飲し、風味・味わい・酸味・全体のバランスなどをチェックした。その結果、1時間経過時点ではどのコーヒーも風味・酸味・後味・全体のバランスすべてで比較的味わいを保つことができていたが、4時間経過時点で劣化を感じることがわかった。
特に4時間経過時点では、油分が多く出やすいステンレスフィルターでは全体として風味が落ちる傾向にあったという。また、ブレンドコーヒーはペーパーフィルター、ステンレスフィルターともに、酸化した風味や味わいが目立った。8時間経過後にはかなり温度が下がり、8種類すべてにおいて風味・酸味・後味・全体のバランスが落ちると感じたという。
最も味わいの変化が小さかったのは、ペーパーフィルターで抽出したスペシャルティコーヒーだった。「若干の劣化はあるものの、4時間経過から8時間経過の間での変化の差が小さく、甘さが全体をサポートしていた印象があります」と村田講師はコメントしている。
以上の検証を通して、持ち歩きホットコーヒーのおいしさを持続させるポイントとして「ステンレス(金属)フィルターよりもペーパーフィルターを使う」「豆の種類は、スペシャルティコーヒーなどの雑味が出にくいもの」「焙煎度合いは深炒りよりも中炒り程度がおすすめ」「味わいや風味に変化が出やすくなるのは、淹れてから4時間経過後。それまでに飲み切るのがおすすめ」を挙げている。
村田講師は、時間が経ったコーヒーをより楽しむためのアレンジレシピとして「マシュマロコーヒー」を提案している。
抽出したコーヒーをマイボトルに入れ、朝はそのままブラックコーヒーを楽しみ、4時間経過後のコーヒーにマシュマロを追加する。朝淹れたコーヒーの味や風味が落ち始めるのがちょうどお昼ごろになるが、そのタイミングでマシュマロを追加すれば、午後のお疲れ時に甘みのあるコーヒーが完成する。
ここでマイボトルに入れるコーヒーは、持ち歩きに適した焙煎やコーヒー豆を使い、ペーパーフィルターで抽出するのがおすすめだという。村田講師は、ブラジルの中炒りをペーパーフィルターで抽出したものを使用している。マシュマロは、マイボトルにも入れやすい小さめサイズがおすすめとのこと。